かんせん

素元安積

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 女の子は、病院の屋上(おくじょう)まで走っていきました。

 屋上(おくじょう)につくと、ふぅっと空を見上げます。

「そんなところでなにをしてるんだ?」

 聞きおぼえのある声でした。

 女の子が振り向くと、そこにはお医者さんのすがたがありました。

「お医者さん!」

 女の子がだきしめようとすると、するりと手をすりぬけてしまいました。

 女の子は気づきました、お医者さんはゆうれいなのだと。

 でもそれでも良かったのです。

「どうして死んじゃったの!? わたしがわるいの?」

 女の子がたずねると、お医者さんは首を横にふりました。

「いいや、わるいのはオレだよ。わるいのは、性格のわるいオレ」
「……お医者さん、良い人だよ?」
「……だから、後悔(こうかい)すると思ったんだ」

 どうして後悔(こうかい)するのか、女の子にはわかりません。

 首をかしげました。

「良い人になったら、死んだ時未練(みれん)が残って後悔(こうかい)すると思ったんだ。だから、ずっとわるいやつを演じてきた」
「……後悔(こうかい)してるの?」
「ああしてるよ。オマエがこの先元気にやってけるかなって」
「どうだろう」

 女の子はかなしそうに言います。

 すると、お医者さんは女の子の頭をなでるしぐさをしました。

「この感染病(かんせんびょう)は、きっといつか終わる。けれどな、それでも年齢(ねんれい)や、病気ってものがある限り、人は苦しんだりする。オレはそういう人をもっと治してあげたかったけど、出来なくなっちまったな」
「……じゃあ」
「ん?」
「わたしが、お医者さんのかわりになってあげる!」
「……オマエ」
「やくそく」

 女の子はお医者さんに小ゆびを伸ばしました。

 すると、お医者さんもえがおで小ゆびを伸ばし、二人はゆびきりをしました。

「たのむぞ、小さなドクターさん」

 そう言うと、お医者さんは風にとけて消えてしまいました。

「……お医者さん」

 女の子は、お医者さんがとけて消えた空を見上げました。
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