推し活するため、平民にならせていただきますわ!

ミルクラウン

文字の大きさ
12 / 21
第一章

11話

しおりを挟む
 お茶を飲みすぎた。
 


 端的に今の状況を説明すると、そんなところだ。王家主催のお茶会とあって、出てくるお茶はどれもこれもとても美味しい。そう、つい飲む量を間違えてしまうくらい。



 (お、お手洗いに行かなければ……)



 そう思って会場を抜け出したのが数分前。なんとか間に合って、お手洗いは済ませた。(ちなみに、元がゲームだからかちゃんと水洗トイレがある。19世期ヨーロッパとは違うのはとてもありがたい)……が、今私の前には、別の大問題が立ちはだかっていた。



 「……こ、ここは……一体……」



 私がいるのは広い広い廊下。そう、王宮は大きいのである。とてもとても。迷うほど。道がわからない。この状況を世間一般では何というか。



 「迷子だ……」



 ぽつりと呟いた声は、誰に拾われることもなく静寂の中に吸い込まれて消えた。





◇ ◇ ◇





 (こ、これは……もしや、ものすごくまずい状況なのでは?)



 いや、もしやなくてもまずい状況だ。何故なら、フィリアはものすごい方向音痴なのである。実際にフィリアになってみてわかった新事実なのだが、もしかしたらどこに行っても彼女が出現するゲームシステムにはその辺が影響しているのかもしれない。がむしゃらに歩いていたらたまたまぶつかってしまったとかそういう……



 「って、そんなこと言ってる場合じゃなくて……!」



 そろそろお茶会も終了に近い時間だ。早く戻らないと、騒ぎになってしまうかもしれない。そうすると、きっと捜索される。流石に捜索が入れば見つけてもらえるだろう。だがしかし、捜索された場合には、見つかった時に何故迷子になったのかを言わなければならない。今回迷子になったのはお手洗いに行ったことがきっかけだ。何故、お手洗いに行かなければならなかったか?お茶を飲みすぎたからだ。それは、当然だがセシルにも報告されるだろう。そうなると……



 『お嬢様……?』







 いーやーだー!!!







 全く目が笑っていない素晴らしい笑顔のセシルのイメージが頭に浮かぶ。セシルは優しくて素晴らしい侍女だが、礼儀作法に関しては鬼の用に厳しいのだ。わがまま放題だったフィリアの時でさえ、セシルがぶち切れた時のあの笑顔には逆らえなかったのだ。セシルが『対フィリア様最終兵器』と呼ばれているのもそのせいだ。





 「だ、ダメよ、それだけはダメよ……!正座いたい正座イヤ正座コワイ」





 前世から苦手なことを2時間もする恐怖に怯えながら、なんとか活路を考える。とはいえ、フィリアほどではないが方向音痴だった私にはいいアイディアがない。結局、考えるだけ考えて絞り出したのは『左手の法則』。あれだ、迷路に迷い込んだ時には左手を壁に当てて進めばいつかはゴールにたどり着く、というやつだ。



 そうと決まれば!と、私は左手を壁に当て、進み始めた。そこの曲がり角を左ね……







 モフッ。







 モフッ?あら、ここの壁はずいぶん柔らかい素材で出来てるのね。毛皮かしら?





 「……ちょっと」





 「あら、最近の毛皮は喋るのね、高性能だわ……それとも、王家の秘術か何かなのかしら?」

 「ねぇ、何なの君」





 ……あら?





 明らかに不機嫌そうな声に、手を当てていたものを見る……と、ふたつの瞳目がこちらを見つめていた。



 「……きゃあぁぁあっっ⁉︎⁉︎」

 「うるさ……」

 「あ、あ、あなた、誰⁉︎ま、まさか、城に巣くうという伝説の幽霊……!な、南無阿弥陀仏!!」

 「はぁ?君、馬鹿なの?目ついてる?」

 「は……?」



 酷く呆れたような声に少し冷静になり、そっと声のした方を伺う。



 すると、そこにいたのは、しっかりとした人間だった。絹糸のようなプラチナ色の髪と、髪よりも少し暗い色の瞳……を、絵に描いたようなジト目にしながら、こちらを見つめている美少女。



 「な、なんだぁ、よかった……女の子かぁ」



 ほっと胸を撫で下ろす。と、額に鋭い一撃。



 「痛っ⁉︎ちょ_____初対面の人間にチョップをかますとは、綺麗な顔して何て攻撃的な女の子______ぎゃっ」



 再びの一撃。思わず額を抑えて美少女を睨みつけると、彼女は顔を真っ赤にしてプルプルと震えていた。











 「___は」

 「え?」

 「ボクはっ!男だ______!!」











 ___そういえば、ラビファンの攻略対象の中に、綺麗な白銀の髪と瞳を持った、まるで女の子のような美少年がいたな、と。



 そして、彼に対して"かわいい"とか"女の子みたい"という選択肢を選んでしまった場合、一気にバッドエンドに行ったなぁ、と。



 その難易度の高さから、『初見殺しの白銀の花』と呼ばれていたなぁ、と。





 思い出したのは、彼が怒り狂ってしまいに泣き出した後のことだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

10日後に婚約破棄される公爵令嬢

雨野六月(旧アカウント)
恋愛
公爵令嬢ミシェル・ローレンは、婚約者である第三王子が「卒業パーティでミシェルとの婚約を破棄するつもりだ」と話しているのを聞いてしまう。 「そんな目に遭わされてたまるもんですか。なんとかパーティまでに手を打って、婚約破棄を阻止してみせるわ!」「まあ頑張れよ。それはそれとして、課題はちゃんとやってきたんだろうな? ミシェル・ローレン」「先生ったら、今それどころじゃないって分からないの? どうしても提出してほしいなら先生も協力してちょうだい」 これは公爵令嬢ミシェル・ローレンが婚約破棄を阻止するために(なぜか学院教師エドガーを巻き込みながら)奮闘した10日間の備忘録である。

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

【本編,番外編完結】私、殺されちゃったの? 婚約者に懸想した王女に殺された侯爵令嬢は巻き戻った世界で殺されないように策を練る

金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベルティーユは婚約者に懸想した王女に嫌がらせをされたあげく殺された。 ちょっと待ってよ。なんで私が殺されなきゃならないの? お父様、ジェフリー様、私は死にたくないから婚約を解消してって言ったよね。 ジェフリー様、必ず守るから少し待ってほしいって言ったよね。 少し待っている間に殺されちゃったじゃないの。 どうしてくれるのよ。 ちょっと神様! やり直させなさいよ! 何で私が殺されなきゃならないのよ! 腹立つわ〜。 舞台は独自の世界です。 ご都合主義です。 緩いお話なので気楽にお読みいただけると嬉しいです。

どうせ運命の番に出会う婚約者に捨てられる運命なら、最高に良い男に育ててから捨てられてやろうってお話

下菊みこと
恋愛
運命の番に出会って自分を捨てるだろう婚約者を、とびきりの良い男に育てて捨てられに行く気満々の悪役令嬢のお話。 御都合主義のハッピーエンド。 小説家になろう様でも投稿しています。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

目覚めたら大好きなアニメの悪役令嬢でしたが、嫌われないようにしただけなのに全員から溺愛されています

月影みるく
恋愛
目を覚ましたら、大好きだったアニメの世界。 しかも私は、未来で断罪される運命の悪役令嬢になっていた。 破滅を回避するために決めたことはただ一つ―― 嫌われないように生きること。 原作知識を頼りに穏やかに過ごしていたはずなのに、 なぜか王族や騎士、同年代の男女から次々と好意を向けられ、 気づけば全員から溺愛される状況に……? 世界に一人しかいない光属性を持つ悪役令嬢が、 無自覚のまま運命と恋を変えていく、 溺愛必至の異世界転生ラブファンタジー。

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

処理中です...