自己顕示欲の強い妹にプロデュースされる事になりました

白石マサル

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第七章~ヒメゴト~

桐谷沙月の事情

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 バイト初日の夜の会議。
 偶然合コンで知り合った沙月と再開した事を伝える。

「それはもう運命だね! ちゃんと仲良くしてその子を落としてね」
「仲良くはするけど、落とすとかそんな事はしないから」
「ホントかな~?」
「大体、落とせる様なテクニックなんてないからな」

 その後も沙月をハーレムに入れるだとか言われたが断固拒否した。


 バイトを初めて一週間が過ぎた。
 仕事の方は段々と慣れてきて、自分である程度動ける様になってきた。

 そしてこの一週間で沙月の事も分かった。
 職場の先輩から聞いた話によると沙月は結構な面食いで、男をとっかえひっかえしているらしい。

 噂を鵜呑みにする事は出来ないし、そんな素振りも見られない。
 俺が楓と付き合った時みたいに嫉妬や妬みで流れた噂かもしれないしな。

 そしてバイト中は何かにつけて

「ここでは私の方が先輩ですから!」

 と言ってくる。
 沙月は俺が入るまで一番の新人だったらしいので、俺が入って先輩面したいのだろう。
 特にそれで困っている訳ではないので今では軽く流している。


「おはようございます」

 と言いながら事務所に入り、制服に着替える。
 椅子に座り勤務開始まで目を瞑りリラックスするのが俺のお決まりになっていた。

 目を瞑ったタイミングで女子更衣室のドアが開く。
 どうやら俺が更衣室で着替えている間に出勤したようだ。
 シフト表だと沙月が一緒に出勤になっている。

「あ! おはようございます~」
「おはよう、今日は早いね」
「まあ、そんな気分だったので」

 気分で出勤時間を変えちゃいかん。
 俺みたいにいつでも早めに出勤しないと。
 なんて事を考えていると

「友也さんにとって私ってなんですか?」
「バイトの先輩」
「その通り! なので今日はお願いがあるんです」
「職権乱用か?」
「口答えしないでください。お願いですから~」

 もう先輩風吹かせたいのか後輩キャラを生かしたいのかよく分からなくなってるな。
 でも本当に何か困ってる感じだ。

「お願いってのはなんだ先輩」
「今日は7番テーブルは友也さんが全部担当してください」
「バイト中ずっとか? 流石にそれはキツくないか?」
「あ、大丈夫です。恐らく一人でずっと居ると思うので」
「ん? 知り合いか誰かなのか?」
「えっと、苦手な人が来てるんです……」

 沙月がこんなにハッキリ苦手と言うなんてな。
 ストーカーまがいな事とかされてるのだろうか?

「分かったよ、一つ貸しだからな?」
「ありがとうございます!」

 そしてタイムカードを押してホールに出る。
 皆に挨拶してから7番テーブルを確認する。

 7番テーブルには黒髪ロングで水色のワンピースに白のカーディガンを羽織った女性が居た。
 てっきり変な男に付き纏われていると思っていたから拍子抜けした。

 でも沙月のあの嫌そうな顔は演技じゃないと思う。
 もしかしたら着替えている間に帰った可能性もある。

「沙月、7番テーブル見てきたけど女の人が一人居るだけだったぞ?」
「その女の人です! 苦手なんで友也さんお願いします」

 あの女の人が苦手?
 確かに大人しそうで沙月とは正反対な感じはあるけど。
 なんて考えていたら

ピンポーン

 と呼び出し音が鳴り、テーブルを確認すると7番テーブルだった。
 チラリと沙月をみると手を顔の前で合わせて拝んでいる。
 仕方ないので約束通り7番テーブルに向かう。

「ご注文はお決まりでしょうか?」

 バイトで身に付けた営業スマイルで尋ねると

「ひゃっ! あの、えっと、桐谷さんは?」
「申し訳ございません、桐谷は他の仕事の最中でして。よければ私が承ります」
「そ、そうですか。そ、それじゃあ、アイスココアください」
「アイスココア御一つですね? かしこまりました、少々お待ちください」

 注文を済ませカウンターに戻ると沙月が

「どうでしたか?」

 と聞いてくる。

「最初に沙月を指名されたよ。他の仕事してるって言ったら大人しく引き下がったぞ」
「そうですか、他に変な事無かったですか?」
「変な事?」
「暗い奴だな~とか、気持ち悪いとか」
「いや、まぁ暗いというか人に慣れてない感じはしたかな」

 まるでぼっちだった頃の俺みたいだったな。
 気になった事と言えば、原稿用紙に何か書いていた事位か。
 でもこれはお客様のプライバシーだから言えないな。

 そしてその後も7番テーブルから呼ばれる度に俺が対応した。
 しかしお会計の時にビックリさせられた。

「お会計1698円になります。2000円お預かりします、302円のお返しです」

 と会計を済ませた後に、女の人から話しかけられた。

「あ、あの、すみません」
「はい、いかがなさいましたか?」
「ま、間違ってたらごめんなさい。えっと、佐藤友也さん……ですよね?」

 え? 何で俺の事しってるんだ?
 沙月の言う通りやっぱり危ない人なのだろうか。

「はい、そうです。どこかでお会いしましたでしょうか?」
「い、いえ、会ってないです。ごめんなさい!」

 と言って急いで店から出て行った。
 この事を沙月に話すと

「えー! 声かけられたんですか!?」
「俺もビックリしたけど、何で俺の事知ってたんだろう?」

 と疑問を口にすると、意外な答えが返ってきた。

「あ~、それはあの人が友也さんと同じ高校だからじゃないですか? 孝弘から聞きましたけど友也さん学校じゃかなり有名人みたいなのでそれで知ってるんですよ」

 なんだ同じ学校だったのか。なら沙月の言う通り俺の事知っててもおかしくないな。

「それよりよくあの人が俺と同じ高校って知ってるな、苦手なんじゃないのか?」

 と質問すると意外過ぎる答えが返ってきた。

「実はあの人私の姉なんですよ。咲崎高校の3年です。あんな暗い奴が姉とか勘弁して欲しいです」

 今日一番の驚きだった。
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