6 / 22
❇︎過去の事故と後遺症 1
しおりを挟む綧と友人関係にあった頃と比べて、一緒にいる時間は格段に増えた。
というか、お互いに仕事に行っている時間以外ずっと一緒にいた。
当時お互いに実家暮らしをしていたため、仕事が終わり帰宅後すぐにご飯を済ませでかける。
もしくは綧の仕事が終わるのが遅い日はお風呂も済ませ、翌日の仕事の準備まで済ませてでかけるというのがルーティン。
両親からは「以前の人は遠距離でなかなか会えなかったこともあるけど、今は今で会いすぎじゃない?たまにはお互いゆっくりする日を作らないと疲れ取れないよ?それに、あやせは12月に試験を控えてるのだから勉強もしないと…あと3ヶ月もないよ?」と心配と助言も受けているくらいだった。
のちに話すが交際を始めてから、離婚するまでの間に綧と一緒にいない期間は別居した時以外にない。
そしてこの両親から助言を受けた時、私は3ヶ月後に資格試験を控えていた。
でも私も綧もそうはしなかった。
私個人的にも好きな人と会えるのなら、いつでも会いたい!という気持ちももちろんあった。あったけれどもそれとは別に、綧から聞いていた話も理由の1つだったからだ。
両親からの「お互い疲れ取れない」と助言を受け、確かにゆっくり体を休めることをしていないと思った私は綧にその話を持ちかけたことがある。
「付き合いだしてから特に、仕事以外本当ずっと一緒におるけん会わない日もたまには作らん?私はまだ屋内仕事やけど、外仕事やけん気候の変動で私より疲れ溜まるとこあるやろうし。」
「まあね、でもそれすると忘れるとよね。」
「忘れるって何を?」
「あやせとの接し方を」
「え?」
耳を疑った。接し方を忘れる?どういうこと?
困惑している私を尻目に綧は話を続ける。
「昔でかい事故にあったことがあって、その時に骨盤割って頭もぶつけとるとよね。その時の後遺症で1週間会わんかったらその人との接し方忘れるんよ。やけんあやせとも今はこうやって話せよるけど、会わんかったら今と同じように接することできんと思って。」
『そんなことある!?それじゃ会社や家族以外、ほとんどの人と接し方忘れてるってことじゃん!』と、口をついて出そうになるものの言葉を飲み込んだ。
私も車の状況や、現場を目撃した人から「死んでいてもおかしくない。」というような大きな事故を経験したことはある。
しかし車は廃車になったものの、鎖骨を骨折した程度で幸いにも命に関わるものではなかった。
なので「頭をぶつけた後遺症」と言われると、疑念は抱いても投げかけることはできなかった。
半信半疑なまんま相槌と空返事を繰り返すほど、「だから仕事関係とかで業者とかくるけど、なかなか会わん人ばっかやけん悩むこと多いっちゃん。ま、なんとかやりすごしてはいる。」と、とてもではないが悩んでいるようには見えない素振りで話を続けられ、結局疑惑は拭えないまま話を終えることになる。
その後も
「いくら事故の後遺症とはいえ、その後の生活に支障きたすのに障害者手帳もなにもないまんまとかある?」
と頭をよぎるも、
「実際大きな事故にはあってて、死にかけたのは事実。記憶障害みたいななんらかの後遺症が残ってもおかしくはないのかもしれない。」
と延々と自問自答を繰り返す始末。
「俺のことを心配してくれてるのもあるやろうけど、あやせの試験ももうすぐやもんね。気にしないでって言っても無理と思うけど、俺に気を使わず勉強ならどこででもできるやん。ファミレスででも一緒にやろう。」
と、こんな調子の綧の言葉もあり結局「絶対にそんなことはありえない!」と言い切れる、確たる証拠や根拠もないまま私の「好きだから一緒にいたい」という気持ちに従う形で一緒に過ごし続ける事になった。
そして、この言葉を鵜呑みにしたことをすぐ後悔することになる。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
分かりやすい日月神示の内容と解説 🔰初心者向け
蔵屋
エッセイ・ノンフィクション
私は日月神示の内容を今まで学問として研究してもう25年になります。
このエッセイは私の25年間の集大成です。
宇宙のこと、118種類の元素のこと、神さまのこと、宗教のこと、政治、経済、社会の仕組みなど社会に役立たつことも含めていますので、皆さまのお役に立つものと確信しています。
どうか、最後まで読んで頂きたいと思います。
お読み頂く前に次のことを皆様に申し上げておきます。
このエッセイは国家を始め特定の人物や団体、機関を否定して、批判するものではありません。
一つ目は「私は一切の対立や争いを好みません。」
2つ目は、「すべての教えに対する評価や取捨選択は自由とします。」
3つ目は、「この教えの実践や実行に於いては、周囲の事情を無視した独占的排他的言動を避けていただき、常識に照らし合わせて問題を起こさないよう慎重にしていただきたいと思います。
それでは『分かりやすい日月神示 🔰初心者向け』を最後まで、お楽しみ下さい。
『神知りて 人の幸せ 祈るのみ
神の伝えし 愛善の道』
この短歌は私が今年(2025年)元旦に詠んだ歌である。
作家 蔵屋日唱
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる