不死の魔法使いは鍵をにぎる

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兵士からの誘い

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ユーゲンは長く話しこんでいたらしい。
私よりも遅く起きた上に、寝たりないように欠伸をしている。



「私は先に図書館へ行っているぞ」

「わかった。用意したらボクもいくよ」



再び大きな欠伸をしてから、ユーゲンは寝具から起き上がった。







この街の図書館は思ったとおりに満足できる蔵書だった。
これまであまり見掛けなかった、魔具についての書物も置いてある。



しばらくしてからユーゲンもやって来た。
私は主に魔法関連の書物を読んでいるが、ユーゲンはあらゆる分野の書物をあさっているようである。

今日は人類史の方へ向かったようだ。





それぞれで昼を取り、私はまた図書館へと戻り書物をあさる。
日が暮れてきたころ、ユーゲンが私のそばにやってきた。





「ゲルハルト、夜は外に食べに行こう。昨日の兵士がご馳走してくれるって」

「会ってきたのか」

「うん。顔だしてきた。ちょっとした話題になってたよ。ボクたちのこと」






遅めの時間に昼をとり、そのまま兵士のところへ行ったユーゲン。
顔を出すやいなや「話題の若者か」と取り囲まれたらしい。


この辺でもまだ褐色肌はめずらしいからな。
すぐに個人が特定されてしまう。




自分たち兵士が手間取っていた魔物を褐色肌の青年があっさりとしとめた。
あの若者は相当戦い慣れている。

そう盛り上がっているところに本人が顔を出し、大いに沸き立ったらしい。


ご馳走すると声をかけてきた兵士以外にも同じ卓に着きたがり、人数がだいぶ増えたのだとか。
面倒だな。
兵士たちはユーゲン一人の手柄だと捕らえているようだ。




「お前一人で行けばいいだろう」



私を巻き込むな。




「でもボク一人の成果じゃないもの。ゲルハルトも受け取る権利があるよ。それに魔法について聴きたい人もいるだろうし」

「それが面倒なんだ」




黙って食事していられるなら甘んじて行ってやってもいい。
しかし兵士から魔法に関する話題を振られたら、私のしたことなのだから聞くなら私に、とユーゲンは言うだろう。
そ知らぬやつらと会話などしていられるか。






呆れたように吐かれるユーゲンのため息。




「排他的なのよくないよ。もうちょっと交流しようよ。思わぬ収穫があるものだよ?」

「お前が聞き出せばいいだろう」

「ボクはボクの聞きたいことを聞くよ。伝聞じゃ変質していくものだしね。自分で聞いたほうがいいよ」




もっともかつ面倒なことを言う。

舌打ちをしたら「それもよくないよゲルハルト」と即座に言葉が飛んできた。
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