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「その昔、この大陸は精霊王の怒りをかい、天が荒れ、地が割れ、闇の気に満ちてしまった時があったそうです。作物が枯れ果て、人々は生きる手立てなくして絶望を感じ、また、はやり病が蔓延して次々と民が倒れていく事に悲しんだ当時の王は、一人森の奥に入って三日三晩休むことなく天に祈りを捧げ続けました。その王の自分の命をも捧げようとする姿に民も心打たれ、みな王と同じように天に祈りを捧げたようです。王と民との願いが一つになり、天に捧げられた時、天より光の剣が地につきささるかのように一筋に光が伸び、地上に一人のまだあどけない黒髪の少女が現れました」
「へ~~」
どこから突っ込んだらいいのかわからず、思わず気のない返事になってしまったが、ジークさんは気にせずに続けてくれた。
「その少女はこの国の惨劇に心を痛め、この国のために一緒に祈りを捧げてくれたそうです。その少女の願う姿はまるで女神のようで、身体からは光が溢れ、一瞬でこの大陸全土を覆ったそうです。その光が晴れた時、そこはまるで違った国のように、花が咲き誇り、緑豊かでまるで天上のようになったそうです。この国を救ってくれた少女を王は涙を流しながら感謝を伝え、女神と呼びました。民からも崇められ、そのままこの国に残り、その後もこの国を救ってくれたそうです。まあ、今では神話のような話ですけどね。その後もこの国にはあなたのように時々異世界から黒髪の少女が現れ、その度にこの国を豊かに導いてくれているのも事実です」
「ほ――。すごい話ですね。私のいた国ならまるで絵空物語のような話に思えるけれど、この国なら現に魔法もあるし、事実として語り継がれている話なんでしょうね」
「さあ、どうでしょう。語り継がれる話は大体、真実が五割といったところでしょうかね」
「……」
そのアバウトさ、どうなんでしょう。
ジークさん、あなたとても生真面目そうに見えるのですが、意外に大雑把なんですか?
今私達は、図書室で何冊かの本を広げながら、ジークさんにこの国の歴史を教えてもらっています。
まだこの国の言葉が読めない私は、ジークさんに読んでもらいながら少しずつお勉強をしています。
少しずつ書いて覚えようとは思っているのですが……。
なかなか難しいものですね。
どうしても、開始五分で眠たくなってしまうのです。
「ユナさま、次はこのページを読んでみましょうか」
そういって教えてくれるジークさんは今日は眼鏡を掛けていてなんだかインテリイケメンみたいでかっこいい。
普段かけていないのに時々眼鏡を掛けるそのギャップ萌えとか私、大好物です。
ヤバイ、鼻血吹きそう……。
直視すると変な妄想が広がりそうなので、勉強に集中したいと思います。
異世界から現れた女神か。
私がこの国に現れたことに対し、サボナ村で救済の女神みたいに思われたのは、きっとこの語り継がれている昔話があるからだろう。
普通ならば突然現れた得体のしれない人に対し、あんなに好意的に接してくれるのはどう考えたっておかしい。
間者とか疑われて牢獄域行きでもおかしくないと思う。
そう考えると、この国に落ちてきて運がよかったかな。
ジークさんが次のページを読んでくれているが全く聞こえず、考えに没頭する。
『祈り』 何を祈るんだろう。
祈るだけで世界が変わるなら私だって毎日祈りたい。
美人になりたい。
モデルみたいな体形になりたい。
お金持ちになりたい。
彼氏が欲しい……
だとかね。
でもきっとこんな俗な願いごとは、神様は叶えてくれないだろう……。
初代の女神さまはどんな思いで祈りを捧げたのかな。
突然荒れ果てた知らない世界に一人ぼっちで連れてこられて、女神だと縋られて。
並の精神じゃ無理だろうな……。
自分の生まれ育った家族を捨て、友を捨て、国を捨て、新しい世界で生きていくのって相当な覚悟がいるはず。
(私だったら、どうするんだろう)
自分に迫る選択は逃げ道なんかなく、本当は一択しかないとはわかっているけれど、まだ絶対的な覚悟が出来ていない。
幸せ一杯とまではいかないけれど、それなりに幸せに暮らしていた家族。
時々くだらないことで朝まで語り合った友人。
仕事でミスした時にはお互い残業して助け合った同僚。
一気に環境が変わってまだ踏ん切りがつかない私。
なぜ、私なんですか。
突然説明もなく連れてきた神様。
恨みますよ……。
「へ~~」
どこから突っ込んだらいいのかわからず、思わず気のない返事になってしまったが、ジークさんは気にせずに続けてくれた。
「その少女はこの国の惨劇に心を痛め、この国のために一緒に祈りを捧げてくれたそうです。その少女の願う姿はまるで女神のようで、身体からは光が溢れ、一瞬でこの大陸全土を覆ったそうです。その光が晴れた時、そこはまるで違った国のように、花が咲き誇り、緑豊かでまるで天上のようになったそうです。この国を救ってくれた少女を王は涙を流しながら感謝を伝え、女神と呼びました。民からも崇められ、そのままこの国に残り、その後もこの国を救ってくれたそうです。まあ、今では神話のような話ですけどね。その後もこの国にはあなたのように時々異世界から黒髪の少女が現れ、その度にこの国を豊かに導いてくれているのも事実です」
「ほ――。すごい話ですね。私のいた国ならまるで絵空物語のような話に思えるけれど、この国なら現に魔法もあるし、事実として語り継がれている話なんでしょうね」
「さあ、どうでしょう。語り継がれる話は大体、真実が五割といったところでしょうかね」
「……」
そのアバウトさ、どうなんでしょう。
ジークさん、あなたとても生真面目そうに見えるのですが、意外に大雑把なんですか?
今私達は、図書室で何冊かの本を広げながら、ジークさんにこの国の歴史を教えてもらっています。
まだこの国の言葉が読めない私は、ジークさんに読んでもらいながら少しずつお勉強をしています。
少しずつ書いて覚えようとは思っているのですが……。
なかなか難しいものですね。
どうしても、開始五分で眠たくなってしまうのです。
「ユナさま、次はこのページを読んでみましょうか」
そういって教えてくれるジークさんは今日は眼鏡を掛けていてなんだかインテリイケメンみたいでかっこいい。
普段かけていないのに時々眼鏡を掛けるそのギャップ萌えとか私、大好物です。
ヤバイ、鼻血吹きそう……。
直視すると変な妄想が広がりそうなので、勉強に集中したいと思います。
異世界から現れた女神か。
私がこの国に現れたことに対し、サボナ村で救済の女神みたいに思われたのは、きっとこの語り継がれている昔話があるからだろう。
普通ならば突然現れた得体のしれない人に対し、あんなに好意的に接してくれるのはどう考えたっておかしい。
間者とか疑われて牢獄域行きでもおかしくないと思う。
そう考えると、この国に落ちてきて運がよかったかな。
ジークさんが次のページを読んでくれているが全く聞こえず、考えに没頭する。
『祈り』 何を祈るんだろう。
祈るだけで世界が変わるなら私だって毎日祈りたい。
美人になりたい。
モデルみたいな体形になりたい。
お金持ちになりたい。
彼氏が欲しい……
だとかね。
でもきっとこんな俗な願いごとは、神様は叶えてくれないだろう……。
初代の女神さまはどんな思いで祈りを捧げたのかな。
突然荒れ果てた知らない世界に一人ぼっちで連れてこられて、女神だと縋られて。
並の精神じゃ無理だろうな……。
自分の生まれ育った家族を捨て、友を捨て、国を捨て、新しい世界で生きていくのって相当な覚悟がいるはず。
(私だったら、どうするんだろう)
自分に迫る選択は逃げ道なんかなく、本当は一択しかないとはわかっているけれど、まだ絶対的な覚悟が出来ていない。
幸せ一杯とまではいかないけれど、それなりに幸せに暮らしていた家族。
時々くだらないことで朝まで語り合った友人。
仕事でミスした時にはお互い残業して助け合った同僚。
一気に環境が変わってまだ踏ん切りがつかない私。
なぜ、私なんですか。
突然説明もなく連れてきた神様。
恨みますよ……。
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