49 Daysー絶対死んだと思った自衛隊員が、最愛の彼女の教え子(問題児)として目覚めてしまい!? ★アルファポリスVer

茶山ぴよ

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10:不在(5)

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 LINE には「AKITO がアルバムにコンテンツを追加しました」とあったのでそれをあけてみる。

 ちなみに追加された日付は6月15日、アルバムのタイトルは『6/12 BBQ』とある。

 学校でバーベキューイベントがあったのか、と何気なくサムネイルを見わたした翔生は、次の瞬間「えっ?」と声を漏らした。

――そこには、まぎれもなく翔生自身が写っていた。

 スマホを至近距離で、かつ画像をスワイプして拡大して確認した。

 どうみても自分だ。こんなバーベキューに参加した記憶などまるでないのに、自分がいる。

 両手に小さめの“漫画肉”を持っておどけている自分。

 大きなスキレットのパエリアを誇らしげに掲げている自分。

 そして――なぜか、クラスメートの石川との2ショット。

(石川……? 水泳部の……? 話したことなんて、一度もないのに)

 記憶の齟齬をつきつけられて、自分の土台がグラグラする気がする。

 さらにスクロールすると、アキトと小さな子どもと一緒に変顔している写真が出てきた。

 その子を見た瞬間、翔生の中で、バチっと電流のようなものが開通した。

 あの断片化された映像の中にあった、幼児が「ぱぱー!」と叫びながら抱きついてきた柔らかい感触。

(……この子)

 夢の断片と現実の写真がつながった。

 ということは――アキトに訊けば、この一か月の謎が埋まるかもしれない。



 翌朝、月曜日。

 翔生は、泥の底から浮かび上がるように、ゆっくりと上体を起こした。

 うとうととすると、断片のような、それでいて感触も伴った鮮やかな映像が浮かぶのはあいかわらずだ。
 
 あまり深く眠れなかったせいなのか、時刻はもう9時30分をまわっている。

 シャワーをザッと浴びてバスローブを羽織ると、その流れで無意識に冷蔵庫を開けた。牛乳がない。

 そのとき、鍵がカチャリと静かに開き、家政婦の志乃が入ってきた。

「おはようございます」

「牛乳がないんだけど」

「さようでしたか。申し訳ございません。最近飲まないようでしたので……」

 志乃は、翔生の様子に違和感を覚えた。

 このところの翔生なら、挨拶には必ず返事があり、時には労いの言葉すらあった。そもそも、この時間には登校していて、不在のはずだ。

(また体調を崩された……わけではなさそうね)

 以前の翔生は、家でゴロゴロしていることも多かったので、志乃は翔生の気まぐれだと思うことにした。

 翔生は自室へ戻ると、ため息をつきながら制服に袖を通した。

 * * *

 学校に着いたのは、三限目の終わり、昼休みに入る直前だった。

 昼休みになると、いつも通りアキトが席に寄ってきたので、翔生はほっとした。

「おそよー! 風邪え? ぶりかえしたあ?」
「いや」

 風邪をひいた覚えなどない。

 斜め前の席に杏奈がいるのは、今まで通りだ。彼女はちらりと翔生を見て、

「ショウ……おはよ」

 とだけ言い、すぐに背を向けた。



 学食では久しぶりに「ごぼ天パン」を買って食べる。

 油と炭水化物の破滅的な組み合わせ。くどいのに、なぜかやみつきになる。

「くどいわ……でも、たまらん」

 アキトが笑いながら頷く。

「ショウ、これ好きやもんな」

 その“いつも通り”が、翔生をとても安心させた。

 その安心感から、翔生はアキトに、思い切ってきいてみようと思ったが、疑問点が多すぎて何からきいてみたらいいか迷ってしまう。

 もくもくとごぼ天パンを口に運び、ようやく糸口になりそうな質問を思いつく。

「なあアキト。“ななうみ” とか “かいと”って名前、聞いたことある?」

「なんそれ。知らん」

――頼みのアキトも知らないか。

 ならば、こっちはどうだ、となかば心の中で祈るように LINE のアルバムを開いてアキトに見せる。

「あのさ。この子ども誰?」例の変顔3ショットを見せる。

「あー、これ石川さんに撮ってもらったやつね。七海じゃん。ショウ忘れたの? 早川先生の子供やん」

「……えっ」

 心臓が止まりそうになった。

「早川先生、子供いたの?」

「おお、おま、今頃なに言ってんのw? また記憶障害? あーそうそう、早川ちゃんシングルマザーらしいよ」

「……へえ~、そうなん」

 平静を装ったが、頭の中は真っ白になっていた。

 あの早川先生が、シングルマザー――?

 殴られた直後のように、うまく思考できない。

『ぱぱー!』

 うまく働かない頭の中で、夢の中の幼児の声が反響した。

 早川先生の子供の七海が、自分のことを『ぱぱー』と呼んで飛びついてくる断片映像が、はっきり浮かぶ。

「そうそう、七海。かわいいんや。俺のことアニキって呼んでさぁ」

 アキトが笑っているのに、翔生の胸はざわつくばかりだった。

 * * *

 午後、四時限目の古文の授業中。

 翔生は机の下でこっそりスマホを開いた。早川先生からのメッセージアプリをもう一度見る。

-『七海が海斗のエビフライが食べたいって。えび買ってきて』

-『おじさんおばさんも海斗が来るの楽しみにしてるよ』

-『七海はもう寝ちゃったよ』

 このメッセージは、“海斗”という男に向けて送られている。

 そしてその男は、里玖と――とても親しい。

(七海の父親……? それとも、今カレ……?)

 胸の奥が、熱いものを無理やり飲み込んだように灼け付く感覚。初めて味わう感情だった。

――嫉妬。

 早川先生の男「海斗」への、どうしようもない嫉妬。

(クソっ……)

 スマホをしまおうとした瞬間、机の角にぶつかり、「カツーン」と大きな音が響いた。

「あ」

 古文の先生が鋭い目でこちらをにらんでいた。

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