49 Daysー絶対死んだと思った自衛隊員が、最愛の彼女の教え子(問題児)として目覚めてしまい!? ★アルファポリスVer

茶山ぴよ

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12:君を置いて(6)

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「……さっきはなんでビール飲んだと?」

 ウーロン茶のグラスを置こうとした海斗の手が、ぴたりと止まった。

「え……」

 言いよどむ海斗を、里玖は逃がさなかった。

「それに、留学の出発日。来週の二十日じゃなかったと?」

――しまった。

 担任教師である里玖に、留学の日程が事前に伝えられていることを、完全に忘れていた。

「それは……その。留学の準備が忙しくなりそうやけん、団地まつりの手伝いは無理かなと思って……」

「うそ!」

 里玖の鋭い声が、海斗の苦しい言い訳を断ち切った。

「……まま~」

 そのとき、不安そうな七海の声が響き、里玖はハッとして我に返った。 

「ぱぱと、けんかしないで」

「……大丈夫。喧嘩なんかしとらんよ。さ、七海、歯磨いて寝ちゃおう」

「ぱぱは……?」

 うるんだような小さな黒い瞳が海斗を見上げる。幼いながらも懇願するような視線だ。

「ぱぱも一緒に寝るから、大丈夫だよ」

 海斗が七海の頭を撫でながら優しく言い聞かせると、ようやく七海は小さな頷きを返した。

 それから七海の歯磨きを済ませ、三人は川の字になって横になった。

 照明を落とした暗がりの中で、七海が寝付くのを待つ。  
 
 七海はすぐに眠りに落ち、静かな寝息を立て始めた。

 その寝息の向こうで、里玖が海斗をじっと見つめていた。

 その強い視線に耐えきれず、海斗は視線を七海の丸い頬へと逃がした。

「海斗……なんか隠しとうよね」

 低い、逃げ場のない声。

 海斗は「何も」と否定しようとしたが、言葉が喉に張り付いた。今ここで声を出せば、その震えですべてを白状してしまう。

「なんで……なんで黙っとうと? 私に……言えんことなん?」

 沈黙が長く続くほど、それは答えとなって里玖を追い詰めていく。 里玖の瞳に、みるみるうちに涙が溜まっていく気配がする。

「海斗……。まさか……」 

里玖の声が、恐怖で震えだす。 

「……いなくなる、つもりなん?」

 海斗は落とした視線を上げられなかった。胸が締め付けられ、肺から空気が消えていくような息苦しさと静かに格闘している。

 里玖は震える声で続けた。

「おじさんやおばさんを見るとき……最後のお別れみたいな顔しとった……」
 
 涙をこぼしながら、里玖は海斗の頬にそっと触れた。

「海斗……お願いやけん……ほんとのこと、言って」

 その手の温かさに、海斗は嘘の限界を知る。

「……里玖……」

 絞り出した声は、自分でも驚くほど掠れていた。

「俺は……もう……長くおれん」

 里玖の瞳が大きく見開かれ、また新しい涙が落ちた。

「……どういうこと……?」

 海斗は言葉を飲み込んだ。
 言えば、すべてが終わる。
 言えば、里玖を泣かせる。
 言えば、里玖の世界を壊す。
 
 ……でも、もう隠せない。

「……あと、一週間しか……里玖のそばにおれん」

 里玖は息を呑んだ。

「なんで……なんでそんなこと言うと……海斗……死ぬみたいなこと……」

 海斗は目を閉じた。

「俺は、あと一週間で……あの世に行くんだって」
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