彼が他人になるまで

彼の先輩

浮気を疑われてからの数ヶ月は、今思うと尋問と拷問のようなものだった。

数日•数週間機嫌が良く平穏に過ごせてると思えば、仕事で嫌なことがあったり私の言動•行動で気に食わないことがあると豹変。
コロッと機嫌が悪くなり突然浮気をまた疑われて、意にそぐわぬ反応を私が返すと益々機嫌が悪くなり暴言の嵐だった。
（今だからこそ言えるのは、何を言っても癪に触ることには変わりないかったと思う。）

罵る内容はいつも同じ。

「あなた信用ないから、信用されとるとか思い上がらんで」
「携帯見せんやん、男漁りよるかおるっちゃろ。ビッチが」
「ビッチがこんなとこいないでください。さっさと出てけ、触りたくもない」
「してない、してないってしか言わんやん。口ではなんとでも言える」
「文句あるなら言わんや、屁理屈女が。都合悪くなるとすぐ黙る」

など。

「浮気なんてしてない」と言っても
誰とやりとりしてたとかラインの内容見せても
その他の携帯の中身を見せても暴言は止まらない。
ここまでした上で疑い続ける彼に浮気をしてないことを証明するなんて、悪魔の証明と呼ばれるくらい不可能も同然。
その後暴言を吐き散らかし、満足した惇は次の行動に出る。

数日間のフルシカト。

何を話しかけても、
何をラインいれても、
全部シカト。
酷い時は既読にもならない。

そのシカト期間も満足すると、何事もなかったように話しかけてくるし、ラインも惇の方からしてくる。

不定期に数ヶ月続く尋問にフルシカトと、何事もなかったように元に戻る惇の行動に次第に精神的に疲れてしまっていった。

そんなある日、惇から１通のラインが仕事中に入る。

「今日仕事終わったら吉井くんと釣りに行くよ」