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番外編 手紙
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ユウィリエ=ウィンベリー書記長殿へ
長かった梅雨が開け、本格的な夏を迎えてしばらく経ちますがいかがお過ごしでしょう。
堅苦しく書いてみようと思ったが、性に合わないので最初だけにさせてくれ。
お前だってワタシがこんな堅苦しい文章書いてたら驚くだろうしな。
調子はどうだ?
と、言っても前の手紙にも書いたみたいに、お前の情報はワタシの耳にもきちんと届いているがね。
ゼード村で暴れたり、マットン家の護衛を殺したり、色々しているみたいだな。
元気そうで安心してると同時に、形ばかりだが心配もしているぞ。
キースはどうしている?
お前に預けて、もう一年近くが経つが変わりはないか?
お前が近くにいるから問題はないだろうと思っているんだがね、心配なものは心配なのさ。
さて…そろそろ本題について書こうか。
お前だって何もワタシが近況報告が欲しくて手紙を寄越したなんて思っていないだろう。
風のうわさで耳にしたんだが、お前、MOTHERとハービニー国の戦争に参加するらしいな。
平和主義国の書記長であるお前が何故?と思いながらも、これもまた宿命なのかもしれないなと思っている。
あの時だって、ワタシが予想もしてない時にMOTHERの兵と戦うことになって驚いたものだ。
お前とMOTHERは、どこか惹かれ合い、戦う運命なのかもしれないな。
別に、戦争に参加するから心配で手紙を書いたわけじゃない。幼き頃からMOTHER兵と互角に戦っていたお前が、今更MOTHERごときに負けるとは思えんしな。
確か、ハービニー国にはフレデリックもいるだろう?いくら、ハービニー国の兵が弱くてもお前たち二人がいるなら負けることは、絶対ないだろうな。
じゃあ、なんで手紙なんて書いたんだ、と思っただろ?
それは、お前に1つ武器を貸してやろうと思ったからだ。
この手紙と一緒に届いた箱の中に入っている。
重さや音からすでに察していると思うが、中身は銃だ。
お前が銃を嫌っているのは知っているが、戦争に行くなら銃の一個は持っておいたほうがいい。たとえ使わなくてもな。
だが、お前にそこら辺にあるようなちゃちい銃は似合わないと思ったんでな、ならワタシのを貸してやろうと思ったわけさ。
何度か見せたことはあるし、かなり特殊な銃とは言えお前なら使いこなせるだろ。
書きたかったことは書き終わったな。
そろそろ、ペンを握って文字を書くのも疲れてきた。
お前がMOTHERに勝利したとの報告を聞くのを楽しみにしておくよ。
フィリクス=オルコットより
PS
銃はあくまで貸すだけなので、返すこと
✻✻✻✻✻
「全く…」
戦争準備をしていた私は、そう呟きつつ、ミミズのような字で書かれた手紙を封筒に戻した。
❈❈❈❈❈
フィリクス=オルコット様へ
朝晩の涼しさに秋の涼しさをかすかに感じられる頃となりました今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。
最初に謝らなければなりません。手紙の返事が遅くなってしまい申し訳ありません。
貴方も知っての通り、MOTHERとハービニー国の戦争に参加し、国をあけてしまった為に少々仕事が溜まってしまい、その処理に追われていました。
色々と忙しく働いてはいましたが、やっと一段落ついたので、こうして筆を取らせていただいました。
私のことについては、貴方の耳にしかと入っているようなので割愛させて頂くとして、キースは何事もなく、ミール国での生活を送っていますよ。この頃は、新人剣士の育成に協力してくれて、とても助かっています。
上記で少し触れましたMOTHERとハービニー国との戦争に参加した件ですが、無事勝利したと、遅まきながらご報告させていただきます。
貴方の貸してくださった銃も大変役に立ちました。
最初、貴方からの手紙を読み箱を開けた時、まさかカラー武器が入っているとは思わず驚いたものです。
貴方の大事な武器は、傷1つなく無事なので、そこはご安心ください。
さて…。書くべきことは書きましたし、ここで手紙を終えても良かったのですが、貴方に聞きたいことがあるので、この手紙に書かせていただこうと思います。
まず、貴方はどこで、そしてどのタイミングで私がMOTHERとハービニー国の戦争に参加すると知ったのでしょうか。
私は確かに戦争に参加するためにハービニー国へ行きました。が、それを隠すべく違う建前を準備していましたし、そう軽々と口を滑らせた覚えもありません。
それなのに、あのタイミングであの手紙が届いたことに疑問を覚えました。
貴方のことですから、色々な情報網を持っているのだということで納得してもいいのですがね。
話は変わりますが、貴方はカラー武器のある特性について知っていましたか?いや、知っているでしょう。と書くべきですね。
私は数ヶ月前に知ったのですが、カラー武器と言うのは一般人には持てないそうですね。その武器の保有者と他のカラー武器保有者は持てる、らしいですね。
何故、そんなことをいきなり書くんだ?とお思いでしょう。
その事を知らなかった私なら何も疑問には感じなかったんですがね。
このことを念頭におくと、おかしなことになるんです。
この世界に一体何人のカラー武器保有者がいるかはわかりませんが、カラー武器を持つ者が運送屋をやってるとはどうしても思えないんですよ。
まして、貴方の家の最寄りの村の運送屋とは私も面識がありますし、今思い出してもただの村人だったと断言できます。
しかし、そうなると手紙はともかくあの小包はどうやって私の元まで届けられたのでしょう。
私は貴方自身が届けに来たとしか考えられませんでした。なら何故、私に会いもせずに帰ってしまったのでしょうか。
私の事は心配していない、と手紙に書いてありましたからそれで帰ったのかと納得しても、ならキースにだけでも会っていけばいいのに何故そうしなかったんですか、と言う新たな疑問が浮かびます。
長々と書いてしまいましたね。
読むのも疲れるでしょうから、これで終いにしておきます。
ユウィリエ=ウィンベリー
PS
あいにくと、ミール国にはカラー武器を持てるような運送屋は居ませんので、手紙だけ出させて頂きます。
❈❈❈❈❈
手紙を読んだワタシは、ふぅと息をついた。
その時、フワリと何かの香りがした。
甘酸っぱい、柑橘系の香り。
そんなものは近くにない。
匂いのもとをたどると、先程まで読んでいた手紙にたどり着いた。
「…」
棚からライターを取り出し、紙を炙る。
すると、2箇所の余白に文字が浮かんだ。
❈❈❈❈❈
キースにだけでも会っていけばいいのに何故そうしなかったんですか、と言う新たな疑問が浮かびます。
『それに、銃は返すようにと手紙に書いていましたよね。普通に運送屋に任せれば、そんなこと不可能なこと分かっていたでしょう?
素直に「会いたいから家に来い」と書けばいいのに…そういう所は昔から変わりませんね、師匠』
長々と書いてしまいましたね。
読むのも疲れるでしょうから、これで終いにしておきます。
ユウィリエ=ウィンベリー
PS
あいにくと、ミール国にはカラー武器を持てるような運送屋は居ませんので手紙だけ出させて頂きます。
『今度、キースを連れてお茶菓子でも持って、そちらに行きますので、紅茶くらい用意しておいてください。
銃はその時お返しします』
❈❈❈❈❈
「全部、バレてたか」
ワタシは呟き、小さく笑った。
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