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しおりを挟む「なんでこんなラインが来るようなことになっとるん?正直に話せ。」
外に出て買い出しに行く前に彩のマンションのロビーで、真っ直ぐに目を見て問いかけてくる雅。
この目の前では嘘をつけない。
言葉に詰まりつつも、前日のできごとを全て話した。
話し終えてからしばらく続いた沈黙の後、小さくため息をつかれ身構える。
「なんでそんな男といるかな、お前は。」
何にも言い返すことができず沈黙。
その間も容赦なく受信し続ける惇からのライン。
「とりあえず、あやせが浮気してるの前提でこいつさっきから悪態ついてるし、彩に説明してもらおう。この手の奴は俺じゃ逆効果だ。」
そういうと雅はすぐに引き返し、彩に軽く説明してことを進めていく。
私はというと今思うと軽くパニックになってたんだろう、ひたすらアワアワしていた。
「大丈夫?ごめんね。彼に今日のこと話してきてるって言ってたから、配慮足りなかったね。私からも一言彼に話してたらよかったね。」
と、惇に電話する前に彩に謝られ慌てる。
『彩は悪くない。雅も悪くない。
悪いのはちゃんと納得させることができなかった私。』
そう言いかけて惇に電話がつながる。
「あ!もしもし初めまして~、彩と申します。惇さんですよね?いつもあやせちゃんにはお世話になってます~。」
私の携帯からかけたから惇は電話口にいるのは私だと最初思ったみたいで、直接電話口で聞いたわけでもないのにわかるくらいでかい声で悪態ついているのがわかった。
惇との電話は思っていたよりも長く続いた。
その間私はというと彩が惇に怒鳴られたり、理不尽なことで罵られたりして不愉快な思いをしてしまうんじゃないかとヒヤヒヤした。
そして何より当初の予定と違って、泊まりこそしないけれど雅と彩の彼氏がこの場にいることがバレてしまわないかと生きた心地がしなかった。
彩は終始にこにこ笑顔を絶やさず、物腰も柔らかい感じで丁寧に話していた。
もともとおっとりとした口調の彩だけれども、明らかに失礼な態度と物言いの惇に対しても崩れないスタンスに驚いた。
「~はい、でわ明日は前々から私があやせちゃんを連れて行きたいと思っていた場所がありますので、その後にお返ししますね。はい、でわ失礼します~。
はい!お電話終わり!あやせちゃんは今日このまま私ん家お泊まり続行です!」
不安と安心となんだかよくわからない感情とが入り混じって、きっとなんとも言えない顔をしていたと思う。
「大丈夫だった?惇ちゃんに理不尽なこと言われんやった?」
「んー。あやせちゃんから泊まる話は前から聞いてあると思うけどって話したら、『そんなの聞いてない。』から始まったから困ったけど大丈夫よ!明日も朝イチ帰るなんてことしなくていいから、せっかくお泊まりなんだから楽しく過ごそう!」
後日聞いた話。
惇は予め私から聞いていた彩と遊ぶ約束をしているという話も、泊まるという話も何も聞いていないと言い張っていたらしい。
「ちょくちょく彼氏に連絡入れてたの知ってるからびっくりはしたけど、あやせちゃんがあなたに連絡入れてるの知ってますって言ったとこでこじれるだけっぽかったから悩んだね。」
と困ったような笑顔で話してくれた。
他にも
『そこに男いるんでしょ。』
『あなたの家に泊まるって言ってますけど、そこ本当にあなたの家ですか?』
『あなたのことを知らなければ、家なんて写メで送られても本当かどうかなんて確かめようがありません。』
『あやせが連絡を怠るから悪いんです。』
『やましいことがあるから連絡できないんでしょ。』
など、頭に血が上った状態で捲し立てるように話していたらしい。
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