49 Daysー絶対死んだと思った自衛隊員が、最愛の彼女の教え子(問題児)として目覚めてしまい!? ★アルファポリスVer

茶山ぴよ

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6:ささやかな招待(1)

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 月曜日の朝。

 登校するなり海斗を待っていたのは、称賛ではなく「こってりとした厳重注意」だった。

 校長室の重苦しい空気の中、校長と教頭が交互に言葉を重ねる。

 「人命救助の精神は尊いが、あまりに無鉄砲すぎる」
 「君自身の命を第一に考えなさい。もし君に何かあれば、大問題になるのだから」

  彼らが心配しているのは、海斗の命そのものではなく、平穏な学校運営なのだということが透けて見え、海斗は白けた気分でそれに応えた。

 さらに閉口したのは、義母である佳乃まで呼び出されていたことだ。 

 校長室を出ると、佳乃は廊下で膝を折り、教頭たちに何度も頭を下げていた。
 
 海斗は、そんな彼女の後ろ姿をどう見ていいか分からず、ただ黙って立っていた。 

 「翔生さん……バイク事故からまだ日も浅いのに。またあんな無茶をして、心配させて……」

 佳乃の瞳には、本物の涙が浮かんでいるように見えた。

 記憶障害を装っている海斗には、この義母との正確な距離感が分からない。

 ただ、彼女の悲しみが演技には見えず、海斗は居心地の悪さに視線を落とした。 

「……心配させて、すみませんでした」 

 敬語を混ぜた不自然な謝罪になったが、佳乃はそれを聞き流すように鼻を啜った。

「今日は迎えの車をよこすから、学校終わったら本宅に帰りなさい。体、まだ痛むでしょう?」

「……わかりました」

 結局、一時間目の英会話の授業は、この「指導」のせいで丸ごと潰れてしまった。 教室に戻る廊下で、海斗は岩場で強打した肩や脇腹の鈍痛を感じて溜息をつく。

(体も痛いし、やっぱり休めばよかったな……)

 ちなみに、七海が川に落ちた件は、公には学校の判断で「幼児が川に落ちたが無事でした」という最小限の報告にとどめられた。

 救助隊が到着したときには、すでに海斗も七海も岸に上がっていたため、学校は“騒ぎにしたくない”一心で早々に収束させたのだ。

 幸い、七海は少し水を飲んだ程度で、まったく怪我もなかった。岸に上がった直後、里玖の顔を見て、安心から泣き声をあげたものの、すぐにケロリとしていた。  

 海斗自身は、救助隊を返したあと、こっそり病院に連れていかれた。幸い骨折はなかったが、全身の打ち身はひどかった。

 泥だらけ、傷だらけの海斗に向かって、里玖が何度も「ありがとう……朝倉君、ありがとう……」と涙を流して頭を下げていた姿が、今も脳裏に焼き付いている。


 教室の引き戸を開けると、クラスメイトたちが一斉に海斗を取り囲んだ。

「朝倉、マジでヒーローじゃん!」
「ショウ、カッコよすぎ!」
「映画のスタントかと思ったわ」 

 アキトが自分のことのように鼻を高くして笑う中、控えめに海斗の机に歩み寄る影があった。

「……打ち身、まだ痛む?」

 杏奈だった。机の横に立ち、心配そうにのぞき込む。
 彼女の瞳には、まだあの時の恐怖の残滓がある。 

 あの日、岸辺に這い上がった海斗を見て、杏奈はなりふり構わず泣きじゃくった。

「ショウ……よかった……浮かんでこなかったらどうしようって……」

 海斗は荒い息の中で「大丈夫だから」となだめ、二人の間のわだかまりは文字通り水に流れた形になっていた。

 英語の授業は“指導”でつぶれたため、終業のホームルームまで里玖と顔を合わせることはなかった。

 今日の授業がすべて終わり、里玖が教室に入ってきたとき、ふと視線が合った。

 彼女はもう、気まずそうに目を逸らしたりはしなかった。

 その場で海斗を見据え、一秒、深く頭を下げる。それは教師としてではなく、一人の母親としての敬意だった。

 その一礼に、海斗は胸が熱くなる。

 終業のホームルームが終わると、里玖がまっすぐ海斗の席へ歩いてきた。

 「朝倉君、ちょっといい?」


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※カクヨムにて先行公開中
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