伝説の勇者が闇堕ちした日に、ポンコツは爆誕する

空木卯々

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三話

終わりへ進む者②

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◇◇◇◇◇



さて、
ギルドを後にした二人は
そのまま宿屋へ帰り、
それぞれの部屋の前で別れる。

イルは…
明日こそは、大コウモリを軽く
追っ払い、牙ネズミを見つけて
討伐だ!
…と、気合いを入れ、
部屋に入ってすぐに
剣を磨いていたが…
慣れないダンジョン戦に
今世の体が悲鳴を上げていた。

少しだけダンジョンへの緊張も解け
リラックスできるようになった…
と、思っていたが…
やはり、疲れは蓄積されていたようで…
寝台へ座れば、すぐに
体が重くなり…同時に睡魔にも
襲われる。

まだ…明日への準備は
終わってないのだが、
睡魔に抗え無かったイルは
早めに寝床に潜る。

明日もまた、
牙ネズミを追いかける日々が続くのだと、
意気込みはあるのだが…
意識はすぐに闇へ沈んでいった…


夢の中で牙ネズミと
戦っていたイルは、

しかし…
顔に風を感じたような気がして
意識が急に浮上した。

「…ん~?何か今、蝶々が鼻に…」

むにゃむにゃと、寝言のように
呟いて、ひとまず重い瞼を開けてみる。

部屋を見渡しても
蝶などいる筈も無く…
宿の部屋は静寂に満ちていた。
やはり、夢でも見てたのか…

水でも一杯飲もうかと、
起き上がり窓辺へ行けば…
何やら窓の外に人影が見えた…
気がした。

それくらいでは普段なら
気にも留めない筈だが…
何故かこの時、イルは
妙な胸騒ぎがした。

もう一度、窓の外を確認する。
暗闇に目を慣れさせながら、
その人影を目で追う。

そして、ハッと目を見開く。
寝ぼけ眼のイルだったが、
ようやく目が覚める。

その人影は見慣れた人の姿だった。

人影はそのまま去っていく。
いよいよ、窓越しでは
見えなくなっていく。
そして、イルは…


考えるより先に体が動いた。



「リーン様?!」
              




何故外出を…?
何故こんな時間に⁈
イルは動きながら、
思考を巡らせる。

防具を付ける余裕ない、
かろうじて剣だけは…
無意識に手にしたのは、
イルが剣士として成長してきた証か?

別にリーンとて…
夜風に当たりたい時もあるだろう。

もしかしたら、
恋人との逢瀬かもしれない…?
(いや、それは無いか)

だが…
何故だか、イルは言い知れぬ胸騒ぎに、
突き動かされていた。

"一緒に行くべきだ"と、
まるで魂が訴えているかのように。
前世の魂が…
リーンを守りたいと…
震えるかのように。


◇◇◇◇◇


(終わりへ進む者③へ続く)
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