不死の魔法使いは鍵をにぎる

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王が記した書物

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シュワーゼが死ぬ前に読んでいたのは、王としての心構えや肝に銘じておくべき教訓が記された資料だった。

大昔の王が、祖父から聞いた高祖父についての話を、自戒とともに後世に伝えるため残された書物。






書物を記した人物の高祖父は晩年、酷く自責の念に駆られていたという。


流されるべきではなかった。
勝手を許してはならなかった。


うわ言のように繰り返し繰り返し口にしていた。










高祖父は初代魔王と対立した王である。

人類と魔物。
長く続く争いの始まりを経験し、人類のためにもがいた王。


民に伝わる偉大で勇敢な王という人物像とは異なり、能力はあれど天才ではない、親しみの持てる普通の人間だった。






高祖父はある部下を信じ切れず、違う部下の意見に流され、また勝手な動きを許してしまったことを後悔していた。


高祖父が命じ、人類の発展に大きく寄与するであろう発明をした部下。
しかしその発明は画期的すぎた。

きちんとした理性の元活用できるのか。
暴走させることは無いのか。

不安に駆られ、人類に害をもたらすと考える者もいた。



高祖父自身も使い道を間違えれば危険であるとは感じたものの、発明した部下を信じていた。

不安はわかる。
しかし間違えないよう慎重に利用していけばいい。







けれどとある部下は高祖父に強く意見する。


もしものことがあったらどうするのですか。
王は民が大事ではないのですか。
あんな危険な発明は無くすべきです。


そうかもしれない。
しかし。






煮え切らない態度の王に、部下は勝手を決意する。
発明者である部下を処罰し追い出したのだ。



なぜ勝手をした。
追い出すことはないだろう。


何を言っているのです。
王も危険だとお考えなのでしょう。
危険なものをそのまま置いておくつもりですか。
民を危険にさらすおつもりですか。
危険なものは排除せねば。
民だけでなく、王ご自身も危険にさらされる可能性もあるのですよ。



高祖父はここで揺らいでしまった。
いや、その前からすでに、反対意見に流されて煮え切らない態度を取ってしまった。


我々が、我々一族が王をお守りします。
王をお守りするためなのです。
ご理解ください。








勝手をした部下は黒色肌だった。
王の周りは黒色肌で固められるようになった。
やがて魔王が立ち、少なくない数の民が犠牲になり、高祖父は不安と恐怖に駆られるようになった。



私のせいで民は犠牲になったのか。
私が間違えなければ争いは生まれなかったのか。



罪悪感に押しつぶされるように、高祖父は理性的な考えができなくなっていった。
決断ができない高祖父に代わり、黒色肌の部下が采配を振るようになる。


王を守るため。
有事にすぐ駆けつけるため。


そう理由を付けて特区を作り、自分たち一族が住まうようになった。
王城に勤める官吏も黒色肌が占めるようになった。
官吏登用の基準は変更され、官吏として働けるのは黒色肌のみに。


確かに魔力量が多い者は黒色肌である割合が大きかったものの、それ以外にも優秀な者は存在した。
しかし登用基準が変更された流れで、黒色肌以外の官吏へ風当りが強くなり、やめる者も増えた。


この事実も高祖父を責め、退位し王としての体面を取り繕う必要のなくなってからは、見る見るやつれていった。

うわ言のように後悔や自責の言を繰り返す高祖父。
その姿を見ていた若き祖父は、心に刻んだ。






王として上の立場に立つ以上、他者の言葉に流されてはいけない。
他者の意見を聞くことは大事だが、勝手は許さず律しなければならない。
正常な判断を下すため、恐怖や不安に囚われてはならない。










祖父は自分の子に教え伝え、孫にも度々言い聞かせる。
孫である大昔の王は、これを書物に記し残すことにした。



文字が普及し、情報を視覚化して残す文化の黎明期だった。
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