『私の神様は〇〇〇〇さん~不思議な太ったおじさんと難病宣告を受けた女の子の1週間の物語~』

あらお☆ひろ

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㉚「通天閣」

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㉚「通天閣」
 「あーっ、健さんの手紙が…。」
と思ったが、片側2車線の道路の向こうに手紙は飛んで行ってしまった。「パパーッ!」クラクションを鳴らされ、急停車する車の間を縫って、反対車線に駆け抜け手紙を追ったが見つかることは無かった。(健さん、どういうことなん。もう会われへんの?そ、そんなん嫌や。きちんとお礼もしたいし、これからも一緒に美味しいもの食べて、いろんなこと話したかったのに…。仕事のレポートもまだ仕上げられてないのに…。私、どうすればええんよ…。)と思い、歩道に立ち止まると、とめどなく涙が溢れてきた。

 歩道で立ち尽くし、大泣きしていると、茶髪でロン毛、真っ赤な大きな襟のシャツに黒いスーツの派手な見た目の男が声をかけてきた。
「お姉ちゃん、どないしたんや?男にでもふられたんか?なんやったら、俺が癒したんで…。おれ、ミナミでホストやってんねん。初回はセットで3000円やから、今から一緒に行くか?飲んで騒いで嫌なことは忘れようや。」
と店の名前と源氏名だけ入った名刺を希に差し出した。
 (あっ、「名刺」!健さんにもらった名刺があったはずや!)と財布を開けると、「よろず相談承ります。」と書かれた健の名刺を取り出した。
「お兄さん、すみません、「浪速区恵美須東1-18-6」ってどこらへんですか?教えてください。」
とホストの男に名刺を突きつけ、問いかけた。
「あー、恵美須東1丁目やったら、新世界やな。ここから通天閣にむかってちょっと北に上がったところやな。まあ、それよりも、うちの店においでえや!サービスするで!」

 「ありがとう。お店は遠慮しとくわ。今、人探しで忙しいねん。じゃあね!」
と希は通天閣にむかって駆け出した。(電話は止められても、事務所は逃げられへんやろ!健さん、絶対に逃がさへんで!きっちりとお礼させてもらうからな!)徐々に通天閣が大きく見えてくる。電柱にかかれた住所表示が恵美須東1丁目になった。
 配達中のバイクの郵便局員を捕まえて、名刺の住所はどこになるのかを尋ねた。郵便局員は、けげんな顔をして答えた。
「お姉ちゃん、この住所は通天閣やな…。事務所建物とはちゃうけどな…。まあ、通天閣の職員さんなんかな?」

 希は、通天閣の真下に立ち、入り口を探した。通天閣に入場するチケット売り場を見つけた。
「すみません。私、備里健そなえざと・けんさんの知り合いです。備里健さんに会いたいんですけど。どこに行ったら会えますか?」
「ん?「そなえざと」?そんな職員はおれへんけど…。」
チケット売り場の初老の男性は、首を横に振った。(えっ、そんなことあれへんやろ。せや、名刺を見せたらわかってもらえるかも!)と希が、健の名刺を差し出すと、男性は、老眼鏡をかけ名刺をまじまじと見た。
「あぁ、わかったわかった。この塔の最上階に居てはるで。知り合いやって言うんやったら、チケットはええわ。こっちからお入り。」
と従業員用のゲートから中に入れてくれた。

 男性の指示通り、エレベーターに乗って、最上階に上がっていった。最上階フロアは展望台になっていて、大阪の街が遠くまで見通せた。ぐるっと回ったが、健の姿は見えない。(えっ、さっきのおじさん、ここに居てるって言ってたのに…。)と思い、二周回ってもらちがあかないので、売店のおばさんに名刺を差し出し尋ねた。
「すみません、備里健そなえざと・けんさんはどこにおられますか?私、本田希って言います。取り次いでもらえないですか?」
 売店のおばさんは、名刺を見ると慌てて、興奮した声で店の中の電話をかけた。
「所長、何年かぶりに「ビリケン」さんの名刺持った女の子が来てるんです。今すぐ展望室に来てください!」

すぐに半袖カッターシャツにネクタイの男が駆け足でやってきた。
「ビリケンさんの名刺を持ってきたっていうのはあなたですか?」
と希の両肩に手をかけ、真剣な顔で尋ねられた。
「あ、あの…、私探してるのは、「そなえざと」さんなんですけど…。」
と希が名刺を男に渡すと、まじまじと名刺の裏表を確認して呟いた。
「凄い…、ほんまもんのビリケンさんの名刺や…。あなた、ビリケンさんに何か願い事して、それが叶いましたか?」

 何が起こっているのか、わからず希が立ち尽くしていると、所長と呼ばれる男は、希の手を引き、展望フロアを半周まわった。そこには、あまり可愛くない風貌の黒っぽい人形が両足を前に投げ出して、出っ張ったお腹に大きな笑った口に極端に細い目で座っていた。
「こちらが、あなたがお探しのビリケンさんです。」
(えっ、これって、健さんの名刺に描かれてる変なキャラクターやん。)とビリケンの顔立ちに気づいて、名刺と見比べた。
「あなたがお探しの方は、このビリケンさんです。「そなえざとけん」ではなく「備里健ビリケンと読みます。 大阪が誇る全知全能の神様です。願い事が叶ったのであれば、ビリケンさんの足の裏をかいてあげてください。きっと、喜んでくれますよ。





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