【R18】君は僕の太陽、月のように君次第な僕(R18表現ありVer.)

茶山ぴよ

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第1章 新担任

第25話 握り合う手(2 )

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聡は自分の気持ちに気付かないふりをしている自分を、とうに自覚していた。

以前、聡が大学生のときに、同じサークルの同級生に真剣な思いを告白されたことがある。

それまでは、一緒によく遊び、悩みの相談にも乗ってくれたとてもいい友達だった。

が。彼の告白によってすべては無になってしまった。

聡が「ごめんなさい」と謝ったとき、彼は「友達でいてもいい?」と訊き、聡はうなづいたはずなのだが……。

気がつくと彼のことを避けている自分がいた。

潔癖な聡は異性関係に関して、YESかNOか、残酷なほどに態度に出てしまうタイプだった。

しかし、将に関しては。NOといいながら、こうして一緒にいる。ときめいてさえいるじゃないか。

―――将のことを好きになりかけている。

担任教師であること、年上であること、そして博史のこと。

これらが仮になかったら?

いや、すでに『なければいいのに』という願いさえ一瞬浮かんだ自分を責めるもう一人の聡。

乱れた聡の心が泣きたい気持ちにさせたのだ。

「いこうか」

聡は涙を浮かべる前に、将に微笑んでうながした。

背の高い将の左側を、さっきより近い位置で並んで歩き始める。

と、将の左手の甲が聡の右手の甲に擦り合わせてきた。

そのまま聡の右手を握り締める。

「……!」

聡が将の顔を見上げると、将は一瞬いたずらっぽく笑って、そして右側の夜の東京湾に顔をそらす。

でも握った手は離さない。

手を振り払って『やめてよ!』と怒鳴るべきなのだ。

わかっているけど、聡の声帯は働きをやめてしまったように沈黙している。

9月も下旬、夜の港はひんやりとした涼しさだが、将の手は温かく聡の手を包んでいる。

そこから将の血液が聡の体内に流れてくるような錯覚さえ起こしそうな、触れ合い。

つながれた手を揺らして歩きながら、

『浮気』というものの線引きを聡は考えている。

無理やりのキスを受けるのは?

休日の部屋へあげて二人きりになるのは?

二人で海へとデートするのは?

こうして手をとりあって歩くのは?

……そしてその先は?

遠い異国にいる博史の顔を思い浮かべて判断しようと試みた。

しかし、将の温かい手が聡の思考を支配してしまったように、博史の顔がどうしても思い出せない。

タガが1つはずれた。聡は将の手の温かさに対して素直になることにした。

将の左手の甲が、ふいに少し温かくなった―――いままで握られていた聡の右手が、将の左手を握り返したのだ。

将は思わず聡を見た。聡は将と一瞬目をあわせるとまっすぐに前を見た。

将は胸がいっぱいになった。こんな幸福感を味わったことは、彼の17年間で初めてだった。

走り出したい気分を、左手にこめて、よりギュッと聡の手を握って空を仰いだ。

夜空は地上の明るさに負けて、漆黒になりきれていない。

そんな夜空だが、将の目には満点の星空が見えるようだった。
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