執事と貴婦人に、くすぐられて悦ぶ彼女

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貴婦人は令嬢の足に口付ける

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夜の館に、雨の音が静かに降り注ぐ。
その雨音に紛れて、綾乃の寝室では、くすぐりの密やかな対決が始まろうとしていた。

「私に任せてくださる? 今夜はあなたを、ただ甘やかしたいの」
セシリアが、しっとりとした微笑みを浮かべながら、綾乃の首筋に唇を寄せる。
その手は既に、脇腹の一番柔らかな窪みに触れ、優しく螺旋を描いていた。

「セシリア様、少々“独占”が過ぎるのでは?」
背後から、執事が静かに綾乃の手首を取り、ふたたび腕を頭上に掲げさせる。

「綾乃様のお気に入りは、この脇の奥のくぼみ……ここでしょう」

「ふひゃっ!? そ、そこぉぉ……やあっ、くすぐっ、くすぐったいぃっ!!」

綾乃の口元から、笑い声がこぼれる。

その姿は、まるでふたりの“技”を受けて乱れる妖精のようだった。

だが――

その笑顔を、セシリアは見逃さなかった。

(……今の笑み。彼に向けて?)

彼女の指が、綾乃の足の甲に触れる。

「そんなに笑うなんて……今日は、もっと違うくすぐりを教えて差し上げるわ」

そう囁くと、セシリアは綾乃の足指の付け根に唇を落とし、
柔らかく吸いつくように、舌先でなぞった。

「やっ、あっ……! せ、セシリアさん……くすぐった、舌でなんて……そんな……!」

くすぐりというにはあまりに艶めかしい愛撫。
だが、それがまた綾乃の快感を深め、混乱させていく。

執事はその様子を見つめ、微笑を浮かべる。

「――これは、譲れませんな」

彼は綾乃の反対の足に跪き、足の裏の中心に親指をあて、
小さく円を描きながら、絶妙なリズムで責める。

「くすぐったさの芯まで、届いていますか? 綾乃様……あなたの“本当”を暴いてさしあげましょう」

「ひあっ! やっ、ちょっと……左右……だめっ、ふたりとも、しないでぇっ、くすぐったいのぉっ!」

左右の足裏と足指、そして腋と脇腹。
同時に、それぞれ違う技と想いで愛撫され、
綾乃は何が快感で、何が愛なのか、区別がつかなくなっていく。



だが、その夜。

ふたりの指先がふと止まる。

綾乃は、肩で息をしながら見上げた。
セシリアの瞳に、微かな悲しみと怒りが浮かんでいる。

「綾乃……あなた、本当にわかっているのかしら?
私たち、ただ笑わせたいだけじゃないのよ」

「セシリア様……」

「私はね、くすぐるたびに、あなたの中の“私じゃない時間”に触れる気がするの」
「その笑いは、彼に向いているの? それとも……私を見てくれているの?」

綾乃は目を伏せ、言葉を探す。

執事は、一歩引いたところで、ただ静かに見守っていた。

だが次の瞬間、セシリアが言った。

「私、今日はひとりでくすぐりたい」

綾乃も執事も、目を見開いた。

「彼の指が入らないくすぐりを、わたくしだけが知っている場所を……触れてみせるわ」

そして、セシリアは綾乃の胸元のリボンに手をかけ、
背後からそっと囁いた。

「あなたを笑わせるのは、私よ――私の愛だけが、あなたを本当に笑わせられるのよ」

雨音が、さらに激しく窓を叩いた。

くすぐりという名の愛が、嫉妬という焔を帯びて――
今宵、決して逃れられぬ選択の夜を迎える。
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