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第49話 ぼっちはものを返すのにも一苦労する
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あの後、コンビニを後にした唯斗は、結局ハハーンからお小遣いを半額にすると言い渡されてしまった。
瑞希の件で遅くなったとは言え、あまりに酷すぎる仕打ちである。いつか絶対に悪を討ち滅ぼしてやると決意しつつ、彼は自分の部屋のベッドへと向かった。
「……あっ」
部屋に入るなりすぐに横になろうとして、唯斗はふと自分の手に持っているエコバッグを見つめる。
瑞希に借りたものだけど、いつ返せばいいんだろう。次に会うのはいつになるか分からないし、何も言わずにずっと持っているというのもおかしな話である。
「でも、連絡先知らないからなぁ」
夕奈経由で聞くことも出来そうではあるが、何となくそれは避けたい。ならば他に手段はなくなるわけだけど……。
「あ、そう言えば……」
そんな時、唯斗はふと思い出した。夕奈の見送りをしに行った日に、花音から電話がかかってきていたことを。
どうやってアカウントを知ったのかは知らないが、瑞希の連絡先を知る手段になるのなら、細かいことは気にしないでおこう。
『瑞希の連絡先を教えて欲しい』
トーク画面を開いてそう送ると、数秒で既読がついた。あちらも暇なのかもしれない。
『もしかして、気になってるんですか?』
『そうじゃないと聞かないよ』
そう返信すると、少し間が空いてから『送ってもいいか聞いてみますね!』と返ってきた。
なるほど、花音にはそういう常識があるんだね。それなら問題なのは彼女に僕のを教えた側か。大体の察しはついてるけど。
『OK出ました! これです!』
3分ほど後に送られてきたものに『ありがとう』と礼を言ってから、唯斗は瑞希との真っ白なトーク画面を開く。
彼が『エコバッグ、いつ返せばいい?』と送ると、直後に既読が付いてその数秒後には返信が送られてきていた。
『次に会った時でいいぞ』
『それだと始業式になるよ?』
『何言ってるんだ? また会うだろ』
唯斗からすれば、瑞希こそ何言ってるんだ状態である。会う約束なんてした覚えはないし、あったとしてもすんなりと了承するはずがない。
不思議に思って『どういうこと?』と聞いてみると、想像もしなかった返事が画面に表示された。
『夏と言えば海、小田原も連れていくぞ』
海なんて小学生の時に臨海学校で行ったっきりで、それ以来実物を見た事すらない。しかも、瑞希は泊まりだとまで言うではないか。
唯斗は反射的にネコが『NO!』と言っているスタンプを3連続で送ると、スマホをベッドに叩きつけた。
『みんな了承してるぞ?』
『行ってみれば楽しいだろ』
『その時には夕奈も一緒に行けるしな』
無慈悲に届くメッセージ。最後のやつなんて、唯斗にとっては悲報でしかない。
さすがに泊まる部屋が同じということは無いとしても、朝イチで歩く騒音機の声を聞くのかと思うと、何もしていなくても冷や汗が出てくる程。
このお誘いは何としても断らなくてはならない。みんなが了承しても、唯斗自身が首を縦に振っていないのだから。
『その日、僕は多分用事あるから』
『まだ日付言ってないよな?』
『言われてないけど用事ある』
『どうせ寝るだけだろ』
唯斗は画面を見つめながら、「どうしてバレたんだ……」と呟いた。これなら誤魔化せると思ったのに、瑞希はなかなか手強い相手らしい。
次の言い訳として『最近ホームシックに……』と書いたところで、瑞希から新たなメッセージが届いた。
『ところで、エコバッグの中に定期券が入れっぱなしになってないか?』
卵を出した時に中身は確認したはずだと思ったが、唯斗がもう一度確認してみると内側にチャックが付いているのを見つけた。それを開いてみると……。
『あった』
『よかった、ついうっかりしててな』
瑞希もそんなミスをすることがあるんだね。花音の世話を焼いていたりして、完璧な感じに見えるのに。
その時の唯斗は、まだそんなことを思っていた。しかし、次の一文を見た瞬間、彼女の本当の目的に気がついてしまう。
『駅に集合する時、忘れずに持ってきてくれな』
行かないアピールを散々したというのに、唯斗が来ることを前提で言っているのだ。
もしも本当に行かなければ、電車賃を持ってきていない瑞希は困ってしまうかもしれない。
夕奈がどうこうの前に、このお誘いという名の命令には、唯斗の人間性が天秤にかけられてしまっているのだ。
『明日、駅前で渡すのじゃダメ?』
『明日は用事がある』
『明後日は?』
『その日も用事だ』
『空いてる日は無いの?』
『悪いな、海に行く日まで毎日用事があるな』
さすがはパリピ(友達がいる人)の女子高生、夏休みも大忙しである。唯斗はガックリと肩を落とすと、震える指先で『わかった』と送信した。
『みんなにも小田原が来るって連絡しとくよ。楽しみにしてるからな!』
瑞希のメッセージに続いて送られてきた、某有名ネコ型ロボットのスタンプの『ウフフフフフ♪』という音声が、唯斗には悪魔の笑い声に聞こえた。
瑞希の件で遅くなったとは言え、あまりに酷すぎる仕打ちである。いつか絶対に悪を討ち滅ぼしてやると決意しつつ、彼は自分の部屋のベッドへと向かった。
「……あっ」
部屋に入るなりすぐに横になろうとして、唯斗はふと自分の手に持っているエコバッグを見つめる。
瑞希に借りたものだけど、いつ返せばいいんだろう。次に会うのはいつになるか分からないし、何も言わずにずっと持っているというのもおかしな話である。
「でも、連絡先知らないからなぁ」
夕奈経由で聞くことも出来そうではあるが、何となくそれは避けたい。ならば他に手段はなくなるわけだけど……。
「あ、そう言えば……」
そんな時、唯斗はふと思い出した。夕奈の見送りをしに行った日に、花音から電話がかかってきていたことを。
どうやってアカウントを知ったのかは知らないが、瑞希の連絡先を知る手段になるのなら、細かいことは気にしないでおこう。
『瑞希の連絡先を教えて欲しい』
トーク画面を開いてそう送ると、数秒で既読がついた。あちらも暇なのかもしれない。
『もしかして、気になってるんですか?』
『そうじゃないと聞かないよ』
そう返信すると、少し間が空いてから『送ってもいいか聞いてみますね!』と返ってきた。
なるほど、花音にはそういう常識があるんだね。それなら問題なのは彼女に僕のを教えた側か。大体の察しはついてるけど。
『OK出ました! これです!』
3分ほど後に送られてきたものに『ありがとう』と礼を言ってから、唯斗は瑞希との真っ白なトーク画面を開く。
彼が『エコバッグ、いつ返せばいい?』と送ると、直後に既読が付いてその数秒後には返信が送られてきていた。
『次に会った時でいいぞ』
『それだと始業式になるよ?』
『何言ってるんだ? また会うだろ』
唯斗からすれば、瑞希こそ何言ってるんだ状態である。会う約束なんてした覚えはないし、あったとしてもすんなりと了承するはずがない。
不思議に思って『どういうこと?』と聞いてみると、想像もしなかった返事が画面に表示された。
『夏と言えば海、小田原も連れていくぞ』
海なんて小学生の時に臨海学校で行ったっきりで、それ以来実物を見た事すらない。しかも、瑞希は泊まりだとまで言うではないか。
唯斗は反射的にネコが『NO!』と言っているスタンプを3連続で送ると、スマホをベッドに叩きつけた。
『みんな了承してるぞ?』
『行ってみれば楽しいだろ』
『その時には夕奈も一緒に行けるしな』
無慈悲に届くメッセージ。最後のやつなんて、唯斗にとっては悲報でしかない。
さすがに泊まる部屋が同じということは無いとしても、朝イチで歩く騒音機の声を聞くのかと思うと、何もしていなくても冷や汗が出てくる程。
このお誘いは何としても断らなくてはならない。みんなが了承しても、唯斗自身が首を縦に振っていないのだから。
『その日、僕は多分用事あるから』
『まだ日付言ってないよな?』
『言われてないけど用事ある』
『どうせ寝るだけだろ』
唯斗は画面を見つめながら、「どうしてバレたんだ……」と呟いた。これなら誤魔化せると思ったのに、瑞希はなかなか手強い相手らしい。
次の言い訳として『最近ホームシックに……』と書いたところで、瑞希から新たなメッセージが届いた。
『ところで、エコバッグの中に定期券が入れっぱなしになってないか?』
卵を出した時に中身は確認したはずだと思ったが、唯斗がもう一度確認してみると内側にチャックが付いているのを見つけた。それを開いてみると……。
『あった』
『よかった、ついうっかりしててな』
瑞希もそんなミスをすることがあるんだね。花音の世話を焼いていたりして、完璧な感じに見えるのに。
その時の唯斗は、まだそんなことを思っていた。しかし、次の一文を見た瞬間、彼女の本当の目的に気がついてしまう。
『駅に集合する時、忘れずに持ってきてくれな』
行かないアピールを散々したというのに、唯斗が来ることを前提で言っているのだ。
もしも本当に行かなければ、電車賃を持ってきていない瑞希は困ってしまうかもしれない。
夕奈がどうこうの前に、このお誘いという名の命令には、唯斗の人間性が天秤にかけられてしまっているのだ。
『明日、駅前で渡すのじゃダメ?』
『明日は用事がある』
『明後日は?』
『その日も用事だ』
『空いてる日は無いの?』
『悪いな、海に行く日まで毎日用事があるな』
さすがはパリピ(友達がいる人)の女子高生、夏休みも大忙しである。唯斗はガックリと肩を落とすと、震える指先で『わかった』と送信した。
『みんなにも小田原が来るって連絡しとくよ。楽しみにしてるからな!』
瑞希のメッセージに続いて送られてきた、某有名ネコ型ロボットのスタンプの『ウフフフフフ♪』という音声が、唯斗には悪魔の笑い声に聞こえた。
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