切なめ短編集

秋野

文字の大きさ
4 / 13
触れる、溶ける。【アイスバース】

3

しおりを挟む
第5話


久しぶりに丸1日の休日の取れた辰巳は、そろそろ食材と日用品を買い足そうと身支度を済ませていた。

しばらくしてチャイムが鳴り、不思議に思いながら玄関へ向かう。

本来オートロックのマンションである為、直に部屋のインターホンが鳴ることは無いはずだった。

スコープを覗き来客者を確認すると私服姿の遊馬が紙袋を手にソワソワしているのが見えた。

「おはよう」

ドアを開けて声を掛ける。

「お、おはようございますっ…あっ、お出かけのご予定ですか?出直しますね!」

辰巳の身なりを見るなり、そう言って慌てて帰ろうとしている遊馬の手を辰巳は思わず捕まえていた。

「ぁ、あの」

何も言わずに掴まれた手に、遊馬はどうしていいか分からなくなっているようだ。

「あぁ、悪い。」

パッと手を離し、辰巳は頭を搔いた。

「出かけるついでだ、飯でも一緒にどうだ?君が嫌じゃなければだが。」


「嫌じゃないです!この前のお礼をさせて下さい。それと、ほんの少しですが先日のお詫びに受け取ってください。」

そう言って持っていた紙袋を手渡された。

その後遊馬は一度荷物を取りに部屋へと戻り、改めて辰巳の部屋を訪れた。

「さぁ、行こうか。」

辰巳の車に揺られ、おしゃれなカフェに連れて来られた。

目の前に座り、パスタを口に運ぶ辰巳を眺める。

「なんか、かっこいいですね。」

そんな言葉が思わず口から出てしまい、慌てて両手で口を塞いだ。

「はっはっはっ、中々言われないから嬉しいよ。」

そう答えながら、少し遠くへ視線を流した。


──────────────────

いつかの夏の日

友人の子供が姿を消した。

彼は"アイス"と呼ばれる者だったようだ。

彼の両親は何年も必死に行方を追っていたが、数年前に事故に遭い2人とも亡くなった。

運命のジュースに出会ったアイスは消えてしまうなど、おとぎ話だと思っていたのだ。

目の前で、級友が消えてしまうまでは。

その日から、辰巳は恋愛が出来なくなった。

──────────────────

上の空になりつつも、遊馬と過ごす時間はあっという間に過ぎていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...