60 / 85
三話
ブレイブダンジョン⑥
しおりを挟む
◇◇◇◇◇
ドゴオォォォン!!
弾力のある物体が打ちのめされ、
裂かれるような…
聞くに耐えられないような轟音が
ダンジョン内に響く。
音の出所は…
やはり、この巨大な上級魔物からだった。
轟音と同時に、
ブヨブヨした魔物の巨体は
大きく歪みながら、
与えられたエネルギーに
耐えられず、体が引き裂かれ
四散した。
芋虫の魔物が不意に喰らった
そのエネルギーの正体とは…
当然、イルにも予想できた。
イルの前方へ回り込み、
杖を持ちながら、仁王立ちしている
リーンの姿。
術者リーンの、杖の一撃(物理)により
巨大芋虫は撲殺され、
無惨な姿になってたのだ。
「ふむ、これしきの打撃で
倒れるとは…他愛もない魔物だ。」
杖にこびり付いた芋虫の体液を
嫌そうに振り払いながら、
冷静に分析するリーン。
ベテラン冒険者でさえ、苦戦する
上級魔物を杖で撃退とは…
杖=物理攻撃だし…
本当に術者なのか?
などと、他の冒険者が見ていたら
叫びたくなるだろう。
「リーン様…
僕、足手纏いだ。
何の役にも立たない…」
イルは今になって、芋虫に襲われた恐怖が
全身に走り…膝が崩れ、腰も立たなく
なっていた。
「この体が…今世の体が
言う事を聞かないんだ…」
今の体に文句を付けるなど、情け無い。
分かってはいるが、
何もできない自分に歯噛みする。
何の為に前世の体を捨て、
転生したのか…
イルの目から大粒の涙が
溢れ出す。
「顔を上げろ。
キサマは何の為に、このブレイブダンジョンへ
来たいと思ったのだ?」
リーンは、責めるでもなく、
諭すでもなく…静かな口調で
イルに言葉を投げかける。
「それは…
リーン様の力になる為…
その為にダンジョンの最奥へ行って…
ある物を持ち出したくて…」
イルの前世の記憶…
いや、性格には魂が感じた記憶か?
「なら、進めばいい。
キサマの望む物を手にしたら…
更に頼もしくなるのだろう?」
「今は全然頼りになってないけど…」
そこで、ボスっと
イルの頭に軽い衝撃が走る。
リーンが杖で軽くイルを叩いたのだ。
「我は仲間を失ってから、
ずっと独りだった。
キサマが…どんな形だとしても、
真っ先に駆けつけてくれて…
どんなに頼もしかったか…
我の気持ちが分かるか?」
「リーン様…でも、僕…」
「実力なら、これから幾らだって
付けていけばいい。
それでも足りないのなら…
他の術を共に探せばいい。
…だが、我の仲間は
今はキサマが唯一無二なのだ」
止まりかけていた、イルの目から
更に大粒の涙が溢れた。
…自分は、
強い剣士じゃない。
頼りになる存在じゃない。
けれど…
リーン様の仲間なのだ。
震えていた手足に、
抜けた腰に、
再び力が入る。
まだまだ、肉体は未熟すぎるけれど。
イルは、
今世の精神と、前世の記憶である自分が
少しだけ融合したような気がした…
自分はリーン様の仲間!
その存在理由が己に勇気を宿らせる。
「進もう!
僕の目的の物がある場所へ…
リーン様の因縁のある場所へ!」
◇◇◇◇◇
(ブレイブダンジョン⑦へ続く)
ドゴオォォォン!!
弾力のある物体が打ちのめされ、
裂かれるような…
聞くに耐えられないような轟音が
ダンジョン内に響く。
音の出所は…
やはり、この巨大な上級魔物からだった。
轟音と同時に、
ブヨブヨした魔物の巨体は
大きく歪みながら、
与えられたエネルギーに
耐えられず、体が引き裂かれ
四散した。
芋虫の魔物が不意に喰らった
そのエネルギーの正体とは…
当然、イルにも予想できた。
イルの前方へ回り込み、
杖を持ちながら、仁王立ちしている
リーンの姿。
術者リーンの、杖の一撃(物理)により
巨大芋虫は撲殺され、
無惨な姿になってたのだ。
「ふむ、これしきの打撃で
倒れるとは…他愛もない魔物だ。」
杖にこびり付いた芋虫の体液を
嫌そうに振り払いながら、
冷静に分析するリーン。
ベテラン冒険者でさえ、苦戦する
上級魔物を杖で撃退とは…
杖=物理攻撃だし…
本当に術者なのか?
などと、他の冒険者が見ていたら
叫びたくなるだろう。
「リーン様…
僕、足手纏いだ。
何の役にも立たない…」
イルは今になって、芋虫に襲われた恐怖が
全身に走り…膝が崩れ、腰も立たなく
なっていた。
「この体が…今世の体が
言う事を聞かないんだ…」
今の体に文句を付けるなど、情け無い。
分かってはいるが、
何もできない自分に歯噛みする。
何の為に前世の体を捨て、
転生したのか…
イルの目から大粒の涙が
溢れ出す。
「顔を上げろ。
キサマは何の為に、このブレイブダンジョンへ
来たいと思ったのだ?」
リーンは、責めるでもなく、
諭すでもなく…静かな口調で
イルに言葉を投げかける。
「それは…
リーン様の力になる為…
その為にダンジョンの最奥へ行って…
ある物を持ち出したくて…」
イルの前世の記憶…
いや、性格には魂が感じた記憶か?
「なら、進めばいい。
キサマの望む物を手にしたら…
更に頼もしくなるのだろう?」
「今は全然頼りになってないけど…」
そこで、ボスっと
イルの頭に軽い衝撃が走る。
リーンが杖で軽くイルを叩いたのだ。
「我は仲間を失ってから、
ずっと独りだった。
キサマが…どんな形だとしても、
真っ先に駆けつけてくれて…
どんなに頼もしかったか…
我の気持ちが分かるか?」
「リーン様…でも、僕…」
「実力なら、これから幾らだって
付けていけばいい。
それでも足りないのなら…
他の術を共に探せばいい。
…だが、我の仲間は
今はキサマが唯一無二なのだ」
止まりかけていた、イルの目から
更に大粒の涙が溢れた。
…自分は、
強い剣士じゃない。
頼りになる存在じゃない。
けれど…
リーン様の仲間なのだ。
震えていた手足に、
抜けた腰に、
再び力が入る。
まだまだ、肉体は未熟すぎるけれど。
イルは、
今世の精神と、前世の記憶である自分が
少しだけ融合したような気がした…
自分はリーン様の仲間!
その存在理由が己に勇気を宿らせる。
「進もう!
僕の目的の物がある場所へ…
リーン様の因縁のある場所へ!」
◇◇◇◇◇
(ブレイブダンジョン⑦へ続く)
0
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる