不死の魔法使いは鍵をにぎる

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呪いの解き方

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弱いと言っても魔物は魔物である。
力も魔法技術も何もかも未熟な子供を放任するのは殺人行為だと思うのだが。

引っかかったものの、今知りたいのはそこではない。





「呪いの解き方を教えてくれないか」



一番重要なことを聞くと、聞かれたことが酷く不可解であるというように、眉根を寄せられた。



「解き方を知らないのか?」

「私は解呪方法を知りたくて世界を調べたが、この村以外では見つからなかった。世の人間は呪いを解けないのが普通だ。術者を倒して対処している」

「そうなのか…」



驚きつつも、すんなりと解呪方法を教えてくれた。









手順は簡単だ。



呪いは、術者の魔力が体内に入り込んで効力を発揮する。
それを取り除いてしまえばいい。

魔物の魔力は人間のものとは異質だからすぐに見つけられる、という話だった。
人間に呪われた場合はも同様に取り除けばいいのだが、術者の魔力を探す難易度が上がるようだ。



子供たちに習得させるときには、ごくごく簡単な呪いをかけて練習させるそうだが、そこまで付き合わせる時間はない。

解呪方法を伝えると、仕事があるからと去ってしまった。




試しに双子に呪えるかと聞いてみたが、


「できないよ」

「やれないよ」


と案の定な答えをもらった。



バウムもできないらしく、森を彷徨って魔物に呪われるしか方法がない。




危険地帯だと忌避されている西地域だが、実際に足を踏み入れると想定よりも魔物に遭遇する率は低い。 
数分歩けば魔物を見掛ける頻度かと想定していたが、1、2時間歩いて一体見つけるかどうか。

普通の人間からすればそれでも酷く危険な状況ではある。
しかし魔物に遭遇したい今からすると、酷く面倒だ。



それでもどうにか魔物を見つけ、呪いにわざとかけられ、魔物は倒さずにそのまま逃がした。

呪いにかけられたときの、独特の気持ち悪さを感じる。
なぜこのような感覚に陥るのか今までわからなかったが、解呪方法を知った今ならわかる。



体に異物が入り込んでいるからだ。
ようは拒否反応を起こしているのだろう。






さて、体に入り込んだ魔物の魔力を取り出せば解呪は完了する。
体内を巡る自分の魔力を総動員して探ってみるが、これがなかなか難しい。

魔力を対外に出して探るというのなら、魔法を習いだした初期段階で練習するものだ。
何の苦も無く行える。

しかしこれを体内で行うとなると、途端に難易度が上がる。



痺れて間隔のない指を必死に動かしているかのようなもどかしさ。
使ったことのない筋肉を動かそうとしているような感覚。




そういえば双子は自分で解呪はしていなかった。
誰かの呪いを解く方が簡単なのかもしれない。

しかしすでに呪われてしまった後であり、練習に付き合ってもらう相手もいない。




数日格闘して、ようやく呪いを解くことができた。


双子の親が言う通り、体内を探る間隔さえつかめれば魔物の魔力はとても簡単に見つけられた。

例えるならば、人間の魔力は水などの液体であり、魔物の魔力は砂などの粒子に似た質感。
全くの別物だ。




見つけることさえできれば、後は魔力を練るのと同じ要領で解呪できた。

異物である魔力を混ぜこんで自分の魔力を練り、対外へと出す。
通常ならば淡く発光している魔力の塊は、異物のせいで黒ずんでいた。




一度間隔がつかめれば失敗することは無いだろう。




あの村では言葉が話せる段階になったら教えると言っていた。
私で数日かかったのだから、子供に習得させるには早くても数か月、長ければ数年かかるだろうか。

解呪を習得できた頃にはある程度善悪がつき、約束事も守れるように成長しているのだろう。




探しに探していた解呪方法をようやく習得できたわけだが、事態が進展するわけではなかった。



体内の異物は取り除いた。
いくら探してももう体内に異物は見つからない。

それでも尚、私の体は終焉とは無縁であることを感じる。



よくよく思い返してみれば、魔物に呪われたときと魔王に呪われたときとでは、不快感が違った気がする。

魔物に呪われたときは、苦いもの飲み込んだときのような、臭いものを嗅いだときのような、わかりやすく顔をしかめたくなる不快感。

それに比べて魔王の呪いは、漠然とした不快感だった。
なんとなく気持ち悪いような、下に下に引っ張られているような、気分が落ち込むような、何とも言えない不快感。


術者を殺しても解けないことといい、一般的な呪いとは異なっている。
解呪方法も異なると考えた方がよいのだろう。





大きく前に踏み出せたかと思ったが、実際には半歩程度かもしれない。
 
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