執事と貴婦人に、くすぐられて悦ぶ彼女

文字の大きさ
13 / 35

執事も嫉妬する

しおりを挟む
扉の向こう、嗚咽にも似た笑い声が聞こえていた。
それは綾乃様の声――笑いながら、喘ぎ、切なさすら滲む笑いだった。

執事の指先が、無意識に震えていた。

(私は、彼女のために在るべき者……主の幸福を、誰よりも優先する忠実な影……)

そう、幾度も己に言い聞かせてきた。
だが――その夜、扉一枚を隔てた先で交わされる“くすぐりという愛”の交歓は、
彼の中で眠っていた“男”を目覚めさせたのだった。

翌朝。
綾乃様は、まるで恋に酔った乙女のように、頬を紅潮させて食堂へ現れた。
衣擦れの音さえ艶めかしく感じられるほど、柔らかくほどけたその雰囲気に、
執事はわずかに眼差しを伏せた。

「……昨晩は、よくお眠りになれましたか?」

問いかけた声には、確かに微かな棘があった。

「ええ……セシリアさんが、とても優しくて……あんなくすぐり、初めてでした」

その言葉に、銀のトレーの上のカップがわずかに震えた。

「――それは、何よりでございます」

微笑むその横顔は、相変わらず穏やかだった。
だが、内に潜む焔はもう隠せなかった。

そして、その夜。

綾乃が部屋で眠りにつこうとしたとき、
執事は無言で彼女の前に跪いた。

「……あ、あの……?」

「どうか、私にも……今宵はくすぐりという愛を差し上げる許しを」

彼の声音は静かだったが、どこか狂おしいほどの決意に満ちていた。
そのまま、ベッドに綾乃をいざない、ゆっくりと彼女の足元へと回り込む。

「あなたの身体は、セシリア様に満たされ……今、私は“執事”として、試されているのでしょう」

そう呟くと、彼はそっと綾乃の足の甲に口づけた。
そして――

「まずは、忠誠のくすぐりから始めましょう。足指の間……こうして一本ずつ、愛でるのです」

「ひゃうぅっ!? やっ……! ……なんで、そんな……!」

「あなたの足は、歩むためのもの。
でも私にとっては、仕える価値のある、神聖な部位なのです。
だから、こうして……爪先から甲へ、敬いながらくすぐります」

彼の指は、鋭くも繊細。
セシリアの官能的なくすぐりとは違い、彼の愛は、隅々まで知り尽くした献身の技巧だった。

「次は……脇腹。私だけが知る、あなたの“逃げ場”をなくす、くすぐりです」

「だめぇぇぇぇっっ!! あぁっっ……そこっ、そこはぁっ……っっ!」

「笑ってください、綾乃様。笑いは、私にとって命令よりも尊い――その証です」

そして、最後に。

「……脇の下。
ここだけは……他の誰にも、触れさせたくなかった」

そう囁くと、彼はそっと綾乃の両腕を持ち上げ、額を彼女の脇に押し当てた。

「私だけの場所に……どうか、なってください……」

くすぐりは、やがて愛撫に変わり、愛撫は願いとなって――

「んふぁぁっ……だ、だめ……それ以上、されたら……私、壊れちゃうっ……!」

「ならば、壊してしまいたい。誰のものにもならないあなたを……私だけのものに」

執事のくすぐりは、今や支配と愛欲のはざまを揺れていた。
それは、セシリアにも真似できぬ、男の欲望と忠誠が交錯する――独占のくすぐりだった。

その夜、綾乃は――

愛され、笑いながらも、涙を浮かべていた。
ふたりの愛の狭間で揺れながら、
自分という存在が、誰かの“くすぐり”によってしか立てないことを、知り始めていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

乳首当てゲーム

はこスミレ
恋愛
会社の同僚に、思わず口に出た「乳首当てゲームしたい」という独り言を聞かれた話。

ブラック企業を退職したら、極上マッサージに蕩ける日々が待ってました。

イセヤ レキ
恋愛
ブラック企業に勤める赤羽(あかばね)陽葵(ひまり)は、ある夜、退職を決意する。 きっかけは、雑居ビルのとあるマッサージ店。 そのマッサージ店の恰幅が良く朗らかな女性オーナーに新たな職場を紹介されるが、そこには無口で無表情な男の店長がいて……? ※ストーリー構成上、導入部だけシリアスです。 ※他サイトにも掲載しています。

【魔法少女の性事情・1】恥ずかしがり屋の魔法少女16歳が肉欲に溺れる話

TEKKON
恋愛
きっとルンルンに怒られちゃうけど、頑張って大幹部を倒したんだもん。今日は変身したままHしても、良いよね?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...