3 / 92
第一部一章序章後編
ブサ剣士と無能術者
しおりを挟む◇◇◇◇◇
魔ネズミとの過酷な(?)戦闘から
撤退した冒険者ニ人は、
まさに満身創痍といった様子で
馴染みの町へ帰り着いた。
そんな彼らを見かけた
町の人々はさぞ、
強い魔物との死闘を繰り広げたのだろう…と、
「お疲れ様」や、「ゆっくり町で休んでください」
など、温かな声でニ人の冒険者を迎えていた。
…逃亡の際に何度か躓いて
転んだだけ、
だったのが事実であったのだが。
町人とぶつからないよう、
注意しながら大通りを歩く。
この町は決して大きくはない。
しかし通りは人が賑わい、
商店街も活気で溢れていた。
町を行き交う人々の特色として目を引くのは、平民や商人よりも軽鎧に身を包んだ武装車…
所謂、冒険者が多いという点だ。
この町 -深い谷の町- には、
ギルドの支所があり、
町の繁栄に一役買っている。
ただ、通常このような小さな規模の町に、
ギルドが必ずしもある訳ではない。
ギルド支所ができた背景には、
この町からごく近い、
山脈の谷間に
世界的有名なダンジョンがある…
それが最大の理由だった。
"ブレイブダンジョン"
発見されてから約八百年ほどらしいが
未だ踏破されてない、
世界有数の
未踏破ダンジョンの中の一つだ。
冒険者は皆、
このダンジョンの踏破を夢に見て来訪する。
ダンジョンは、
全十層から成っているというが、
その最奥には
御伽噺の魔王に匹敵するほどの
超超強大なラスボスが存在する…
という伝説がある。
八百年ほど昔…魔王を倒したという、
英雄勇者の一人、
光の剣士がその魔物を封じた…
と、民間では語り継がれている。
しかし、所詮、夢は夢…
御伽噺は御伽噺…。
並の実力の冒険者では、
精々ニ~三層へ踏み込むだけで
精一杯だろう。
…それでも…
己の実力を試す為、
伝説の勇者ですら、
倒せなかった魔物を倒す為…
幾度も幾度も、挑むのだ。
それが冒険者だ!
そして…
勿論。
先程の、
ちょっとズレてる
ポンコツニ人組の冒険者らも
恐らく類に違わずだろう。
町で一番賑わっているギルド支所へ
足を進めていた。
魔ネズミ退治の依頼結果を報告に行く為だ。
「依頼…失敗…ですか」
ギルド支所の待合室は
大層賑わっていた筈だが、
この、依頼受付職員の
盛大なため息は、
室内に響き渡るようだった。
「ええと…
冒険者レベル1…
ブロンズ位の剣士、イルさん。
討伐内容は
魔ネズミ一匹の駆除…ですよね?」
「ふぁい…
魔ネズミがぁぁ、
めちゃ強かったのでふよぅ~!
あと、あと…剣が地面に刺さっちゃってぇぇ」
鎮痛な表情で頭を抱えるギルド職員と同じく、鎮痛な表情でポンコツ剣士イルは訴える。
「いえ…ですが、
魔ネズミは強さレベル1の最弱ランクですよ?
初心者冒険者でも倒せるレベルで…」
「此奴…イルの剣を
引き抜くのを手伝っている間に隙を突かれ、
ネズミの一撃を喰らってしまったのだ」
横合いから口を挟んだのは、
仰々しい口調の女術者だ。
見た目、十代半ばの幼さの残る少女…
にも関わらず、威厳のある語り口調に
何だか神々しいオーラを
纏っているような気がする。
ギルド職員はそんな少女を見て、
恐らくどこかの貴族の…
やん事無い道楽娘なんだろうと、察する。
「ええと、
相棒の貴女は…
術者のリーンさん、ね?
冒険者レベル……999…⁈⁈」
手元の冒険者情報を三度見する職員。
(いや、いや、いや⁈そんな筈は)
職員の動揺は無理もない。
実力によって昇格していく
冒険者レベルも、
さすがにレベルがこの桁になる事は絶対無い。
現在、世界中のギルドで確認されている
冒険者レベルの最上位が
せいぜい、レベル120…といったところだ。
いくら何でも書き間違えだろう。
全く、人騒がせな…
ギルド職員は、
一旦深呼吸をして居住いを正す。
そして改めて、
少女の首に掛かっている
ギルドタグ(冒険者ランクを表す証)を見る。
この、タグの素材もランクによって
違ってくるのだ。
だが…彼女のタグは
見たこともない色をしていた。
(そういえば…所長が以前言ってたな…
高貴な階級の貴人には、
特別なタグが存在するって、
貴人だから実力不問で特別扱い…か?)
「ああ、やっぱり、そういう事か…」
「?」
口元でぶつぶつ呟く職員を見て、
剣士イルと、術者リーンは首を傾げる。
「いえ、失礼、何でもありません。
で?術者リーンさん…
少しは魔術の心得はあるのでしょう?
なぜ、初心者の剣士イルさんに加勢しなかったのです?」
「うむ。
我は術者だが、魔術は一切使えぬからな」
「は?」
「うむ。
術の類いは何も使えぬのだ」
術者リーンは、
なんだったら胸を張って堂々と言い放つ。
数秒の沈黙…
ギルド職員、
この少女の言ってる意味が分からなかった。
いや、分かりたく無かった。
術者を名乗りながら、
術を使えない術者…
え?
それもう、術者では無いのでは⁈
ギルド職員は、いよいよ机に突っ伏す。
…超ポンコツ初心者デブ剣士に、
情報詐欺姫の自称術者…
めちゃくちゃ面倒な奴らが、
この町へやって来たものだ。
夢を見て、
この町へやってきた冒険者は沢山いる。
残念ながら、実力が及ばない者も
散々見て来た。
しかし、
これ程(魔ネズミ一匹倒せない)弱く、
めちゃくちゃな冒険者は初めてだった。
清々しいほど、開き直ってる
ニ人の冒険者とは対照的に、
今後…
このニ人と関わっていく事に
鬱々とするギルド職員だった。
◇◇◇◇◇
(第一話へ続く)
0
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する
ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。
きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。
私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。
この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない?
私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?!
映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。
設定はゆるいです
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
