伝説の勇者が闇堕ちした日に、ポンコツは爆誕する

空木卯々

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三話

ブレイブダンジョン⑥

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◇◇◇◇◇


ドゴオォォォン!!


弾力のある物体が打ちのめされ、
裂かれるような…
聞くに耐えられないような轟音が
ダンジョン内に響く。

音の出所は…
やはり、この巨大な上級魔物からだった。

轟音と同時に、
ブヨブヨした魔物の巨体は
大きく歪みながら、
与えられたエネルギーに
耐えられず、体が引き裂かれ
四散した。

芋虫の魔物が不意に喰らった
そのエネルギーの正体とは…

当然、イルにも予想できた。
イルの前方へ回り込み、
杖を持ちながら、仁王立ちしている
リーンの姿。

術者リーンの、杖の一撃(物理)により
巨大芋虫は撲殺され、
無惨な姿になってたのだ。

「ふむ、これしきの打撃で
倒れるとは…他愛もない魔物だ。」

杖にこびり付いた芋虫の体液を
嫌そうに振り払いながら、
冷静に分析するリーン。

ベテラン冒険者でさえ、苦戦する
上級魔物を杖で撃退とは…
杖=物理攻撃だし…
本当に術者なのか?
などと、他の冒険者が見ていたら
叫びたくなるだろう。


「リーン様…
僕、足手纏いだ。
何の役にも立たない…」

イルは今になって、芋虫に襲われた恐怖が
全身に走り…膝が崩れ、腰も立たなく
なっていた。

「この体が…今世の体が
言う事を聞かないんだ…」

今の体に文句を付けるなど、情け無い。
分かってはいるが、
何もできない自分に歯噛みする。
何の為に前世の体を捨て、
転生したのか…
イルの目から大粒の涙が
溢れ出す。

「顔を上げろ。
キサマは何の為に、このブレイブダンジョンへ
来たいと思ったのだ?」

リーンは、責めるでもなく、
諭すでもなく…静かな口調で
イルに言葉を投げかける。

「それは…
リーン様の力になる為…
その為にダンジョンの最奥へ行って…
ある物を持ち出したくて…」

イルの前世の記憶…
いや、性格には魂が感じた記憶か?


「なら、進めばいい。
キサマの望む物を手にしたら…
更に頼もしくなるのだろう?」

「今は全然頼りになってないけど…」

そこで、ボスっと
イルの頭に軽い衝撃が走る。
リーンが杖で軽くイルを叩いたのだ。

「我は仲間を失ってから、
ずっと独りだった。
キサマが…どんな形だとしても、
真っ先に駆けつけてくれて…
どんなに頼もしかったか…
我の気持ちが分かるか?」

「リーン様…でも、僕…」

「実力なら、これから幾らだって
付けていけばいい。
それでも足りないのなら…
他の術を共に探せばいい。
…だが、我の仲間は
今はキサマが唯一無二なのだ」

止まりかけていた、イルの目から
更に大粒の涙が溢れた。
…自分は、
強い剣士じゃない。
頼りになる存在じゃない。

けれど…
リーン様の仲間なのだ。

震えていた手足に、
抜けた腰に、
再び力が入る。
まだまだ、肉体は未熟すぎるけれど。
イルは、
今世の精神と、前世の記憶である自分が
少しだけ融合したような気がした…
自分はリーン様の仲間!
その存在理由が己に勇気を宿らせる。

「進もう!
僕の目的の物がある場所へ…
リーン様の因縁のある場所へ!」


◇◇◇◇◇

(ブレイブダンジョン⑦へ続く)
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