伝説の勇者が闇堕ちした日に、ポンコツは爆誕する

空木卯々

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三話

ブレイブダンジョンへ⑦

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◇◇◇◇◇


「立ちなさい!イル!」


リーンの冷たく鋭い声が
イルの未だ混乱していた頭の中に
突き刺さる。

そうだ…立ち上がり前へ…

「え?」

「魔物が来た!」

「ええ⁈」


リーンの言葉を改めて理解する。
牙ネズミを一匹倒し、
朦朧としてる場合では無かった。

ここは、ダンジョンの中なのだ。
一匹倒したら、お終い…
なんてことはない。

ダンジョン特有の、
溢れる魔素の影響で魔物は
常に発生するのだ。

だが、しかし

即座に対応したいのだが…
腕が動かない…⁈
 
イルはここにきて、
自分の置かれている状況を悟る。

剣の稽古はしていたが、
まだ十分体が鍛えきれて無い状態で
巨大なネズミを一刀両断してしまったのだ。
腕の筋肉も筋も悲鳴を上げていた。

「う、腕が言う事きかなく…⁈
うわっっ⁈」

なんとか立ち上がろうとした
イルだったが…
不意に頭に激痛が走る。
そして目の端に見えたのは、
黒く巨大な飛行物体!

「大コウモリだな。
強さは牙ネズミより少し上か…
次が来る!構えろ!」

「うわぁぁ!!」

イルの左肩に新たな激痛が走る。

今度こそ、自分の血であろう
生温い液体が
手まで一筋流れた。

色んな事柄が頭の中で
渦を巻いていたせいで…
次の敵への備えなど、全くできていなかった。

前世の記憶を持つ己の意識的には、
次の対処をどうしようか、
計算しようとしているのだが…

今までの人生で
まともに怪我なぞは、殆ど無縁だった
今世のイルの肉体は、
強い痛みや、自身の出血に
錯乱し、息を上げていた。

死への恐怖でパニック状態になりかける。

こうなると、もう…
前世の記憶を冷静に引き出すことなど
イルには不可能だった。



「…まったく仕方がない…」 


軽く吐息し、リーンは涼やかに呟く。

痛みと恐怖で蹲ったイルを一瞥し、
そして、
リーンは自前の杖を大きく振った。

その仕草は優雅で美しく
往年の賢者の如き威厳と気品を
漂わせていた。


◇◇◇◇◇


(ブレイブダンジョンへ⑧へ続く)
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