その花びらが光るとき

もちごめ

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ユナという少女は”この世界にようやく現れた女神” としての認識しか最初はなかった。

 小柄な少女で、髪の色瞳の色、身体つきも平凡。

 しかし瞳の中に宿す色は、その辺の令嬢たちからはなかなか見られない優しさと弱さと強さも兼ね備えた色を宿していた。

 その瞳にはほかにどんな色を宿すのかひどく興味が湧いたのを覚えている。
 わざとからかって恥ずかしさに潤む瞳を見ればひどく満足したのを思いだし、そんな自分に苦笑する。

 手の中で恥ずかしさに震える姿は小動物のようでそんな姿もかわいいと思った。
 そして自分でも未だはっきりとは名前のつかないこの感情を知られたくなくて、つい素っ気なく振る舞ったのは子供っぽかったと思う。


 だけど、彼女の前ではいつだって冷静ではいられなくなってしまうから仕方がない。


 そんな彼女が女神としての役割を果たそうと必死に頑張ってくれそして倒れた時はこのまま消えてしまうのではないかとひどく焦った。
 そこにいるという存在を確かめるために強く掻き抱いたがあまりにも体が冷たく、自分の体温を分け与えることで彼女がここに残ってくれるのならいくらでもあげたいと神に願った。



 そしてつぎにバカな第三王子がおこした事件では、怒りのあまりこの王宮ごと吹き飛ばしてしまいたいと思った。
 彼女を奪われるのならいっそこの世界なんてなくなってしまえばいいとも。


 助け出したときに自分を見て安心したように笑った顔を見た時には無性に悲しさが込み上げ、自分のほうが泣いてしまいそうになった。
 その顔を見られたくなくて胸に閉じ込めればそのちいさな肩を震わせて静かに泣いた彼女を見て感じた。

 なんて、愛おしいのだろう。
 でも、こんな思いをさせたいわけではない。
 彼女にはいつでも笑っていてほしい。
 


 女神と呼ばれていても普通の人間であり、様々な感情を抱き強さも弱さもある。
 知らない世界に連れてこられて孤独にとらわれる時だってあるだろう。
 それでもいつでも笑顔を絶やさずに笑っている。
 その笑顔を守るためならば何でもするし、憂いもすべて取り除いやりたい。



 この少女を守りたい。その役目は自分だけでありたい。
 そんな自分のどろどろとした感情はむしろ人間らしいともいえるのではないか。

 彼女と出会ってから今まで自分の知りえなかった感情を知ることとなり、日々目まぐるしく過ぎていく。
 次はどんな感情を自分にもたらしてくれるのか。


 そして、夢を抱く。

 彼女の半身でありたい。
 彼女の半身をもらいたい。



 



 見上げると漆黒の夜空に浮かぶ赤と白の二極の星が、この先の二人の運命を導くかのようにお互いを照らし合い消えることなく輝いていた。
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