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自らを罰するためにくすぐられます
しおりを挟む「師範代……お願いがあります」
沙良の声は震えていたが、その瞳には確かな決意が宿っていた。
「私は……もう一度、くすぐりを……でも今度は、静かになろうとなんて、しません。
徹底的に、乱れて、笑って、壊れて……それでも、最後まで耐えてみせたい。
逃げずに、全部受け止めたいんです――自分の弱さを」
師範代は、しばし沈黙した後、ゆっくりと頷いた。
その瞳は、優しさと共に、敬意に似た光を湛えていた。
「よろしい。あなたの覚悟を、私の両手で確かに受けとめましょう」
――
その夜。修行堂には、蝋燭の柔らかな灯りだけが揺れていた。
沙良は再び、修行着に身を包み、仰向けに寝かされていた。
両手は絹の帯で天井の梁から吊られ、足首も両脇の柱に固定されている。
身体の輪郭をなぞるような滑らかな絹布は、彼女の肌を絶えずくすぐっていた。
だが今夜、彼女は逃げるつもりはなかった。
叫んでも、泣いても、笑っても――最後まで、耐えきってみせる。
「では、始めましょう。
あなたが、自らの“弱さ”を愛するために――」
師範代の指先が、まずは足の裏へと伸びた。
右足の土踏まず。左足の親指のつけ根。
同時に、そして異なるリズムでくすぐりが舞い降りる。
「んくっ……あっ、あははっ……やっぱりっ、だめ、くすぐったっ……くひゃあっ……!」
笑い声が、最初から激しく爆ぜる。
それでも、沙良は耐える。動けないまま、笑いながら、ぐちゃぐちゃになりながら。
足の指の間に、するりと指が這う。
それに合わせて、絹の修行着の裾がふわりと足首までめくられ、ふくらはぎの裏が露わになる。
そこへ舌のように柔らかい筆致が、左右交互に――
「ひゃはっ、あはっ、だめぇ、そこ、うっ、あぁぁっ……っはっ、ひぃぃぃっ……!!」
身体がビクビクと震え、絹の衣擦れさえも刺激に変わる。
汗が髪の生え際を伝い、絹布が肌に貼りついて、むしろ敏感さを倍加させてゆく。
「あなたの“乱れ”は、逃げではない。
己の弱さを抱きしめ、愛するための――覚悟です」
師範代の言葉とともに、今度は足の甲へ、複数の指先が舞い降りる。
その一方で、ふとももに沿ってくすぐりが這い上がる。
「ひゃぁぁっ……っ、ふふっ、やだっ、そこもぉっ……っ! いやぁっ……っ!!
……あ、はっ、うっ、くすぐっ……、でも、やめないでぇ……!!」
息をするのもやっとだった。
笑いの涙がこぼれ、喉はからからに乾いていく。
なのに、心は――満ちていた。
壊れかけた心と身体の中で、最後に残るのは、
「自分で自分を受け入れる」という、ただそれだけの灯だった。
もう、静かに耐える必要はない。
この乱れも、涙も、声も、すべては、自分を知るための道。
「……ありがとう……ございます……師範代……」
終わった後。
師範代の胸に抱かれて、沙良は力なく微笑んだ。
笑い疲れ、泣き疲れ、すべてをさらけ出したその姿は――
まるで、洗い清められた魂そのもののように、美しかった。
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