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戦いの後の宴会
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そうしてその夜は宿で遠征終了の祝いが催された。宿の一階は貸し切り状態で上や下への大騒ぎ。御馳走がテーブル一杯に並べられ、民族音楽のような素朴な音楽が流れている。
翼竜たちも小さなサイズになって、低い天井の宿を飛び回っていた。彼らにも好物の生肉が振舞われる。
そうして騎士たちは遠征中は禁止されていた酒を、ここぞとばかりに呑むのだ。愛も強制参加させられて、ビールのようなお酒を何杯も注がれた。それが意外に芳醇な香りが後を引いて美味しい。
(うーん。ウィスキーの香りとビールが合わさった感じかな。変わったお酒だけど美味しい)
二階の客室からガイルが降りてきて、トーマスの外傷は思ったほどひどくはなかったこと。もう意識ははっきりとしているが念の為に休ませていると伝えると、騎士たちはいっせいに大声を出して湧いた。
それは宿の照明が大きく揺れるほど。そこから宴会は更に盛り上がる。
骨折や深い傷を負った騎士はアルコール禁止なのだが、テスは 『俺は帝国の騎士として最後の試練に耐えなくてはならない。このクエストに耐えてこそ俺は男になる』と真顔で宣言し、店で一番きつい酒を一気にあおった。
案の定出血がひどくなって、テスはみんなに笑われながら怒ったガイルに治療魔法を施される。
(ふふ、本当に困った騎士達だわ。子供みたいなんだから)
副団長のエヴァンは愛のことをまだよく思っていないようで、宴会の間一度も目を合わせようとしない。あの後、エヴァンに呼び出された愛はこんなことを言われた。彼の鋭い瞳が遠慮なしに愛を睨みつける。
『トーマスが息を吹き返したのはただの偶然です。ですから自分の力を過大評価しないように。それと団長に気に入られているとはいえ遠征は終わったのです。もう団長に世話係は必要ありません。今後の自分の身の振り方を考えておくように』
そうして愛はエヴァンに何も言い返せなかった。確かにそれは正論。これからのことを考えないといけないと自分でも思ってはいた。ただ、今夜だけは彼らの無事を純粋に祝いたい。
(そうよ。今日はせっかくのお祝いの日。嫌なことは忘れよう!)
「おおっ! アイ、いい呑みっぷりだな。もう一杯いけっ!」
愛は勧められるがままにお酒を呑むが、その顔色は一向に変わらない。
彼女はいくら飲んでも酔えない体質だった。盛り上がって馬鹿なことをしている男性の中で一人、彼女だけは冷静そのもの。でも宴会を楽しんでいないわけではないのだ。
刑事として大勢の男性の中で過ごしてきたので、こういったハチャメチャな宴会には免疫がある。それどころか体育会系の男たちが無茶をやっているのを見るのは楽しい。
(あぁ、こういうの久しぶり。楽しいわ)
彼らがはしゃいでいる姿を肴に愛は楽しく酒を呑んでいた。
初めはダグラスの隣で座っていたのだが、次にエグバートがいる集団に呼ばれて向こうの席についた。ダグラスは嫌そうだったが、エヴァンの手前何も言わずに愛を行かせる。
彼女が女だということを誰も知らないのだから仕方がないと思ったのだろう。そこからはルーカスやモリス。ほとんど全部の騎士に呼ばれてはまたお酒を注がれた。
「アイ、これなんだと思う?」
酔っぱらったモリスが愛の肩に腕を回し、桃のようなものを勧めてきた。丸くて桃色のそれは、触ると少し柔らかい。匂いも甘くて美味しそうだ。
「なんですか? これ」
「いいから食ってみな」
他の騎士達もにやにやと意味深な表情で愛を見ている。嫌な予感がしながらも口に運ぶと甘い味が広がった。幸せな気分になったのもつかの間、次に強烈な酸味が口内に広がる。愛は思わず顔をしかめて立ち上がった。
「ちょ! モリスさ……こっ!」
モリスの肩をバシバシ叩いて抗議するが、全く言葉にならない。直接お酢を口に含むよりも数倍酸っぱいのだ。
「はははっ! やっぱりアイは知らなかったんだな。これはジルミっていう大陸の果物で、酔っぱらってるときに食うとすっごく酸っぱくなるんだ。面白いから宴会にはよく出される。大抵みんな知ってて警戒してるから、こっそり食事に混ぜたりするんだけどな」
騎士たちは愛の反応を見て大いに盛り上がっている。水を何杯飲んでも、口の中の酸味はなかなか消えなかった。そればかりかその酸味が体の中を通り過ぎて降りてきたようで、股間がじんじんしてくる。
そうしてなぜだか息まで熱く短くなってきた。まるで全力疾走した後のよう。しかもそれは時間が経つにつれて酷くなっていく。
(な……なんか……これ、おかしい。か……体までほてってきた)
「あ、でもアイ。女の子には食べさせちゃだめだよ。これはお酒と混ざると催淫作用があるから。男にも多少は効くはずだけど――まあ僕たちは普段とあんまり変わんないよね、モリス」
「ははっ! 言えてる! 俺たち騎士はいつだって全力でスケベだからな! わはははっ!」
みんな盛り上がってわいているが、その言葉を聞いた愛は真っ青になって口を押さえた。
(ちょ! ちょっと! そんなの、もっと早く言いなさいよ! じゃあこれって媚薬ってこと!)
このまま部屋に戻ろうと思っても、ほんの少し動くだけで服が肌に擦れてそのたびに快楽が襲ってくる。全身が熱を帯びたように熱くなって、肌の細胞一つ一つが覚醒したかのよう。
視界が曇ってきて初めて愛は自分が瞳を潤ませていることに気が付いた。
ちょうど向こうのほうで騎士達が揃って歌い始めたので、愛の変化には気づかれていない。彼女は自分の腕を肩に回して体を小さくするが、足ががくがく震えてきた。
(も、もう。座ってられない……! ダグラスっ!)
「だ、団長?」
モリスの声が聞こえて急に体が宙に浮いた。どうしたのだろうと思っていると、どうやらダグラスが愛の体を抱き上げたらしい。
「飲みすぎだ、アイ。部屋で休んでおけ」
翼竜たちも小さなサイズになって、低い天井の宿を飛び回っていた。彼らにも好物の生肉が振舞われる。
そうして騎士たちは遠征中は禁止されていた酒を、ここぞとばかりに呑むのだ。愛も強制参加させられて、ビールのようなお酒を何杯も注がれた。それが意外に芳醇な香りが後を引いて美味しい。
(うーん。ウィスキーの香りとビールが合わさった感じかな。変わったお酒だけど美味しい)
二階の客室からガイルが降りてきて、トーマスの外傷は思ったほどひどくはなかったこと。もう意識ははっきりとしているが念の為に休ませていると伝えると、騎士たちはいっせいに大声を出して湧いた。
それは宿の照明が大きく揺れるほど。そこから宴会は更に盛り上がる。
骨折や深い傷を負った騎士はアルコール禁止なのだが、テスは 『俺は帝国の騎士として最後の試練に耐えなくてはならない。このクエストに耐えてこそ俺は男になる』と真顔で宣言し、店で一番きつい酒を一気にあおった。
案の定出血がひどくなって、テスはみんなに笑われながら怒ったガイルに治療魔法を施される。
(ふふ、本当に困った騎士達だわ。子供みたいなんだから)
副団長のエヴァンは愛のことをまだよく思っていないようで、宴会の間一度も目を合わせようとしない。あの後、エヴァンに呼び出された愛はこんなことを言われた。彼の鋭い瞳が遠慮なしに愛を睨みつける。
『トーマスが息を吹き返したのはただの偶然です。ですから自分の力を過大評価しないように。それと団長に気に入られているとはいえ遠征は終わったのです。もう団長に世話係は必要ありません。今後の自分の身の振り方を考えておくように』
そうして愛はエヴァンに何も言い返せなかった。確かにそれは正論。これからのことを考えないといけないと自分でも思ってはいた。ただ、今夜だけは彼らの無事を純粋に祝いたい。
(そうよ。今日はせっかくのお祝いの日。嫌なことは忘れよう!)
「おおっ! アイ、いい呑みっぷりだな。もう一杯いけっ!」
愛は勧められるがままにお酒を呑むが、その顔色は一向に変わらない。
彼女はいくら飲んでも酔えない体質だった。盛り上がって馬鹿なことをしている男性の中で一人、彼女だけは冷静そのもの。でも宴会を楽しんでいないわけではないのだ。
刑事として大勢の男性の中で過ごしてきたので、こういったハチャメチャな宴会には免疫がある。それどころか体育会系の男たちが無茶をやっているのを見るのは楽しい。
(あぁ、こういうの久しぶり。楽しいわ)
彼らがはしゃいでいる姿を肴に愛は楽しく酒を呑んでいた。
初めはダグラスの隣で座っていたのだが、次にエグバートがいる集団に呼ばれて向こうの席についた。ダグラスは嫌そうだったが、エヴァンの手前何も言わずに愛を行かせる。
彼女が女だということを誰も知らないのだから仕方がないと思ったのだろう。そこからはルーカスやモリス。ほとんど全部の騎士に呼ばれてはまたお酒を注がれた。
「アイ、これなんだと思う?」
酔っぱらったモリスが愛の肩に腕を回し、桃のようなものを勧めてきた。丸くて桃色のそれは、触ると少し柔らかい。匂いも甘くて美味しそうだ。
「なんですか? これ」
「いいから食ってみな」
他の騎士達もにやにやと意味深な表情で愛を見ている。嫌な予感がしながらも口に運ぶと甘い味が広がった。幸せな気分になったのもつかの間、次に強烈な酸味が口内に広がる。愛は思わず顔をしかめて立ち上がった。
「ちょ! モリスさ……こっ!」
モリスの肩をバシバシ叩いて抗議するが、全く言葉にならない。直接お酢を口に含むよりも数倍酸っぱいのだ。
「はははっ! やっぱりアイは知らなかったんだな。これはジルミっていう大陸の果物で、酔っぱらってるときに食うとすっごく酸っぱくなるんだ。面白いから宴会にはよく出される。大抵みんな知ってて警戒してるから、こっそり食事に混ぜたりするんだけどな」
騎士たちは愛の反応を見て大いに盛り上がっている。水を何杯飲んでも、口の中の酸味はなかなか消えなかった。そればかりかその酸味が体の中を通り過ぎて降りてきたようで、股間がじんじんしてくる。
そうしてなぜだか息まで熱く短くなってきた。まるで全力疾走した後のよう。しかもそれは時間が経つにつれて酷くなっていく。
(な……なんか……これ、おかしい。か……体までほてってきた)
「あ、でもアイ。女の子には食べさせちゃだめだよ。これはお酒と混ざると催淫作用があるから。男にも多少は効くはずだけど――まあ僕たちは普段とあんまり変わんないよね、モリス」
「ははっ! 言えてる! 俺たち騎士はいつだって全力でスケベだからな! わはははっ!」
みんな盛り上がってわいているが、その言葉を聞いた愛は真っ青になって口を押さえた。
(ちょ! ちょっと! そんなの、もっと早く言いなさいよ! じゃあこれって媚薬ってこと!)
このまま部屋に戻ろうと思っても、ほんの少し動くだけで服が肌に擦れてそのたびに快楽が襲ってくる。全身が熱を帯びたように熱くなって、肌の細胞一つ一つが覚醒したかのよう。
視界が曇ってきて初めて愛は自分が瞳を潤ませていることに気が付いた。
ちょうど向こうのほうで騎士達が揃って歌い始めたので、愛の変化には気づかれていない。彼女は自分の腕を肩に回して体を小さくするが、足ががくがく震えてきた。
(も、もう。座ってられない……! ダグラスっ!)
「だ、団長?」
モリスの声が聞こえて急に体が宙に浮いた。どうしたのだろうと思っていると、どうやらダグラスが愛の体を抱き上げたらしい。
「飲みすぎだ、アイ。部屋で休んでおけ」
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