くすぐり執事とくすぐら令嬢

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くすぐる執事⑨ ― 這い上がる指先、ほどけてゆく心 ―

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ベッドの上、綾乃はうつ伏せに横たわり、
やや開いた足の間に、礼司の気配があった。
しっとりと汗ばんだ肌に、微かな風が吹いたような感覚。
くすぐりに笑わされ尽くした身体は、いま――甘く脆く、無防備。

礼司の指先が、再び足裏に触れる。

「ふふ……っ、ま……た……?」

つま先をなぞる感触はすでに記憶と快感の中に刷り込まれていて、
触れられただけで、くすぐったさが込み上げてくる。

だが、今度のくすぐりは、やや深く、そして上へ――

土踏まずから踵をゆっくりくすぐった後、
礼司はそのまま足首からふくらはぎへと、くすぐりを“這わせていく”。

「……えっ……ちょっ、まって、そこ……違う……!」

くすぐったい。でも、さっきまでとは“違う”。
身体の中を、妙な熱が這い上がってくる。
笑いではなく、戸惑いと緊張が混じるくすぐったさ。

礼司は、ふくらはぎの内側を丁寧に撫で上げると、
今度は膝裏に小さなブラシの先をそっとあてがい、円を描くように

「ひゃっ……はぁっ……あっ、そこっ、なんか、ぞわっ……って、して……っ」

くすぐったさに笑うより、思わず足を閉じたくなるような、くすぐり。

綾乃の心が揺れる。
これは、ただのくすぐりじゃない――
その奥に、なにか違うものが、潜んでいる。

礼司は微笑を含みながら、膝裏から太ももの裏へと指を滑らせていく。
肌に触れないほどの距離感で、手の甲の気配だけを近づけるような撫で方。

「綾乃様……ここは……まだくすぐったい、で済みますか?」

「……ふ、あ……っ、そ……そんな聞き方……ずるい……っ」

くすぐったさが、恥じらいへと変わっていく。
どこか濡れたような視界の中、綾乃は自分の太ももが震えていることに気づいた。

そのとき――

「こちょ、こちょ……」

礼司の指が、太ももの内側へ――まるで忍び込むように、
ゆっくりと、軽く、しかし確かに“鼠径部の手前”まで近づいていく。

「っ……ふあああっ、だめぇ……そこ……っ、それは……っ」

笑えない。声が震える。
羞恥と期待の境界が、ゆっくりと崩れていく。

礼司の声が低く響いた。

「“笑わせるくすぐり”ではありません。
これは……“あなたの奥を、そっと揺さぶる”くすぐりです。
心と身体の境目を、ゆっくり、優しく、溶かしていく――そうでしょう?」

綾乃は、答えられなかった。
ただ、太ももを震わせながら、静かに息を吸い込み、目を閉じた。

礼司の指が、鼠径部のすぐ近くで止まり――
そこで、そっと手を引いた。

「今日は……ここまでにしておきましょう。
その続きは、綾乃様の“本当の望み”が、聞こえてきたときに」

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