28 / 100
第二十八夜 着信
しおりを挟むプルルル、プルルル、
「あっ、まただ。」
「どうした?」
「秀樹、今俺に電話掛けてる?」
「いや、何で?」
「今お前から電話かかってきてる。ちょっと携帯出してみろよ。何か押したかもしれないだろ。」
「‥‥いや、発信履歴にお前の名前ないよ。」
「‥‥。」
またか。俺の携帯電話には着信履歴がたくさんある。だがほとんどは、かけた相手がかけた覚えのない履歴ばかりだ。
今も、俺の部屋で寛いでる秀樹から着信があったのだ。だがやはりかけた本人の発信履歴に俺の名前はない。
「なぁ、まだ着信鳴ってるなら、一度出てみたら?」
「あっ、もう切っちゃった。でも、これお前の名前と電話番号だろ。着信履歴が今の時間でついてるし。」
「ああ、変だな。なんか混線してんじゃないの。」
「そうだよな。まぁ、いいか。」
俺は、ちょうどノートパソコンを開いていたのでついでにネット検索をしてみた。
「おっ、結構ある事例みたいだぞ。身に覚えのない着信や発信の履歴について、たくさん質問とその回答が載ってるや。へぇ~、かかってきた電話に出ても、たいていは無言電話らしいよ。中には未来の日時で発信履歴ついてる人もいるや。変なの。」
てっきり心霊系の現象かと思った俺は安心したのと同時に、何だか拍子抜けしてしまった。
「じゃあさ、今度かかってきたらお前も出てみろよ。」
「そうだよな、変な着信があったら今度はきらずに出てみるよ。」
そんな話をしてた翌日、学校で物理の授業中に早速変な着信があった。俺からだった。俺の携帯から俺の携帯に電話がかかってくる?そんな馬鹿な。それに今は機内モードにしてるから、着信もシャットアウトするはずなのに‥‥
携帯はまだ着信をバイブで知らせていた。
「すみません。トイレに行ってきます。」
俺は携帯に出たい衝動にかられて、トイレに行くことにした。
「なんだ、我慢できんか。すぐに帰って来いよ。」
先生がそう言うと、廊下からクラスの奴らが笑っているのが聞こえた。
トイレに行って個室に入り、電話に出ようとしたが誰かが入っていた。
「チッ。」
俺は思わず舌打ちしてしまった。だが、もう一つの個室は空いていたのでそっちに入った。
「もしもし?」
「‥‥。」
やはり無言だった。あのネットの情報通りの展開に俺はすこしがっかりした。でも一度変な着信の電話に出てみた事で、納得できた自分がいた。
キィー、バンッ。タタタタタ‥‥
隣の個室の奴が先に個室から出て教室へ戻っていく音が聞こえた。俺も個室から出ようとすると‥
「チッ。」
俺の声がした。
キィー、バンッ。
隣の個室に入ったようだ。
「もしもし?」
隣で携帯電話で話してるらしき声は、やっぱり俺の声だった。
『もしもし?』
俺の携帯からも、俺の声がした。俺は急に怖くなり、トイレのドアを開けると急いで教室へ戻った。
ガラガラッ
「おっ、スッキリしたか?」
先生がからかうように俺に言った。クラス中がまた笑いに包まれた。
俺の心臓はまだドキドキしていた。
ふと携帯電話の着信履歴を見ると、俺から俺への着信履歴がずっと続いて表示されていた。
あのループがまだ続けられているのか?
俺は携帯電話の電源を落として、再起動させた。すると俺から俺への着信履歴はそこでストップしていた。
これは、本当に携帯電話のバグだけの問題なのだろうか?
俺は携帯電話を解約し、契約会社も変えた。それからは変な着信履歴はもうない。
あれが携帯電話のバグなのか、何なのか分からない。
だがあの時、俺がもう一人の俺と遭遇していたらどうなっていたんだろうかと思うと、今でもぞっとしてしまう自分がいた。
0
あなたにおすすめの小説
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2025/12/12:『つえ』の章を追加。2025/12/19の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/11:『にく』の章を追加。2025/12/18の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/10:『うでどけい』の章を追加。2025/12/17の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/9:『ひかるかお』の章を追加。2025/12/16の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/8:『そうちょう』の章を追加。2025/12/15の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/7:『どろのあしあと』の章を追加。2025/12/14の朝8時頃より公開開始予定。
2025/12/6:『とんねるあんこう』の章を追加。2025/12/13の朝8時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
どうしてそこにトリックアートを設置したんですか?
鞠目
ホラー
N県の某ショッピングモールには、エントランスホールやエレベーター付近など、色んなところにトリックアートが設置されている。
先日、そのトリックアートについて設置場所がおかしいものがあると聞いた私は、わかる範囲で調べてみることにした。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
【1分読書】意味が分かると怖いおとぎばなし
響ぴあの
ホラー
【1分読書】
意味が分かるとこわいおとぎ話。
意外な事実や知らなかった裏話。
浦島太郎は神になった。桃太郎の闇。本当に怖いかちかち山。かぐや姫は宇宙人。白雪姫の王子の誤算。舌切りすずめは三角関係の話。早く人間になりたい人魚姫。本当は怖い眠り姫、シンデレラ、さるかに合戦、はなさかじいさん、犬の呪いなどなど面白い雑学と創作短編をお楽しみください。
どこから読んでも大丈夫です。1話完結ショートショート。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる