神の眼を持つ少年です。

やまぐちこはる

文字の大きさ
158 / 274

159 次期公爵の片鱗

しおりを挟む
 夏休みが始まる数日前。
 学院ではエメリーズがぱったりと来なくなってしまい、まことしやかに噂が流れ始めた。

「お兄さまが犯罪者になってしまったらしいですわ」
「まあ!いやだわ、そんなご家族がいらっしゃるなんて」

 ロントンが戻るまでの僅かの時間も惜しむように、あちこちで囁く声がする。
トレモルはドレイファスが苛ついていることに気づいて、声をかけた。

「ドル、大丈夫?」
「なんか、こういうのすごくイヤだよ」
「ああ、そうだね。ぼくもだ」

 ギリッと唇を噛み締めていたかと思うと、何かを決意して立ち上がったドレイファスが教壇へと向かった。

「みんな、聞いて!」

 少し高めの声が響き渡り、級友たちの目がドレイファスに向けられる。

「エメリーズが休んでいる理由をみんなが勝手にいろいろいうのはやめよう」
「でもお兄さまが犯罪だなんて」
「エメリーズがそれをやったわけじゃない。そんなことするような子じゃない。わかるよね?いつも一緒に勉強してきたんだから」
「だけど怖いですわ」
「怖い?怖いのはきっとエメリーズのほうだよ!きっとみんなにこう噂されてるって怖がって来られないに違いないよ!考えてもみて。もしみんなの兄上や姉上が事件を起こしてしまったら」
「うちの兄上はそんなことしません!」

 誰かの声があがる。

「エメリーズだってきっとそう信じてたと思うよ・・・。もしもって考えてみてと言ってるだけだ。自分がやったことじゃないのに、みんなに自分までそれをやったように見られるんだ。どう思う?」

 教室の中は静まり返った。

「そんなの悲しい。自分は自分なのにって思う」

 カルルドが答えてくれた。

「家の全員がどんなにがんばっていても、ただ一人でもそういう人が出たら、家の全員がダメだと言われてしまうんだって、だから家族みんながちゃんとしないとダメなんだって、父上から教わったけど。
学院の中で、エメリーズはやっていないことをエメリーズもやったみたいに言うのはやめようよ。つきあいたくないならつきあわなければいい。でも同じクラスにいる限り、そうやってエメリーズの兄上の噂を、エメリーズのことみたいに言うのはやめてほしいんだ」

 教室の外にはロントンが佇んでいた。
入ろうとしたとき、ドレイファスの声が響いて、様子を見ることにしたのだ。

 ─公爵家嫡男は伊達じゃないな─

 ロントンはこの数日クラスに漂うよくない雰囲気に、自分が言おうとしていたことを、拙いながらも自分で考えて発言したドレイファスを好ましく思った。

 ─貴族は。一人の不祥事さえ家の不祥事と蔑まれてしまう。それを理解した上で─

 普段はどちらかというとおっとり構えているドレイファスの正義感に溢れる姿を見て、いずれ公爵家を率いていく器なのだと痛感させられた。
 大きく息を吸い、呼吸を整えて。

「みなさん!」

 扉を開けて、大股でざくざくと教室へと踏み入る。

「フォンブランデイル公爵ご令息、ドレイファス様」

 ロントンは彼なりに敬意をこめ、敢えてこう呼んだ。

「ありがとうございます、あとは私が引き継いでも?」
「はい」

 こくと頷いて自席へ戻るのを待ち、ロントンが話し始めた。

「ドレイファス様が私が考えていたことをすべてお話しくださいましたが、私もエメリーズ様はエメリーズ様。彼自身がしたことではないそれを、彼に負わせることのないようにと考えています。最終日には顔を出してくれるでしょう。その時は噂話は禁止です。いつもどおりに」
「いつもどおりなら、噂話もいつもどおりにしたほうがいいのでは?」

 ロントンは発言した者を睨んだ。

 ─なんと愚かな者なのだ─

「エメリーズ様に対してということです。他のことは構いませんが、真実ではないことに踊らされないように、真実でないことでともだちを貶めることをしないようにと言っています」
「でもエメリーズの兄上が犯罪者なのは真実ではありませんか?」
「違います。真実はまだ明らかではないのです。もし彼の兄上の罪だとしても、エメリーズ様自身の罪ではありません。私のクラスでそのようなことは許しませんよ。いいですね?」

 納得いかない顔をする者もいたが、ロントンは押し切った。ドレイファスやその一派は間違いなく自分の味方だと信じられたので、それも力になった。

 帰り際、ドレイファスがいつもの皆とまとまっているとロントンに呼び止められた。

「ドレイファス様、今日はありがとうございました。エメリーズはともだちとおっしゃられたお姿、大変ご立派でした」

ロントンに褒められると、ドレイファスは褒められたことが不本意のような拗ねた顔をした。

「エメリーズとはいつもどおりでいようと、みんなとも決めています」

 ドレイファスの言葉にシエルドたちが続々と頷くのを見て、公爵家嫡男と側近候補と聞かされている彼らが誰にまとめられ、率いられているのか。
ロントンは特別に優秀なシエルドやカルルドではなく、ドレイファスなのだと気づかされていた。

「気をつけてお帰りください」

 ドレイファスたちが帰っていく後ろ姿を見やりながら、ロントンは次期公爵家も安泰だとなんとなく感じていた。



 ロントンの予想通り、夏休み前日、人目を気にしながらエメリーズが登校してきた。
 馬車の車寄せで偶然ドレイファスとトレモルに出会ったエメリーズは、さっと目を伏せ、歩調を変えて距離を空けようとしたのだが。

「おはようエメリーズ!久しぶり」

 そうドレイファスとトレモルに両脇を挟まれて、困惑した顔を見せた。

「エメリーズ、おはようは?」

 ドレイファスが無言で俯くエメリーズをくすぐる。

「うっわっ、やめっやめてってば」
「だって挨拶してるのに、何も言わないんだもの。おはようは?」
「お、おはよ・・・」
「一緒に教室に行こうよ、ね、トリィ」

 トレモルもエメリーズの腕を取り、エメリーズは逃げられなくなった。

「そうだ!今日帰りの馬車が迎えに来るとき、みんなの分のレッドメルを持ってくるから一個あげるね」

 そう言ってうれしそうにくぷぷと笑うドレイファスを、信じられないものを見たように見つめ、エメリーズが口を開いた。

「あの・・・ドレイファス様はご存知ないのでしょうか?」
「ん?」

 碧い目がにこやかに、小首を傾げたと思うと。

「兄上のことなら聞いたけど」
「えっ!知っていて僕と話して下さるのですか?」

 ドレイファスの碧い目は少し悲しげに、しかしエメリーズをしっかりと見据えて言った。

「・・・エメリーズ、それはエメリーズがやったことではないし。他の誰が君をそういう目で見ても、ぼくらにとって君はただのともだちのエメリーズだから」

 すんっとエメリーズが鼻を啜る。

「うっううっ」

 涙が溢れて止まらなくなって、トレモルがせっせと拭いてやる。

「大丈夫、ぼくらは変わらないから」

 やさしいドレイファスの声にエメリーズは泣き崩れ、トレモルが背中を擦ってやった。


 あとからボルドアとアラミスが追いつくと、四人でエメリーズを囲み、泣き顔の少年を笑わせようとドレイファスが脇をこちょこちょとくすぐりながら歩いて、アラミスに注意されたり。
 教室に入ったとき、一瞬しーんと静まり返ったが、それをぶち破るように放たれたドレイファスの大きな声でいつもの雰囲気が取り戻される。

「おはよう、みんな!」
「おはようこざいます」
「お、おはよう、エメリーズ様」

 誰かがエメリーズにも声をかけると、やっぱりエメリーズの涙は止まらなくなった。

 成績表をもらい、休みの間の注意を受けるとエメリーズについては同じクラスのままとロントンが告げて。
 真っ赤な顔をしたエメリーズはこくんと頷き、他の生徒たちも同じように頷いて返した。

「あ!みんな帰るの待って!うちの馬車にお土産があるから、僕と馬車に来てください。ロントン先生も!」

 ハーメルンの笛吹き男のように、級友をずらずらと後ろに従えて車寄せに向かう。
公爵家のエリアは、公爵以下の子息子女は許可のある者しか入れない。いつもの顔ぶれ以外はほとんどが初めて踏み入れるのだ。

「塀が違うね」
「踏み石もほら」

 ドレイファスは気にしたことがなかったが、こんな車寄せでも、爵位ごとに違いがあったらしい。差別・・・という言葉が頭をちらりと掠めた。

「じゃ、一人づつ渡します」

 メルクルが馬車から一玉づつ、生徒たちに手渡していく。

「うっわあ、おおきい!」
「すっごいね!」

 歓声があがるのをにこにこと眺めていると、ルートリアがやってきた。

「ルートリア嬢、こんな重たいの持てる?」

 ドレイファスがわざわざ訊ねたので、メルクルはおや?と思ったのだが、訊かれたルートリアは

「大丈夫ですわ!おまかせくださいな」

 そう言って、がしっと大玉のレッドメルを抱きしめる。とってもうれしそうに、

「ドレイファス様、ありがとうございます」

 さすがにカーテシーはできないので、ちょこんと頭を下げた。

「うんっ!それ絶対おいしいからねっ」

 メルクルは可愛らしいドレイファスにクスと笑いながら、最後に並んでいたエメリーズにレッドメルを渡そうとした。

「あの、ぼくほんとに・・・?」
「エメリーズ!もう、いいんだってば。ちゃんとみんなの分のを持ってきたんだから、もらってよ」

 また遠慮しようとしたエメリーズに、メルクルから受け取ったレッドメルを自ら手渡してやる。

「おいしいんだから。おいしいものたべれば元気でるから。ねっ!もう泣かないの」

 ぽろぽろと目尻から溢れる涙を、またトレモルが拭いてやるのだ。
小さな声でエメリーズにだけ聞こえるようにトレモルは言った。

「ドルも僕も。いままでもこれからもずっと君のともだちだ。だからあきらめないで」

 エメリーズの後ろに並んでいたロントンにもそれは聞こえた。
 ドレイファスがまわりに与えている影響が、如何に愛情深いものか。しかしそれでいて、貴族としての弁えも忘れない。
公爵家嫡男と彼を囲む五人の将来、素晴らしい貴族や騎士となっていくのだろうと想像して微笑みを浮かべた。


「先生!」

 にこにこと喜ぶ生徒たちを眺めていると、自分の番だとドレイファスに声をかけられる。

「いや、本当にいいのかね?」
「ええ、公爵家にはレッドメルの群生地がありますから、ご遠慮なくどうぞ」

 メルクルが勧めてくれ、ずっしりと重い果実を両手で受け取った。

「あ、賄賂じゃありませんよ、センセ!暑中見舞いです」

 メルクルの言葉にみんなで笑って。
そうして夏休みに突入していった。

 わいろって何?とドレイファスが首を傾げていたのは秘密。
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

エアコン魔法、全自動チョコレート製造魔法、魔法の無駄遣い? ――快適な生活のために、全部必要ですわ

鷹 綾
恋愛
「魔法の無駄遣いだ」 そう言われて婚約を破棄され、南方の辺境へ追放された元・聖女エオリア。 けれど本人は、まったく気にしていなかった。 暑いならエアコン魔法を使えばいい。 甘いものが食べたいなら、全自動チョコレート製造魔法を組めばいい。 一つをゆっくり味わっている間に、なぜか大量にできてしまうけれど―― 余った分は、捨てずに売ればいいだけの話。 働く気はない。 評価されても困る。 世界を変えるつもりもない。 彼女が望むのは、ただひとつ。 自分が快適に、美味しいものを食べて暮らすこと。 その結果―― 勝手に広まるスイーツブーム。 静かに進む元婚約者の没落。 評価だけが上がっていく謎の現象。 それでもエオリアは今日も通常運転。 「魔法の無駄遣い? ――快適な生活のために、全部必要ですわ」 頑張らない。 反省しない。 成長もしない。 それでも最後まで勝ち続ける、 アルファポリス女子読者向け“怠惰ざまぁ”スイーツファンタジー。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

悪役メイドだなんて言われましても困ります

ファンタジー
オファーロ公爵家にメイドとして孤児院から引き取られたフィーだったが、そこで物理的且つ衝撃的な出会いをした公爵令嬢が未来の悪役令嬢である事を思い出す。給料支払元である公爵家に何かあっては非常に困る。抗ってみると決めたフィーだったが、無事乗り切れるのだろうか? ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※他サイト(なろう様)にも掲載させて頂いています。 ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

【完結】まもの牧場へようこそ!~転移先は魔物牧場でした ~-ドラゴンの子育てから始める異世界田舎暮らし-

いっぺいちゃん
ファンタジー
平凡なサラリーマン、相原正人が目を覚ましたのは、 見知らぬ草原に佇むひとつの牧場だった。 そこは、人に捨てられ、行き場を失った魔物の孤児たちが集う場所。 泣き虫の赤子ドラゴン「リュー」。 やんちゃなフェンリルの仔「ギン」。 臆病なユニコーンの仔「フィーネ」。 ぷるぷる働き者のスライム「モチョ」。 彼らを「処分すべき危険種」と呼ぶ声が、王都や冒険者から届く。 けれど正人は誓う。 ――この子たちは、ただの“危険”なんかじゃない。 ――ここは、家族の居場所だ。 癒やしのスキル【癒やしの手】を頼りに、 命を守り、日々を紡ぎ、 “人と魔物が共に生きる未来”を探していく。 ◇ 🐉 癒やしと涙と、もふもふと。 ――これは、小さな牧場から始まる大きな物語。 ――世界に抗いながら、共に暮らすことを選んだ者たちの、優しい日常譚。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のソフィーナは、非常に我が儘で傲慢で、どしうようもないクズ令嬢だった。そんなソフィーナだったが、事故の影響で前世の記憶をとり戻す。 前世では体が弱く、やりたい事も何もできずに短い生涯を終えた彼女は、過去の自分の行いを恥、真面目に生きるとともに前世でできなかったと事を目いっぱい楽しもうと、新たな人生を歩み始めた。 外を出て美味しい空気を吸う、綺麗な花々を見る、些細な事でも幸せを感じるソフィーナは、険悪だった兄との関係もあっという間に改善させた。 もちろん、本人にはそんな自覚はない。ただ、今までの行いを詫びただけだ。そう、なぜか彼女には、人を魅了させる力を持っていたのだ。 そんな中、この国の王太子でもあるファラオ殿下の15歳のお誕生日パーティに参加する事になったソフィーナは… どうしようもないクズだった令嬢が、前世の記憶を取り戻し、次々と周りを虜にしながら本当の幸せを掴むまでのお話しです。 カクヨムでも同時連載してます。 よろしくお願いします。

異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました

小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。 しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!? 助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、 「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。 幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。 ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく! ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

【完結】異世界から来た聖女ではありません!

五色ひわ
恋愛
 ミシュリーヌは、第四王子オーギュストの妃としてフルーナ王国の王宮で暮らしている。しかし、夫であるオーギュストがミシュリーヌの寝室に訪れることはない。ミシュリーヌは聖女の力を持っていたため、妻に望まれただけなのだ。それでも、ミシュリーヌはオーギュストとの関係を改善したいと考えている。  どうすれば良いのかしら?  ミシュリーヌは焦っていた。七年間かけて国中の水晶を浄化したことにより、フルーナ王国は平穏を取り戻しつつある。それは同時に聖女の力がこの国に必要なくなったことを意味していた。  このまま、オーギュストの優しさに縋ってお飾りの妻を続けるしかないのだろうか。思い悩むミシュリーヌの前に現れたのは、オーギュストの恋人を名乗る女性だった。 ・本編141話 ・おまけの短編 ①9話②1話③5話

処理中です...