不死の魔法使いは鍵をにぎる

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面の旅人との接触

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途中で諦めてヘフテたちを迎えに行くと、面を付けた人物と共にいた。
その人物の周りをウロチョロ駆け回っている。


私とマーツェが戻ってきたのに気づいて、誇らしげに笑ったヘフテ。




「探してた人!見つけたから連れてきた」






傷ついた勇者などを近くの村まで送り届けていた旅人。
面を付けた旅人。



ヘフテの言葉に面の人物がこちらに顔を向ける。




「私を探してたの?」

「うん。そうなんだ。話を聞きたかった。でもごめん。やることあるんだ。時間だから行かないと。一緒に来てくれると嬉しいな。できるか?」




食堂に向かわなければならない。
治癒や修理を希望する者が集まる時間だ。
先にこちらを片付ける必要がある。




「わかった。一緒に行って待ってるねえ」



柔らかい空気を纏った人物である。

面によって、確認できる表情は口元しか無いにも関わらず、威圧感がない。




私たちが治癒や修理の交渉をしている間、面の人物はのんびりと食事を取って待っていた。


時折、周りの客や私たちの様子を眺めている。
嫌な視線ではない、単純に観察しているといった様子だ。

食事を終えたシュグリらに構う場面も見られた。










諸々片付けて面の人物のところへ行く。




「ごめん。待たせたね」



声をかけたマーツェに、面の人物は口端を上げて笑みを返した。


「治癒と修理を仕事にしているの?たくさんの人が来てた。盛況だったねえ」

「ううん。宿代がわりだよ。併設してる宿に泊まってるんだ。払う金がなくてさ。客寄せになるでしょ」

「へえ。考えてるねえ」






ワイセにアンテルとシュグリを先に湯浴みさせてこいと、3人を追い出した。

ヘフテ・ダモンも合わせて4人で面の人物から話を聞く。






「私から何を聞きたいの?」

「面を付けた旅人の話を聞いたんだ。力尽きてたところを送り届けてもらったって。近くの村に着くまで魔物に襲われることもなかったって。あなたのことであってるか?村まで送り届けてたのはどうして?何の目的があったんだ?」

「困っている人を見たら、助けるものじゃないの?特別な意味なんてないよ」




質問の意味がわからないとでも言うように、少し首をかしげながら答えた。


マーツェも似た行動を取る人間である。
魔物に襲われている人や怪我人を見たらすっ飛んでいく。



「そう。そっか。それもそうだね。じゃあ旅の目的は?何か目的があるのか?以前は“気の向くまま”って答えたらしいね。行先を尋ねられたときに」

「うん。行先は常に決まってないねえ。気の向くまま、流れに乗って、あちこち行き来してるの」

「目的地がないってことか?でも旅自体の目的はあるでしょ?魔王が立ってるんだ。魔物は狂暴化してる。そんななか何も理由なく旅に出ないよね?」

「私にとって魔物は障害にならないからねえ。うーん。目的は無くはないけど、こっちも聞いていいかな。その子はどうして面を付けてるの?」





そう言って、面の旅人はダモンに顔を向ける。


「いつもなら断るんだけど、その子が気になってついてきたの。面を付けてる人は今まで見掛けなかったもの。あなたも面を付けてるねえ。どうしてなの?」






私にも話が飛んできた。



警戒しているのか、質問攻めを不快に思ったのか、はたまたそれ以外か。

雰囲気が柔らかすぎて感情が読み取れない。





「私が面を付けてるのは見せられた顔じゃないからだ」

「そうなの。その子も?」

「うん。そうだよ。似た理由」



ダモンが答える前にマーツェが口を挟んだ。



「私たちもなかったよ。面を付けてる人は他に見なかった。だから気になったんだ。どんな人だろうって。行先を決めずに旅してるみたいって聞いたし。余計にね。魔物が障害にならないって言ったね。魔具を持ってるのか?」





この旅人は、魔物に遭遇することなく近くの村まで勇者を送り届けている。

魔王と誓いを交わした現在ならいざ知らず、その前の話だ。
ヘフテ・ダモンが持っていた魔具と同様のものを所持しているはず。

でなければ説明がつかない。



話を切り込んだマーツェ。








「よくわかったねえ。そうなの。魔物を避けられる魔具を持ってるの」




返答はのほほんとしていた。
世間話でもしているかのような態度である。
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