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しおりを挟む翌日
雅と彩の彼氏は朝食後それぞれ出社や帰宅し、彩と私は当初の予定通り出かけた。
「あれから彼氏さんからは連絡きた?」
「開くのが怖いくらいの量きてる」
「え?」
彩と電話で直接話をして、翌日の予定も事細かに私からではなく彩から聞いているのにも関わらず暴言の嵐は変わらなかった。
「なに知らん女電話に出しようと?自分の口から正直に言わんや」
「やましいことあるけん出きらんっちゃろ」
「さっきの女もあなた側の人間やけんね、信用ならん」
「どうぞ、好きなだけ男漁りしてください」
「こっちは今日も仕事なんで、あなたのせいでまた寝ずに仕事に行きます」
など…。
鳴り止まない通知音が怖くてマナーにすらしていなかったが、明け方まで延々と連絡はこの調子で続いていた。
「顔色悪いけど本当に大丈夫?彼氏さんまだ疑ってるの?」
「いやー…うん、私が1日帰らなかったこと納得してはないみたい」
「話してみて思ったけど、独占欲?支配欲?はかなり強めな印象はあったけど転々あやせちゃんがそれに合わせて我慢し続ける必要はないからね?何かあったら私に話してね?警察とか、あやせちゃんの親とかから不幸ごとで連絡が来るの私嫌だよ?」
ここまで言われて初めてハッとなった。
『そっか、惇ちゃんのこの暴言は度を越してるんだ。それも身を案じる程周りの人に不安を抱かせ心配させてしまうくらい』
それまでは自分さえ不機嫌な時の惇ちゃんの暴言に耐えていればそれで大丈夫、
八つ当たりするのも私に対する甘えからくるものだろう。
と信じて疑わなかった。
その考えがまず間違っていたと一瞬でも自分自身で考えることができたこの時に、別れを切り出すことができていたらのちに起こる出来事の大部分は回避することができていたはずだった。
でも私は彩と一緒にいて、惇ちゃんとは離れた場所にいたその場でそうしなかった。
まだ心の大部分を占めていたのが『この人のこういった暴力的な部分も受け入れることできるのは私だけ』という気持ちであって、『この人の暴力的かつ理不尽な行いは異様だ』という気持ちはほんの僅かしかなかったから。
その後も彩とはいろいろな話をした。
惇ちゃんとの馴れ初め。
付き合い出してからの惇ちゃんの言動や行動。
今までの喧嘩の内容など。
悲しそうな泣きそう顔を時折覗かせつつも、彩は否定することなく聞いてくれていた。
そして話を聞き終わり、帰路に向かう途中に彩から言われたのは
『あやせちゃんが彼氏さんを大事に思ってることは、すごく伝わってきて痛いほどわかった。でもね?全部が全部許して受け入れることだけが全てじゃないよ。好き放題彼氏さんはやって、あやせちゃんだけが我慢することは絶対違うからね。言わなきゃいけないことはちゃんと言わないとだよ?もしうまくいかなかった時や、向き合おうと頑張るための勇気が欲しい時はいつだって頼って。全部が全部あやせちゃんが悪いとかそんなの絶対違うからね。』
だった。
本当は『別れた方がいい』と言いたかったんだと思う。
それでなくても私自身の身を案じてくれているのも、真っ直ぐに伝えてくれるから痛いほどわかってはいた。
でも、この時の私は『惇ちゃんの元を離れる』という決断だけできず
濁した返事しか返すことができなかった。
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