くすぐりマインドフルネス

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くすぐったささえ、師匠の愛

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絹の修行着が、沙良の全身をやさしく包んでいた。
それは肌に沿って滑るたびに、くすぐったさを誘う衣――
いや、くすぐりに身を委ねるために、あえてそう織られた布。

「…覚悟は、あるのですね」

師範代の声は柔らかかった。
沙良は黙ってうなずき、四肢を静かに拘束の中へと差し出す。
その動作には、もはや迷いはなかった。

床に仰向けに寝かされた沙良の手足は、動かぬように固定されている。
不自由とともに、内面が静まり返るような錯覚があった。
心もまた、裸にされてゆくようだった。

そして――

最初に触れたのは、足の裏。
指先が、ほとんど風のように、柔らかくなぞる。
沙良の足が一瞬、ぴくりと反応する。
それでも彼女は、瞑目したまま耐える。

だが、そのくすぐりは止まることなく、むしろ徐々に広がっていった。
足の指の間、甲、かかと、足首――
そしてその指がふくらはぎへ、ひざ裏へ、ももの内側へと忍び寄るたび、沙良の息が、ほんのわずかに乱れ始める。

(これが…本当の“試練”)

胸元からは、ひときわ細やかな指先がのぼってきた。
わき腹へ――優しく、しかし執拗に、くすぐりが潜り込む。

「んっ…ふ、ふふ…っ、く…!」

唇を噛むようにして堪える沙良。
だが、声は洩れる。
その笑いは、まぎれもなく、魂が震えた証だった。

師範代は止めなかった。
決して、止めなかった。

くすぐりは広がる。
肋骨の間、鎖骨の下、首筋、耳の裏――
肌の薄いところほど、声にならない笑いが弾けた。

それでも、沙良は逃げなかった。
いや、逃げられなかったのではなく、“逃げなかった”。
そこにある愛を知っていたからだ。

「ひっ、ふ、くっ、あぁ…も、もう……っ…だめ…だって、わかってて…」

絹の修行着の上からなぞる、師範代の指は、もう一度足元へ戻った。
同時に、腰の脇、肋骨の下、肩甲骨の周囲まで、全身が同時に攻められる。

そのとき――

「ふあああぁぁっっ!!!」

沙良は声を限りに笑い、泣いた。
涙がこぼれるほどに笑う。
けれど、その表情は、幸せそのものだった。

全身をくすぐられることで、彼女の内なるしがらみは、ひとつ、またひとつと剥がれていった。
羞恥も、過去のトラウマも、幼いころに閉ざした感情も、笑いと涙の中に溶けて消えた。

そしてようやく、くすぐりの嵐が収まるとき――
沙良の頬には涙が伝い、その瞳には、何も濁りのない透明な静けさが宿っていた。

「……師範代。……ありがとう、ございました」

その声は、小さく、震えて、けれど凛としていた。
彼女の修行は果たされたのだ。
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