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一話
僅かな歩みをかみしめて③
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◇◇◇◇◇
樹木の葉が一斉に細波打って
音を鳴らす。
急な突風に驚き、反射的に
イルは目元を隠した。
今シーズン初の木枯らし一号だろうか?
思えば、イルがこの町に来たのは
夏の初め…半年近く前だ…
この町を目指して旅していた
イルは、
あまりの暑さに行き倒れしかけ
冒険者になる事を一瞬だが、
諦めかけていた事を思い出す。
「あれから…
少しは体力も付いた筈なんだけどなぁ」
つい、数刻前の出来事に
イルは肩を落とす。
リーンのお陰で依頼が
かなり早くに終わり、
イルは午後の時間を剣術訓練に
費やす事にした。
「もっと筋力付けて、食器棚くらい
一人で担げるようになるぞ!」
前世での記憶の中では…
特にリーンが怪力であった…
などと言う記憶は無いが…
なにせ、己らの仲間たちは皆、
自分も含め…かなり稀有な個性を
有していたので、
気付かなかったのかもしれない。
だとしても…
今世の自分と比較すれば、
腕力は天地の差…
男としての矜持が廃るというもの。
筋力トレーニングも含め、イルは
素振りに勤しむ。
リーンと再会し、
共に仕事をするも…
草むしりだの、下水道のネズミ退治だの…
イメージする冒険者とは
程遠い事の連続だった。
とはいえ、故郷で怠惰な生活を
送っていた頃とは違い、
ダイエットも成功し…
幾つかの仕事をこなすうちに、
体力も腕力も付いている筈なのだが…
「竜を軽く片手で輪切りにできる日は
いつ来るんだろ…」
いや、前世の己と比べる必要はない…
とはいえ、いい加減…
上達したいものだ…
何故…こうも実力に変化が少ないのだろう?
人には向き不向きは必ずあるのだが…
(やっぱり、考えたくはないが転生ガチャ失敗⁈)
よぎる絶望を…
素振りのスピードを
早め、打ち消す。
まぁ…
ただ一つ変化があるとしたら…
「おい、イル!
よそ見してるなよ?剣構えろ」
「あ…は、はい!すいません!」
小さな依頼を成功させていくにつれ、
同業者(冒険者)が、
イル達を見直し、
励ましの声を
掛けてくれるようになったのだ。
更に最近では、
剣の稽古にも誘ってくれるようになった。
デブで甘ちゃんで泣き虫だったイルは、
剣タコが両手に出来、
潰れて血が滲んでも
泣き言も言わず、
包帯を巻き直して稽古を続けるほど、
逞しくなった。
そんな稽古の様子を
少し離れた所のベンチで見守る
リーンの姿があった。
リーンもまた(と、いうのか?)
半年過ぎても見た目に
変化はなかった。
当然、中身…術も未だに使えない。
だが、それは…
「わ!!シルフだ!」
イルと共に稽古中だった誰かが、
声を上げる。
「本当だ!アタシ初めて見るよ」
冒険者らが指を指した方向を見る。
◇◇◇◇◇
(僅かな歩みをかみしめて④へ続く)
樹木の葉が一斉に細波打って
音を鳴らす。
急な突風に驚き、反射的に
イルは目元を隠した。
今シーズン初の木枯らし一号だろうか?
思えば、イルがこの町に来たのは
夏の初め…半年近く前だ…
この町を目指して旅していた
イルは、
あまりの暑さに行き倒れしかけ
冒険者になる事を一瞬だが、
諦めかけていた事を思い出す。
「あれから…
少しは体力も付いた筈なんだけどなぁ」
つい、数刻前の出来事に
イルは肩を落とす。
リーンのお陰で依頼が
かなり早くに終わり、
イルは午後の時間を剣術訓練に
費やす事にした。
「もっと筋力付けて、食器棚くらい
一人で担げるようになるぞ!」
前世での記憶の中では…
特にリーンが怪力であった…
などと言う記憶は無いが…
なにせ、己らの仲間たちは皆、
自分も含め…かなり稀有な個性を
有していたので、
気付かなかったのかもしれない。
だとしても…
今世の自分と比較すれば、
腕力は天地の差…
男としての矜持が廃るというもの。
筋力トレーニングも含め、イルは
素振りに勤しむ。
リーンと再会し、
共に仕事をするも…
草むしりだの、下水道のネズミ退治だの…
イメージする冒険者とは
程遠い事の連続だった。
とはいえ、故郷で怠惰な生活を
送っていた頃とは違い、
ダイエットも成功し…
幾つかの仕事をこなすうちに、
体力も腕力も付いている筈なのだが…
「竜を軽く片手で輪切りにできる日は
いつ来るんだろ…」
いや、前世の己と比べる必要はない…
とはいえ、いい加減…
上達したいものだ…
何故…こうも実力に変化が少ないのだろう?
人には向き不向きは必ずあるのだが…
(やっぱり、考えたくはないが転生ガチャ失敗⁈)
よぎる絶望を…
素振りのスピードを
早め、打ち消す。
まぁ…
ただ一つ変化があるとしたら…
「おい、イル!
よそ見してるなよ?剣構えろ」
「あ…は、はい!すいません!」
小さな依頼を成功させていくにつれ、
同業者(冒険者)が、
イル達を見直し、
励ましの声を
掛けてくれるようになったのだ。
更に最近では、
剣の稽古にも誘ってくれるようになった。
デブで甘ちゃんで泣き虫だったイルは、
剣タコが両手に出来、
潰れて血が滲んでも
泣き言も言わず、
包帯を巻き直して稽古を続けるほど、
逞しくなった。
そんな稽古の様子を
少し離れた所のベンチで見守る
リーンの姿があった。
リーンもまた(と、いうのか?)
半年過ぎても見た目に
変化はなかった。
当然、中身…術も未だに使えない。
だが、それは…
「わ!!シルフだ!」
イルと共に稽古中だった誰かが、
声を上げる。
「本当だ!アタシ初めて見るよ」
冒険者らが指を指した方向を見る。
◇◇◇◇◇
(僅かな歩みをかみしめて④へ続く)
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