その花びらが光るとき

もちごめ

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あっという間に、この村でお世話になってから五日が立ちました。


 今も村長さん宅でご厄介になってます。

 村の人達は私のことを「女神さま」 と呼んでいますが、私自身は特に何も役に立っていないただのニートのように思います……。


 毎日一日仕事もせずにただごろごろして、三食温かいご飯を頂く。

 うん、ダメ人間だ、私。

 それでなくとも、この村は多分、裕福ではないと思う。

 着ている服も薄く汚れた服を着ていて、誰一人、綺麗にお洒落をしている人はいない。


 子供たちは毎日家の手伝いをしている。

 小さな村をぐるっと一周してみたけれど、この村の大きさは日本で住んでた私の家から近くの小学校までの距離の大きさしかないように思う。

 人口も見たところ100人くらい。

 病院はなく、簡易的な診療所でおじいちゃんが昔ながらの民間療法的なもので対処をしている。 
 学校もなくて、近所のお兄さんが地面に字を書きながら子供たちに文字を教えている。

 ちなみに私はその文字が読めなくて、軽くショックを受けた。

 この村に来てから普通に会話ができているから、チートのようなもので、言語自動変換されているのだろうと勝手に考えていたからだ。

 なのに書かれている文字がただの記号にしかみえなかったので、一度聞いてみたことがある。


「それ、なあに?」

「これは文字だよ。『おはよう』 って書いてあるんだよ」

「あ、そうなんだ。はは……。頑張ってね」


 どうやら、この大陸の共通言語の文字らしい。

 どういう仕組みなのか、話す言葉は私には日本語に聞こえているのだけれど、きっと相手にはこの国の言葉に聞こえているだろう。

 けれど、書き文字は変換されないらしく、私が書いた文字を見せても、みんな変な顔をして首をひねっていた。

 お互い、会話でしか意思疎通ができない。

 なんとも中途半端なチートだ。

 でも、この世界に落ち、会話が恙なくできるだけでも有り難いのは事実だから、とりあえずは良しとしよう。

 今は、文字が読めなくても何も困ることはない。


 ここの人たちは子供も含め、みんながそれぞれ忙しく何かをしている。

 見る限り、私みたいに何もせずに一日が過ぎていくという生活を送っている人はいない。

 と、言うことは


 『働かざるものは食うべからず』


 能無しのただ飯ぐらいの役立たずにだけはなりたくない。


 
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