不死の魔法使いは鍵をにぎる

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青年と情報交換

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青年を振り切ろうという考えは一旦捨てて、図書館の談話スペースへと移った。
椅子に腰かけて口を開く。



「とりあえず先に教えてもらおうか」



こいつを信頼するわけではない。
見ず知らずの私に執着する理由もわからないし、得たいものは先に得ておくべきだ。





「高圧的だなあ。もうちょっと態度軟化させようよ」

「無駄口はいい。早く話せ」




やれやれとでも言いたげに息をついてから言葉を紡ぐ。
いちいち癪に触る奴だ。



「簡単に言うとね、魔具を使う方法と四肢そのものを大きくする方法があるんだよ」


王都と西の地域に伝わる方法だったかな、と付け加えて私を見る。





四肢そのものを大きくするというのはつまり、足を巨大化させて脚力を得たりする、ということだろうか。

試しに両足を約2倍に巨大化させてその場で跳び跳ねてみる。
通常時の1.5倍といったところか。




「…効率悪くないか」





巨大化する魔力に対して得られる効果が小さい。
これは他の身体強化と組み合わせても微々たる差違になるだろう。

魔力消費量から考えると組み合わせない方が正解かもしれない。






「西は魔法研究が盛んじゃないみたい。原始的というか、効率悪い方法が多そうだったからね」

「そうか。魔具はどうするんだ」







王都は魔法研究が盛んなはずだ。
以前訪れたときには魔具を見かけなかったから、研究が進んで新しくできた物なのだろう。 





「魔物の心臓を素材にして、魔方陣を描いて作るんだよ。魔物の種類によって相性の良し悪しもあるみたいだよ」




魔物の心臓か。

相性はわからないが、弱い魔物より強い魔物の心臓を用いる方がいいのは確実だろう。
魔王によって魔物が強大になっている今、好都合ではなかろうか。





「魔方陣はどう描くんだ」


今すぐにでも魔物狩りに行きたい心境で青年に聞くと、笑みが返ってきた。




「質問責めは不公平だと思わないか?ボクにも質問させてよ」





一番知りたい情報の前で歯止めがかかる。

ちっ、最後まで答えるようなことはしないか。





「何が聞きたい」

「お兄さんは魔法をどこで習得した?」

「…学校に決まってるだろう」





不可解な答えを聞いたかのように青年は丸い目を瞬かせた。



私は一般的で極自然な答えを返したはずだ。
よほど田舎じゃない限りはどこにだって学校は設けられている。

大抵の人間が魔力を持っているのだ。
魔力を最低限扱えるように学校で学ばないと、ちゃんとした職場を得ることは難しい。
家の仕事を継いだり、学校のない田舎で生活する者以外は必須である。





「そう。そっか。何処の学校?この町の学校ではないでしょ?」

「…魔法知識の交換じゃなかったのか?内容がずれているぞ」





いまいち納得していない様子で話を続けようとしてきたが制止した。
私自身については答える気はない。





「ごめんごめん。じゃあ質問を変えるね。お兄さんは身体強化をどう行ってる?」

「筋肉に魔力を纏わせている」

「コツは?魔力をどう動かすの?コツ教えてよ」





一瞬説明する言葉を探して、眉をひそめる。

感覚派なのだ私は。
説明するための言葉が見つからない。





「筋肉に、こう、纏わせるんだよ」





言いながら右腕で魔力を練ってみせるも、説明になってないよと笑われた。
直後、青年の視線が腕に釘付けになる。







「…腕に何か、掘ってる?」







魔力に反応して淡く発光していた右腕。
さっと魔力を散開させて右腕を引っ込める。

衣服で隠れているが、発光により掘ってある魔方陣が透けて見えたのだろうか。





「右腕見せてくれないか?魔力に反応してたよね。なら魔方陣か?魔方陣を掘ってる人初めて見たよ。自分で入れたの?人に入れてもらったのか?」





くそっ、失敗した。
よく動く野郎の口に舌打ちをすると、即座に反応が返ってくる。





「舌打ちはするものじゃないよ?失礼だよ。大人なんだから気をつけようよ」

「知ったことか」



がたりと音をたてて勢いよく立ち上がり、その場に背を向けた。




大事な情報はもう聞けている。
あとは自分で調べればいい。

幾ら時間がかかったとしても私には関係ないのだから。





身体強化で疾走するよりも速く歩き、図書館の結界外へ出る。
後方から聞こえてくる私を呼び止めようとする声は、転移と共にぷつりと途絶えた。
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