81 / 85
四章
イルの変化⑤
しおりを挟む
◇◇◇◇◇
ずっと…
「ずっと一人で
頑張ってくれてたんですよね…
"結界術士リーン"様」
「そうだ。
なのに…キサマは勝手に転生しおって!
我がせっかく封印して肉体を
保存してた苦労を何だと…まったく」
リーンは頬を膨らまし
大袈裟に怒りを表す。
照れ隠しも…多少はありそうだったが。
「でも、それでは…
僕が嫌だったんですよ!
大事な仲間を独りきりで戦わせるなんて」
イルのそんな真摯な言葉を聞いても
リーンはそっぽを向く。
照れが隠しきれなくなり、
顔を見せられないのだろう。
普段はドライなリーンの
少し可愛い一面に
イルは満足し、
話題を敢えて変える。
「そういえば、不思議なのは…
肉体から魂が離れても
前世の僕…
動けてましたよね?
なんでだろう?」
「混乱の術の怖いところだな。
本人の意識とは関係なく、
闇が勝手に体を操作してしまうのだろう…」
他の仲間達もそうして…
各地で暴れ回り…
やむ無くリーンは仲間を封印していったのだ。
「そういえば…
魔王はあれから、どうなったんです?」
今も…追っている。と、
リーンは悔しそうに言った。
…今回の"護符"の件も…
何かしら、魔王が関連し、暗躍してる筈だ。
未だに、"混乱の術"を治癒できる者は出ず、
封印を壊し、闇堕ちした
勇者達を各地で再度暴れさせれば…
魔王にとっては、都合がいいのだ。
魔王さえ、凌駕していた当時のパーティ…
最強の英雄達…
彼らが闇堕ちしたまま、世に放たれれば
間違い無く、この世は崩壊するだろう。
未だに、
かつての己の身体は闇堕ちしたまま
封じられている事に、
イルは歯痒く感じる。
しかし、今は目の前の事を少しずつ
こなしていくしか無いだろう。
「はぁぁ…明日からも仕事、頑張りますかぁ」
ブレーブダンジョン…勇者の迷宮。
ブレーブ(勇者)ねぇ…。
明日からまた、
一層の牙ネズミ討伐の依頼を
再開するのだ。
今となっては、少しこそばゆい。
ネズミ一匹に涙目だった
数日前の自分を思い出す。
「初心に還るのもいいものだ」
リーンが揶揄する。
「お互い様でしょう?」
イルも笑う。
古の時代…
魔王さえ凌駕するほどの強さを誇った
冒険者パーティがあった。
彼らは英雄、または勇者と呼ばれ、
実情はどうあれ、魔王からこの数百年、
世界を救っているのだ。
物語は語り継がれる。
しかし、現在も未だ…
勇者達は戦っている事を、
多くの者たちは
知る由もないのだろう。
◇◇◇◇◇
(第一部終章へ続く)
ずっと…
「ずっと一人で
頑張ってくれてたんですよね…
"結界術士リーン"様」
「そうだ。
なのに…キサマは勝手に転生しおって!
我がせっかく封印して肉体を
保存してた苦労を何だと…まったく」
リーンは頬を膨らまし
大袈裟に怒りを表す。
照れ隠しも…多少はありそうだったが。
「でも、それでは…
僕が嫌だったんですよ!
大事な仲間を独りきりで戦わせるなんて」
イルのそんな真摯な言葉を聞いても
リーンはそっぽを向く。
照れが隠しきれなくなり、
顔を見せられないのだろう。
普段はドライなリーンの
少し可愛い一面に
イルは満足し、
話題を敢えて変える。
「そういえば、不思議なのは…
肉体から魂が離れても
前世の僕…
動けてましたよね?
なんでだろう?」
「混乱の術の怖いところだな。
本人の意識とは関係なく、
闇が勝手に体を操作してしまうのだろう…」
他の仲間達もそうして…
各地で暴れ回り…
やむ無くリーンは仲間を封印していったのだ。
「そういえば…
魔王はあれから、どうなったんです?」
今も…追っている。と、
リーンは悔しそうに言った。
…今回の"護符"の件も…
何かしら、魔王が関連し、暗躍してる筈だ。
未だに、"混乱の術"を治癒できる者は出ず、
封印を壊し、闇堕ちした
勇者達を各地で再度暴れさせれば…
魔王にとっては、都合がいいのだ。
魔王さえ、凌駕していた当時のパーティ…
最強の英雄達…
彼らが闇堕ちしたまま、世に放たれれば
間違い無く、この世は崩壊するだろう。
未だに、
かつての己の身体は闇堕ちしたまま
封じられている事に、
イルは歯痒く感じる。
しかし、今は目の前の事を少しずつ
こなしていくしか無いだろう。
「はぁぁ…明日からも仕事、頑張りますかぁ」
ブレーブダンジョン…勇者の迷宮。
ブレーブ(勇者)ねぇ…。
明日からまた、
一層の牙ネズミ討伐の依頼を
再開するのだ。
今となっては、少しこそばゆい。
ネズミ一匹に涙目だった
数日前の自分を思い出す。
「初心に還るのもいいものだ」
リーンが揶揄する。
「お互い様でしょう?」
イルも笑う。
古の時代…
魔王さえ凌駕するほどの強さを誇った
冒険者パーティがあった。
彼らは英雄、または勇者と呼ばれ、
実情はどうあれ、魔王からこの数百年、
世界を救っているのだ。
物語は語り継がれる。
しかし、現在も未だ…
勇者達は戦っている事を、
多くの者たちは
知る由もないのだろう。
◇◇◇◇◇
(第一部終章へ続く)
0
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる