Red Crow

紅姫

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番外編 彼は何者?

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事のきっかけは何だったか、と聞かれたならば、それはその日の朝届いた郵便物をユウが手に取ったことだ。




「あー、これ更新きたんだ」

「何がですか?」

食堂で郵便物を広げたユウが、紙の束片手に呟いたのにキースが反応した。

「賞金首リスト」

「あ~」

「何?賞金首リストって」

ノアが首を傾げた。

「世界中の犯罪者とかアサシンには、その命に賞金がかけられてるのは知ってるだろ?それの、リストさ」

「定期的に更新されて、リストが作られたら各国へ配布されるんですよ」

ゾムとキースが答えた。

「詳しいな。流石は賞金首だ」

リュウがこの場にいない為か、ユウは躊躇いなくそう口にした。

「え!?二人が賞金首?」

ノアはすごく驚いていた。

「そこ、驚くところか?当たり前な気がするが」

ルークが言う。

「なんで?」

「いや…だって、最近はやってないかも知れないけど、キースは『狂犬』と呼ばれた戦場荒らしだし、ゾムは『銀狼』だろ?載ってないほうがおかしいじゃないか」

「ルークの言うとおり、二人とも5億の賞金首だぞ」

「5億…」

ノアは呆然としているが、ゾムとキースは「変わりませんでしたね」「だな」と呑気に会話している。

「ユウィリエ、ちょっと見せてくれ」

「あぁ、皆も一応見ておけよ?」

ユウはそう言うと食堂を出ていった。


「凄い…この人10億だって…」

ルークと共にリストを見ていたノアが呟く。

「そうだな、高額な方には入るが…更新前のリストでの最高金額は確か、30億だったはずだからな。リストの中では中堅の立ち位置だな」

「…世の中にそんな悪い人がいるの?」

「悪い人ってわけじゃないですよ。どちらかと言えば高額指定されるのはアサシンですし。ほら、こんな感じで顔がわからない人ほど高額になります」

キースがリストを指差した。

「リストには、顔がわれてる者は写真や絵が、顔がわからないものは今わかっている分の情報が書かれる。その情報量とかが金額の決め手になると聞く。
まぁもちろん、その仕事ぶりにもよるがな」

ルークが追加で説明した。

「ヘー」

ノアは頷き、リストをめくっていく。

「うわっ…なにこれ…」

あるページでノアは手を止めた。

写真や絵はなく、容姿についての情報も何一つ書かれていない。その上、犯罪者としての名前すら書かれていない真っ白なページ。
しかし、その下には50億ととんでもない数字が書かれている。

「ん?ああ、そいつか」

「また上がったんですね」

「賞金首リストの更新はほぼコイツの為にあるような物だからな…」

「え?」

「ノアは知らないだろうけど、コイツはかなり有名人だ、無論、裏でな」

ルークの言葉に、キース達も頷いた。

「どんな人なの?」

「それは俺らも知らない。でも、昔あったとされる伝説の暗殺者集団『影-Shadow-』の生き残りだ、とされている」

「されている?」

「はっきりとした情報は無いんだ。ただShadowが何者かの手によって壊滅して、数人の死体が発見されたんだけど、居るとされていた人数より一人少なくて、ましてや、自分は生きてる、っていう手紙を国際警察に送ったらしい」

「誰かのイタズラだって話もありましたけど…決め手がないからこんな状態らしいです」

「そうなんだ…」

ノアはもう一度真っ白なページを見たあと、ページをめくり始め、最後まで見て閉じた。

それをゾムが取り、ペラペラとページをめくる。

「あれ?」

「どうしたんですか?」

「いや…『黒猫』の情報は無いんだなと思ってさ」

「あ~、犯罪者ではないからじゃないか?」

「でも、暴れてる度合いなら僕達よりも上ですよね、ルナさん。この前はMOTHERのコンピュータをハッキングしてましたし」

「載っててもおかしくだろ?て、言うかそもそもさ」

パタンとリストを閉じて、ゾムは言う。

「ルナって謎な部分多いよな」

「そう?」

「よく考えてみろよ。この国の幹部って犯罪者とかアサシン、元泥棒に絶滅危惧種の医者…かなりの危険人物揃いだ。それなのに、平然と一緒に生活してるんだぜ?」

「そんなの、僕だって同じじゃない」

「ノアは事情が違うだろ」

「ちょっと待ってください。前提がおかしいですよ。ルナさんだってハッカーなんですから危険人物扱いのはずです」

キースが結構失礼なことを口走る。

「ハッカーだからだ。キース、よく考えてみろよ。ルナはこの国でユウの次に古参な幹部だ。俺が来るまでは3人でこの国をおさめてた。

リュウはユウがRedCrowだと知らなかったから置いとくとして、ルナは?知らずにこの国に入るなんて事ないだろ?

ハッカーならユウに隠れて世界警察に通報だってできたはずなのに、そんな事せず、ましてや協力までするなんておかしくないか?ユウが脅してたとも思えないしな」

「…確かに」

「言われてみれば…」

「だろ?だからさ、探ってみようぜ」

「はい?」

「だって、気になるだろ!なら調べてみようぜ!」

キース、ノア、ルークは困ったような顔をする。

「ゾムさん…それは、ちょっとどうかと。個人情報ですよ」

「そうだよ、ゾム。お遊びで探っていいものじゃないよ」

「別に知らなくたって困らないしな」

「なんだよ、お前らノリが悪いなぁ…」

ゾムはテーブルに伏せてしまった。

「別にゾムだって是が非でも知りたいわけじゃないだろ?」

「…まぁ気になるって程度だし。ルナがどんな奴にしろ仲間だしな…」

「ならいいじゃないか。何か隠してたとしても時期が来れば話してくれるさ」

「そうですよ。さて…そろそろ僕は行きます」

「あ、僕も」

「たまには一緒に警備にでも行くか、ゾム」

「いいな、行こう」

4人は立ち上がり食堂を出た。
食堂には賞金首リストだけが取り残された。




















✻✻✻✻✻


「悪趣味」

とユウは僕に言った。

「何が?」

「盗み聞きとは趣味が悪いぞ、ルナ」

「一緒に聞いたんだから同罪」

「お前が呼び出したからだろ」

ユウはこちらを睨んだ。


ココは僕の仕事部屋。
たくさん並ぶモニターには城の中や国中に配置している監視カメラの映像が映し出されている。
そして、食堂を映していたモニターにはコードが伸びていてスピーカーと繋がっている。
先程までココから、声が聞こえてきていた。


「いきなり呼び出すから何かあったのかと思ったのに…」

僕がユウを呼んだのはまだユウが食堂にいた時。
食堂を出ていく前にユウのインカムにだけ通信を入れて呼び出したのだ。

「ある意味あったでしょ」

「…別に口走りゃしないのに」

「そうだろうけど、一応ね」

ユウはため息をつく。

「言ったところで、アイツらが気にするとは思えんな。本人たちも言ってたし」

「まあね」

「…」

ユウは無言で僕を見て、首をすくめた。

「…ま、言いたくないならいいけど。……それにしても上がったなぁ」

「そうだね、僕もこれは予想外。潜伏してるだけなのに」

「してるからじゃないのか、お前の場合は。なあ?50億の賞金首さん?」

「…」

ユウは笑う。
僕としては笑い事じゃないのだが…。

「流石に警察だって、元『Shadow』最強暗殺者がハッカーやってるとは思わないさ。ましてや、いま所属しているのは平和の国ときてる」

「そうだね…」

僕は、モニターの前からユウの隣へ移動する。

「お前がいるから、私だって安心して国を空けられるんだ」

「そりゃどうも」

「それにしたって本当に凄いなぁ。最高値だぞ、お前。有名所のアサシン『青蜂』とか『黄蝶』を抑えて。アイツらでも20億なのに」

「僕としてはゾムが安すぎて驚いてるんだけど。何?5億って?ゾムはユウの次に有名なアサシン何でしょ?」

「有名ってのと実力があるは別の意味さ。それにゾムが今まで転々としてきた国は結構な権力を持ってたからな。裏で工作してたんだろ。
今はどこにいるかも分からないアサシンってだけだからな、安くもなるさ。

お前だって現役時代は賞金首にならなかったろ?同じ事さ」

「…警察にも権力が影響するようになったら、この世の中はお終いだと僕は思うけどね」

「まぁ…確かに」

ユウはそう言うと口をつぐんだ。

しばしの沈黙。
重いものではない。
僕とユウはきっと同じことを思ってこの沈黙の中にいる。
だから、重さを感じないんだ。


「さて…そろそろ戻るかな」

「ねぇ、ユウ」

立ち上がったユウに声をかける。

「ん?」

「これからもよろしく」

「なんだよ、いきなり」

「言いたくなっただけさ」

ユウは笑った。
伝わってはいるはずだ。
それくらいには、ユウと交流してきたのだ。

「さっきも言ったが、私はお前がいるから安心して国を空けられるんだ。よろしく願いたいのは私の方だよ。
お前は今まで通り、私の影であり協力者でいればいい」

「うん」

「じゃ、また後で」

ユウは部屋を出ていった。
モニターに廊下を歩くユウが映っては消える。

「本当に良い光だよ、君は」

『影の質は光が決める』
それはShadowにいた時に言われ続けていたこと。
Shadowの光は上官だった。
確かにShadowは強かっただろう。
でも…でも、何かが違った。

あのまま、何も変わらなかったら…僕は…。

目を閉じる。
それ以上、考えないように。


















❈おまけ❈

「そういえば…ユウ」

「なんだ?ノア」

「あのリストにさ、RedCrowの名前って無かったよね?」

「あぁ、無いぞ」

「なんで?現役でアサシンやってて、しかも世界一って言われてるのに、警察は放置してるの?」

「私は、少々特殊な立場でな」

「特殊?」

「もしも、私を捕まえたり、殺して警察に届けたなら、その人には生涯何不自由なく暮らせるよう毎年数十億の金が渡されるらしい」

「数十億を毎年…」

「そう、毎年。だからもし、この国の情勢が悪くなって大変ってことになったら私を警察に引き渡せばいい。情勢問題が一気に解決するぞ」

「いや…しないし…」

「そうか?別に私は捕まっても脱獄するしいいんだぞ?」

「ユウが居なくなったら、そもそも国が成り立たないでしょ」

「…お前も言うようになったねぇ」

私は首をすくめた。
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