自己顕示欲の強い妹にプロデュースされる事になりました

白石マサル

文字の大きさ
32 / 167
第三章~初めての恋愛~

初めてのデート

しおりを挟む
 柚希に見立てて貰った服を着て、昨日よりも早く家を出た。
 10分前行動の新島を待たせたら何を言われるか分からない。
 新島が何を考えているかは分からないが、初デートには変わりない。
 ふと電車の窓に映った自分を見ると顔が少しニヤけていた。
 危ない危ない。キチンと表情を作らないとな。

『何ニヤけてんの? キモイ』

 と言われるのが容易に想像できる。
 楽しみにしてたとか思われたくないしな。

 ターミナル駅に着き、待ち合わせ場所まで歩いて居ると、上り線の改札から新島が出てきた。
 まだ約束の時間の20分前なのに。
 早めに家を出て正解だった。

「よ、よう新島、早いな」

 と声を掛けるとビックリした表情で

「え? 友也君こそ早いじゃん」

 と返されたが、違和感がある。
 そうか! 猫被ってるんだ。 俺しか居ないのになんでだろう。

「ああ、昨日10分前行動は当たり前って言われたからな」
「でも20分前はやりすぎじゃない?」
「新島を待たす訳にはいかなかったからな」
「友也君優しいね~」

 なんだこれ? 学校での新島とも雰囲気が違う。
 
「それで、これからどうするんだ? 買い物するんだったよな」
「うん、ちょっと見てみたい服とかあるから。ごめんね、付き合わせちゃって」
「いや、別にいいけど」
「ありがと♪ 行こっか」

 駅の近くに目当ての店があるという事で、二人並んで歩き出す。
 ターミナル駅なので構内は人が多い。ぶつからない様にと思っていたが様子がおかしい。
 前方から来る人はまるで俺達を避ける様にずれる。
 そしてすれ違いざまにこっちを見てくる。
 最初はどうしてか分からなかったが、すれ違う人の視線を追うと皆新島の事を見ている。
 新島の圧倒的な美少女っぷりで知らない人は気圧されてしまっているのだろう。
 そんな美女の隣を歩く俺はどう見られてるんだろうか?
 というか俺は視界に入っていないかもしれない。
 そんな事を考えていると不意にほっぺたをつつかれた。

「どうしたの? ずっと緊張した顔してるよ」
「いや、えっとデートって初めてだからどうしたらいいか分かんなくて」

 確かに緊張はしてたけど顔にまで出てたとは。

「へぇ~、今日はデートって思ってるんだ?」
「あ、ごめん。違うよな、買い物しに来ただけだもんな」
「私はデートだと思ってるよ」

 と吸い込まれそうな笑顔で言ってくる。
 その笑顔は反則だろ。自分の顔が熱を帯びるのが分かる。

「そんなに肩肘張んなくても楽しければいいんだよ」
「そ、そういうもんなのか?」
「楽しくなかったら二人でいる意味ないでしょ?」
「そ、そうだな」

 さっきから何なんだこのキャラは。
 普段よりも可愛いから余計やりづらい。

 目的の洋服店に着くと無邪気に洋服を見て手に取り

「これとかどうかな? 似合う?」

 と聞いてくる。
 こんなシチュエーションを俺が体験するなんて夢にも思わなかった。

「うん、超似合ってる」
「カワイイ?」
「あ、うん。カワイイ」
「じゃあ買っちゃおうかな~」

 まるで恋人同士のやり取りじゃないか!
 それにいつも見てる新島より可愛く見えるのはなんでだ!

「ねぇねぇ、佐藤君はどんなのが好き?」
「えっと、このスカートとかカワイイと思う、かな」
「じゃあこれ買ってくるね~」
「え? ち、ちょっと……」

 止める間もなくレジに向かって行った。
 俺のセンスだぞ? 本当に大丈夫なのか?
 でも、さっきのスカートを穿いた新島を想像すると似合ってるんだよな。

「ただいま~。買っちゃった」
「ホントにそれでよかったのか?」
「友也君が私に似合うと思って選んだんでしょ? なら大丈夫!」
「ならいいんだけど」

 本当に買っちゃったよ。 これ、後から請求とかされないよね?

「すぐ選んで買ったつもりだったけど結構時間経ってる。ごめんね、退屈だったでしょ?」
「いや、大丈夫だよ」
「近くに喫茶店があったからちょっと休憩しよっか」
「そうだな」

 洋服店を出ると斜め向かいに喫茶店があり、来た時に何故気づかなかったのか不思議だ。
 昔からある古風な喫茶店だ。店内も落ち着いていてBGMもいい雰囲気を醸し出している。
 二人掛けの席に向かい合わせに座りそれぞれ注文し、そんなに待たずにコーヒーが運ばれてきた。
 ちなみに新島はココアを注文していた。 意外な事にコーヒーが苦手らしい。

「コーヒーが飲めないって私子供だよね」
「そんなのは人それぞれだから気にする事は無いと思うぞ」
「ありがと♪」

「友也君はさ、どんな女の子が好きなの?」
「げほっげほ! いきなりどうしたんだ?」
「南に好意を持たれてるって知っても興味無さそうだったから」
「いや、興味が無いって訳じゃなくて実感が沸かないんだよ。ずっとぼっちだったし」
「じゃあ、告白されたら付き合うの?」

 新島のその言葉に俺の心の奥底にある何かが顔を出す。

「いや、俺なんかと付き合っても楽しくないと思うし、そもそも告白なんてされる訳ないって」
「ふ~ん」

 こういう時はどんな話題を出せばいいんだ? 
 新島は好きな奴いるのか? ってこれじゃ俺が気にしてるみたいだしダメだな。
 くっそ! 何か話題はないのか? 
 
『相手の事を話題にすればいいのよ』

 という柚希の言葉を思い出して、新島を観察しようと顔を上げると新島と目が合った。

「……」
「……」

 なんで新島はずっと俺を見つめてるんだ?

「……」
「……」

 新島の大きく透き通るような瞳に吸い込まれる様な錯覚に陥る。
 それに心なしか新島の顔が少し赤くなってるような……。
 
「………」
「っ……」

 可愛いな。それに新島の付けている香水の香りだろうか? ほんのりと甘い匂いがする。
 ずっとこうしていたいとすら思えてくる。
 俺は無意識に新島の名前を呼んでいた。

「楓……」

 俺の無意識の名前呼びで新島はハッ!っと意識が戻ったように俺から視線を外す。

「あ、えっと。ごめんない、この後用事あるんだった。先に帰るね」
「え? あ、ああ」
「お会計は済ませとくから、それじゃまたね」

 と捲し立てる様に言って店を出て行ってしまった。
 無意識とはいえ名前で呼んだのがマズかったのかな。
 俺も店を出て帰路に着く。
 今日の無邪気な新島が頭から離れない。
 帰りの電車に乗ろうとした時、スマホの通知音がなった。
 画面を見ると新島からだった。

「さっきはどめんなさい。せっかく付き合ってくれたのに」
「気にするな、さっきは俺も悪かったしな」

 これでやり取りは終わりだろうと思い、スマホをしまおうとすると、再び通知音が鳴った。

「これからは、楓って呼んでね♡」

 メッセージを確認した俺はその後家に着くまでの記憶が無かった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

ツンデレ王子とヤンデレ執事 (旧 安息を求めた婚約破棄(連載版))

あみにあ
恋愛
公爵家の長女として生まれたシャーロット。 学ぶことが好きで、気が付けば皆の手本となる令嬢へ成長した。 だけど突然妹であるシンシアに嫌われ、そしてなぜか自分を嫌っている第一王子マーティンとの婚約が決まってしまった。 窮屈で居心地の悪い世界で、これが自分のあるべき姿だと言い聞かせるレールにそった人生を歩んでいく。 そんなときある夜会で騎士と出会った。 その騎士との出会いに、新たな想いが芽生え始めるが、彼女に選択できる自由はない。 そして思い悩んだ末、シャーロットが導きだした答えとは……。 表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_) ※以前、短編にて投稿しておりました「安息を求めた婚約破棄」の連載版となります。短編を読んでいない方にもわかるようになっておりますので、ご安心下さい。 結末は短編と違いがございますので、最後まで楽しんで頂ければ幸いです。 ※毎日更新、全3部構成 全81話。(2020年3月7日21時完結)  ★おまけ投稿中★ ※小説家になろう様でも掲載しております。

あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。

NOV
恋愛
俺の名前は鎌田亮二、18歳の普通の高校3年生だ。 中学1年の夏休みに俺は小さい頃から片思いをしている幼馴染や友人達と遊園地に遊びに来ていた。 しかし俺の目の前で大きなぬいぐるみを持った女の子が泣いていたので俺は迷子だと思いその子に声をかける。そして流れで俺は女の子の手を引きながら案内所まで連れて行く事になった。 助けた女の子の名前は『カナちゃん』といって、とても可愛らしい女の子だ。 無事に両親にカナちゃんを引き合わす事ができた俺は安心して友人達の所へ戻ろうとしたが、別れ間際にカナちゃんが俺の太ももに抱き着いてきた。そしてカナちゃんは大切なぬいぐるみを俺にくれたんだ。 だから俺もお返しに小学生の頃からリュックにつけている小さなペンギンのぬいぐるみを外してカナちゃんに手渡した。 この時、お互いの名前を忘れないようにぬいぐるみの呼び名を『カナちゃん』『りょうくん』と呼ぶ約束をして別れるのだった。 この時の俺はカナちゃんとはたまたま出会い、そしてたまたま助けただけで、もう二度とカナちゃんと会う事は無いだろうと思っていたんだ。だから当然、カナちゃんの事を運命の人だなんて思うはずもない。それにカナちゃんの初恋の相手が俺でずっと想ってくれていたなんて考えたことも無かった…… 7歳差の恋、共に大人へと成長していく二人に奇跡は起こるのか? NOVがおおくりする『タイムリープ&純愛作品第三弾(三部作完結編)』今ここに感動のラブストーリーが始まる。 ※この作品だけを読まれても普通に面白いです。 関連小説【初恋の先生と結婚する為に幼稚園児からやり直すことになった俺】     【幼馴染の彼に好きって伝える為、幼稚園児からやり直す私】

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。

星名柚花
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。 引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。 見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。 つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。 ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。 しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。 その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…? 果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!? ※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。

転生モブは分岐点に立つ〜悪役令嬢かヒロインか、それが問題だ!〜

みおな
恋愛
 転生したら、乙女ゲームのモブ令嬢でした。って、どれだけラノベの世界なの?  だけど、ありがたいことに悪役令嬢でもヒロインでもなく、完全なモブ!!  これは離れたところから、乙女ゲームの展開を楽しもうと思っていたのに、どうして私が巻き込まれるの?  私ってモブですよね? さて、選択です。悪役令嬢ルート?ヒロインルート?

身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~

湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。 「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」 夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。 公爵である夫とから啖呵を切られたが。 翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。 地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。 「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。 一度、言った言葉を撤回するのは難しい。 そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。 徐々に距離を詰めていきましょう。 全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。 第二章から口説きまくり。 第四章で完結です。 第五章に番外編を追加しました。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編6が完結しました!(2025.11.25)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

処理中です...