81 / 92
四章
イルの変化⑤
しおりを挟む
◇◇◇◇◇
ずっと…
「ずっと一人で
頑張ってくれてたんですよね…
"結界術士リーン"様」
「そうだ。
なのに…キサマは勝手に転生しおって!
我がせっかく封印して肉体を
保存してた苦労を何だと…まったく」
リーンは頬を膨らまし
大袈裟に怒りを表す。
照れ隠しも…多少はありそうだったが。
「でも、それでは…
僕が嫌だったんですよ!
大事な仲間を独りきりで戦わせるなんて」
イルのそんな真摯な言葉を聞いても
リーンはそっぽを向く。
照れが隠しきれなくなり、
顔を見せられないのだろう。
普段はドライなリーンの
少し可愛い一面に
イルは満足し、
話題を敢えて変える。
「そういえば、不思議なのは…
肉体から魂が離れても
前世の僕…
動けてましたよね?
なんでだろう?」
「混乱の術の怖いところだな。
本人の意識とは関係なく、
闇が勝手に体を操作してしまうのだろう…」
他の仲間達もそうして…
各地で暴れ回り…
やむ無くリーンは仲間を封印していったのだ。
「そういえば…
魔王はあれから、どうなったんです?」
今も…追っている。と、
リーンは悔しそうに言った。
…今回の"護符"の件も…
何かしら、魔王が関連し、暗躍してる筈だ。
未だに、"混乱の術"を治癒できる者は出ず、
封印を壊し、闇堕ちした
勇者達を各地で再度暴れさせれば…
魔王にとっては、都合がいいのだ。
魔王さえ、凌駕していた当時のパーティ…
最強の英雄達…
彼らが闇堕ちしたまま、世に放たれれば
間違い無く、この世は崩壊するだろう。
未だに、
かつての己の身体は闇堕ちしたまま
封じられている事に、
イルは歯痒く感じる。
しかし、今は目の前の事を少しずつ
こなしていくしか無いだろう。
「はぁぁ…明日からも仕事、頑張りますかぁ」
ブレーブダンジョン…勇者の迷宮。
ブレーブ(勇者)ねぇ…。
明日からまた、
一層の牙ネズミ討伐の依頼を
再開するのだ。
今となっては、少しこそばゆい。
ネズミ一匹に涙目だった
数日前の自分を思い出す。
「初心に還るのもいいものだ」
リーンが揶揄する。
「お互い様でしょう?」
イルも笑う。
古の時代…
魔王さえ凌駕するほどの強さを誇った
冒険者パーティがあった。
彼らは英雄、または勇者と呼ばれ、
実情はどうあれ、魔王からこの数百年、
世界を救っているのだ。
物語は語り継がれる。
しかし、現在も未だ…
勇者達は戦っている事を、
多くの者たちは
知る由もないのだろう。
◇◇◇◇◇
(第一部終章へ続く)
ずっと…
「ずっと一人で
頑張ってくれてたんですよね…
"結界術士リーン"様」
「そうだ。
なのに…キサマは勝手に転生しおって!
我がせっかく封印して肉体を
保存してた苦労を何だと…まったく」
リーンは頬を膨らまし
大袈裟に怒りを表す。
照れ隠しも…多少はありそうだったが。
「でも、それでは…
僕が嫌だったんですよ!
大事な仲間を独りきりで戦わせるなんて」
イルのそんな真摯な言葉を聞いても
リーンはそっぽを向く。
照れが隠しきれなくなり、
顔を見せられないのだろう。
普段はドライなリーンの
少し可愛い一面に
イルは満足し、
話題を敢えて変える。
「そういえば、不思議なのは…
肉体から魂が離れても
前世の僕…
動けてましたよね?
なんでだろう?」
「混乱の術の怖いところだな。
本人の意識とは関係なく、
闇が勝手に体を操作してしまうのだろう…」
他の仲間達もそうして…
各地で暴れ回り…
やむ無くリーンは仲間を封印していったのだ。
「そういえば…
魔王はあれから、どうなったんです?」
今も…追っている。と、
リーンは悔しそうに言った。
…今回の"護符"の件も…
何かしら、魔王が関連し、暗躍してる筈だ。
未だに、"混乱の術"を治癒できる者は出ず、
封印を壊し、闇堕ちした
勇者達を各地で再度暴れさせれば…
魔王にとっては、都合がいいのだ。
魔王さえ、凌駕していた当時のパーティ…
最強の英雄達…
彼らが闇堕ちしたまま、世に放たれれば
間違い無く、この世は崩壊するだろう。
未だに、
かつての己の身体は闇堕ちしたまま
封じられている事に、
イルは歯痒く感じる。
しかし、今は目の前の事を少しずつ
こなしていくしか無いだろう。
「はぁぁ…明日からも仕事、頑張りますかぁ」
ブレーブダンジョン…勇者の迷宮。
ブレーブ(勇者)ねぇ…。
明日からまた、
一層の牙ネズミ討伐の依頼を
再開するのだ。
今となっては、少しこそばゆい。
ネズミ一匹に涙目だった
数日前の自分を思い出す。
「初心に還るのもいいものだ」
リーンが揶揄する。
「お互い様でしょう?」
イルも笑う。
古の時代…
魔王さえ凌駕するほどの強さを誇った
冒険者パーティがあった。
彼らは英雄、または勇者と呼ばれ、
実情はどうあれ、魔王からこの数百年、
世界を救っているのだ。
物語は語り継がれる。
しかし、現在も未だ…
勇者達は戦っている事を、
多くの者たちは
知る由もないのだろう。
◇◇◇◇◇
(第一部終章へ続く)
0
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する
ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。
きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。
私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。
この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない?
私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?!
映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。
設定はゆるいです
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる