自己顕示欲の強い妹にプロデュースされる事になりました

白石マサル

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第五章~過去との決別~

初めての痛み

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 土曜日になり、俺は今ターミナル駅のいつもの集合場所にいる。
 楓から許可を貰った日の夜、柚希に話した所、ここで待ち合わせという事になったのだ。
 因みに、楓が俺ん家に来るのは両親と柚希が居ない日にという事になった。
 それってやっぱりアレなのかなぁ。

 おっと危ない危ない。また楓の事を考えてしまっていた。
 今はこれからのデートの事を考えなければ。
 結局都築の奴、最後まで名前を教えてくれなかったしなぁ。
 大分慣れてきたとはいえ、初対面の女の子は緊張する。
 チラッとスマホで時間を確認するが、まだ約束の15分前だ。
 いつもの癖で早く来すぎたかな? と思っていると見た事のある女の子が近づいてきて

「友也さん、こんにちは」

 と挨拶されたので反射的に

「こんにちは」

 と返すが誰だか思い出せない。
 何処かで見た事ある気はするんだけどなぁ。
 もしかしてこの子が約束の女の子なのかもしれない。

「早いですね、まだ15分前ですよ」
「ああ、いつも10分前行動を心がけてるから」
「今日は我儘言ってごめんなさい。ビックリしましたよね?」
「うん、ビックリした。でも謝る必要はないから大丈夫だよ」
「ありがとうございます」

 と言ってペコリとお辞儀をする。
 こういう場合は自己紹介した方がいいよな。

「改めて自己紹介するね。柚希の兄の佐藤友也さとうともやです。よろしく」
「あ、染谷恵美そめやめぐみです。よろしくお願いします」

 と、再びペコリとお辞儀をする染谷さん。
 ん? 染谷恵美? 確かめぐの名前も……。

「ええぇぇ! もしかしてめぐ?」
「え? 気づいてなかったんですか!」

 ガックリと肩を落として落ち込んでしまった。
 これは俺が全面的に悪い。
 でも、前回会った時より大人びて見えるし、服装も落ち着いた雰囲気だ。
 化粧も以前と違っている。

「ご、ごめんめぐ! 前会った時と全然印象違ってたから」
「いえ、私元々存在感ないですから大丈夫ですよ」
「そうじゃなくて、前よりずっと大人っぽくなって綺麗だったから!」
「本当ですか~?」
「ホントホント、凄い綺麗だよ」
「ふふ、ありがとうございます」

 何とかめぐの機嫌が直ってよかった。
 女の人ってこんなに変わるんだなぁ。
 いやいや、ちょっと待って! 俺を好きな女の子ってめぐだったのか!
 そう言えば前に柚希が俺に惚れたとか言ってたけど冗談だと思ってた。
 じゃあ、あの時からずっと俺の事を?
 ヤバイ、急に緊張してきた。

 俺が妙な緊張で黙っていると

「やっぱり迷惑でしたか?」

 と悲しそうな顔で言ってきた。

「迷惑とか思ってないよ。ただ、なんだか緊張しちゃって」
「なんで緊張するんですか~」
「いや、めぐって俺の事好きだったんだなって思っちゃって」
「私でも緊張してくれるんですね、嬉しいなぁ」

 自分の事を好きだとわかってる女の子と一緒で緊張するなって方が無理だ。

「えっと、今日はデートでいいんだよね?」
「はい、よろしくお願いします」

 ペコリとお辞儀をした後に

「お願いついでにもう一ついいですか?」
「いいよ、なに?」
「今日はめぐじゃなくて、恵美って呼んで下さい」
「うん、わかった」

 こうして俺達の最初で最後のデートが始まった。

 ずっと此処でこうしてる訳にもいかないので

「とりあえず歩こうか?」
「はい」
「何処か行きたい所とかある?」
「ん~、それじゃあ」

 と言って、恵美の案内で目的地に向かう。
 着いた先は小物屋だった。
 可愛らしい物からよくわからな物まである。

「ここ、ずっと友也さんと来たかったんですよ~」

 その言葉にズキリと胸が痛む。
 俺はそれを紛らわすかのように

「他には行きたい所はある?」
「そうですねぇ、デートの定番なので映画観ませんか?」

 映画館に着くと、丁度話題の映画が始まる所だったので急いでチケットを買い中に入る。
 暗い館内で、スクリーンの光を浴びて映る恵美の顔は楽しそうだった。
 その楽しそうな顔を見て、また胸が痛む。

 映画を見終わって喫茶店でさっき見た映画の感想を話す。
 一通り話し、今度はウィンドウショッピングを楽しむ。
 
「あ! これ可愛い!」 「これ友也さんに似合うんじゃないですか?」

 と、色々手に取り楽しそうに笑顔を向けてくる。
 その度に胸がチクリと痛む。

 そうこうしている内に、日が落ち始めたので自宅の最寄り駅まで帰ってきた。
 改札を出てしばらく歩く。
 商店街を抜けて住宅街に入り、もうすぐ俺の家に着く。
 そうしたらこのデートも終わりを告げる。
 それを察したのか、急に恵美が立ち止まる。

「どうしたの?」
「それ、聞いちゃいます?」

 何も答えられず黙ってしまう。
 俺は何て言えばいいのだろう。

「ごめんなさい、今のは意地悪でしたね」
「いや、そんな事は……」

 ないよ。という言葉が出て来なかった。

「友也さん、今日は付き合ってくれてありがとうございました」
「お礼を言われる様な事は何もできてないよ」
「そんな事ないです! 今日デートしてくれただけで嬉しいです」
「そっか、ならよかった」

 少しの沈黙の後

「春休みに初めて話した時から好きでした!」
「……うん」
「友也さんの事が好きです! 付き合ってください!」

 とうとうこの時が来てしまった。
 言わないでくれと願った言葉を言われてしまった。
 恵美の顔を見ると、涙えお浮かべながら俺を真剣に見つめている。
 真剣さが伝わってくる。
 俺も真剣に恵美の気持ちに向き合わないとな。

「ごめん、今好きな人が居るから付き合えない」

 俺の言葉を聞いて、遂に涙が溢れた。

「私じゃ……ダメなんですよね?」
「……ごめん」

 人目もはばからず泣きじゃくる。
 胸が痛い。
 こんなにも辛いのか。
 でも、はもっと辛いに決まってる。
 最初から答えが分かっている告白。
 一体どれほどの勇気を振り絞ったのか……。
 俺は思わず声を掛ける。

「めぐ……」

 俺の呼びかけに、必死で涙を拭って

「めぐに戻っちゃいましたね……」
「あっ」

 俺がしまった! と思っていると

「でもこれでいいんです。最初から答えは分かってましたし」
「……」
がそんな顔しないで下さい。分かり切ってた事ですから」
「でも……」
「それに、これでやっとスッキリしました! キッパリ振ってくれてありがとうございます。これで私達は只の先輩後輩です」
「ああ、めぐは一番大切な後輩だよ」
「ゆずよりですか?」
「柚希は後輩の前に妹だからな」
「ふふ、それもそうですね」

 そう言って笑う。やっぱりこの笑顔が一番だ。
 めぐは今日一番の笑顔を見せて

「次はもっと素敵な恋愛をしますから! ありがとうございました!」

 と言って走り去っていってしまった。
 その背中を眺めながら

「俺なんかを好きになってくれてありがとう」

 と独り言ちて、俺は反対方向に向かって歩き出した。
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