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13、誤解だよ‥
しおりを挟むレミーが立ち去った後のテラスでは、ダイアン王子を取り囲んでの反省会が行われていました。
「‥誤解された。」
「‥王子、ごめんなさい。私が虫に驚いてよろめいたばかりに‥。」
「いや、いいんだ。大丈夫。」
「‥‥。」
実は、このテラスに集まっているメンバーは、ハインリヒ様がダイアン王子の恋を応援する為に集めたメンバーだったのです。
ちなみに令嬢達は、ハインリヒ様がこの国に滞在中に仲良くなったご友人達です。女性目線でのアドバイスを王子にする為に、集まってくれたのです。
レミーはまだ知りませんが‥。実は、ダイアン王子、お酒が入るとオレ様的王子に変わるのですが、昼間は相変わらずの‥うじうじしたヘタレ王子なのでした。
王子は成人のお祝いの会で、レミーにキスをしてしまった事や、途中で令嬢達に囲まれてレミーと話もしないまま先に帰らせてしまった事に対し、ひどく落ち込んでいたのです。
ダイアン王子とレミーが正式に婚約者になった事を、自分の口からはまだレミーに伝えられてないどころか、あれからレミーと口すらきいてなかったのです。
それを励ましたり、応援するための集まりだったのに‥。
皆んなでヒソヒソ話し合っていたり、令嬢がダイアン王子と抱き合うハプニングがあったりして、逆にレミーに悪い印象を与えてしまった事を、メンバー全員が反省をしていました。
「ダイアン、今からでも良い。すぐにレミーを追いかけるんだ。」
「‥駄目だ。何を話せばいいのか分からない。少し頭を整理したい。」
「‥王子、女性はこんな時、理屈とか説明とか求めていないのですよ。ただ、追いかけてきてくれる、それだけを求めているのです。」
「ダイアン、追いかけるんだ。」
「ハインリヒ、皆んな、ありがとう。」
ダイアン王子は皆んなに背中を押されて、ようやくレミーを追いかけに行きました。
「レミー!レミー!」
庭の中をトボトボと歩くレミーでしたが、自分の背後からダイアン王子の声が聞こえてきた為、驚いて振り返りました。
「レミー!」
ダイアン王子は、私をわざわざ追いかけてきてくれたのかしら?レミーはそう思って立ち止まり、ダイアン王子が来るのを大人しく待ちました。
レミーに追いついたダイアン王子は、レミーの目を見て、真剣な面持ちで言いました。
「‥レミー、誤解なんだ。あの人達はハインリヒの友達で、僕と君との仲を応援してくれてくれてる人達なんだ。それに‥‥あの時僕が令嬢を抱きとめていたのは、彼女が虫に驚いてよろめいたのを、僕が受け止めていただけなんだ。」
「‥‥そうなんですか。ダイアン王子、それを言う為にわざわざ私を追いかけて来てくれたんですか。」
「そうだよ。君に誤解されたと思ったから‥。」
「‥ごめんなさい。誤解しました。」
「‥やっぱり。追いかけて来て良かった。皆んなの言う通りだった。」
「‥えっ?」
「‥いや、何でもないんだ。」
「ところで、レミーはなぜここに?」
「王様に呼ばれて来たんです。」
「‥じゃあ、もう聞いた?」
「はい。ダイアン王子の正式な婚約者となりました。‥それをダイアン王子に伝えたくてここまで来たんです。‥ダイアン王子の婚約者になる事を、謹んでお受けしますって、ダイアン王子に言いたくて‥。」
「レミー!」
ダイアン王子は、レミーを抱きしめました。
「ダイアン王子、苦しい‥。」
「ごめん。」
「ダイアン王子?何だか前回と様子が違いますね。」
「ごめん。実は‥僕はどうやらお酒が入るとああなるらしい。‥残念な事に昼間の僕は相変わらずのいくじなしだけどね。」
「うーん‥。前回の不良っぽいダイアン王子も新鮮でドキドキしましたけど、今の昼間の王子も誠実で人間味があって、結構好きですよ。」
「レミー!ありがとう。」
「‥逆にダイアン王子は、本当に私なんかが婚約者で良いのですか?」
「勿論!レミーが良い。僕にはレミーが、世の令嬢達の中で一番可愛く見えてしまうんだ。」
「ダイアン王子、私達、相思相愛ですわね。」
「ああ、そうだよ。僕達は相思相愛の婚約者だ。」
「素敵!まるで、物語のヒロインにでもなった気分です。」
私達は再び抱き合って、喜びを分かち合いました。
「‥あっそうそう、レミーにもう一つ言う事があったんだ。」
「‥えっ、何ですか。」
「もうじき他国へ行くんだ。」
「えーっ!?」
「この前まで通っていた寄宿制の男子校の、上の学校に行くんだ。
そこで、様々な国の大貴族の子達と交流し、人脈を作って来ようと思う。それにその学校特有のリーダーシップ教育や、紳士教育、あとは語学も何カ国語かマスターしたいし。」
「‥‥そう、ですか。‥いや立派だと思います。‥‥そうです、か。」
「‥大丈夫!また三年間こっちには戻って来れないけど、三年間なんてあっという間だよ!」
「‥三年間‥。」
「‥レミー?」
「‥‥すみません、危うく気を失いそうになりました。‥‥ダイアン王子、良いと思います。三年間頑張って行って来て下さい。婚約者として応援してます。」
せっかくお互いの心が通じあったのに‥、またすぐに離れ離れになってしまうのだという事実に、レミーは一瞬気を失いそうになりました。
‥でも王子の将来にとって、上の学校に進学して学ぶ三年間はとても意味のあるものだという事も理解できました。
レミーはダイアン王子を三年間待つ覚悟を、この瞬間に決めたのでした。
「レミー、手紙を書くよ。」
「手紙!?手紙を書いてくれるんですか。私、今までダイアン王子から手紙なんて一度も貰った事がないから嬉しいです。」
「‥‥うん、何かごめんね、今まで。」
「お手紙、月に一度は下さいね。」
「分かった。必ず書くから。」
ダイアン王子はレミーを家まで送ると、旅立ちの準備を整えました。
そして数日後、ダイアン王子はハインリヒ様と共に他国の学校へ進学されたのでした。
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