【完結】一番腹黒いのはだあれ?

やまぐちこはる

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第二王子カジューン

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「はあ」
「どうなさいましたカジューン殿下」
「ソンドールも勿論婚約者がいるのだろう?」

離宮の晩餐に、カジューンはソンドールを誘った。
さすがに一介の商人に過ぎないニニガは、与えられた自室でシューリンヒ家の護衛と食事中だ。

「はい、婚約してまだ半年も経ちませんが」
「そうなのか!婚約が随分遅いが、ルング王国はそうなのか?」
「メットリアほど早くはないですね。しかし珍しくはないです」
「そうなのか。婚約者とは政略か?どんな経緯で婚約したのか教えてくれないか」


・・・・・・。
一瞬考え込んだが、すぐに切り替えて事情を話すことにした。



「じゃあソンドールは双子の兄の代わりに?嫌じゃなかったか」
「まあ初めは嫌でしたよ。育てられたわけでもない生家の為に、見たこともない相手といきなり婚約だなんて納得いきませんよ!」
「そうだよな!それでソンドールはどうしたんだ?」
「ええ、婚約者と顔合わせはすることになって」
「うん」
「会ってみたら、けっこう可愛くて」
「え?」

もっと硬派な話かと思っていたカジューンは、急にぐんにゃりとニヤけるソンドールにあ然とした。

「以前会ったことがある令嬢だったんですよね」
「そ、それは偶然だな」
「それがですね」

惚気が始まり、カジューンは仕方なくお世辞笑いを浮かべて相槌を打ち続けたのだった。



一頻り惚気けたあと、遅まきながらソンドールは喋りすぎたことに気付いた。

「もっ、申し訳ございません!自分のことばかりベラベラと」
「いや、面白かったからいいよ」

そう言うカジューンには疲れが見える。

「申し訳ございません、次はぜひ殿下のお話を聞かせてください」
「私の話は幸先の悪いもので楽しくないよ」
「そんなことはございません!ぜひ拝聴したいです」

ソンドールは根性を振り絞り、カジューンに食らいついた。

チラッとカジューンの視線がソンドールを見る。
赤い顔で、息を止めて直立不動である。

「おい、息はしてくれよ」
「・・・ぷっ、はぁ、ありがとうございます!」
「ハハ。変なやつだなソンドールは」
「そうですか?騎士団育ちのためか、貴族らしくないとは言われますが」
「うん、気取っていなくていい。気楽に話せるな」
「畏れ多いお言葉ありがとうございますっ!」

うんうんと小さく頷いたカジューンは、一息置くとそろそろと話し始めた。




「イメルデとは五歳で婚約したんだ」
「随分早いんですね」
「うん。こっちでは普通だよ」
「そうでしたか。でもそんな長く過ごしてきた婚約者の方がこのような事になられて、さぞやお心が」
「うん。痛ましい気持ちは勿論ある。しかしイメルデは母や妹を思うのと同じような。うん、家族を狙われた感じなんだ」

今カジューンが吐露しようとしていることは、ソンドールたちの企みに、そしてリュスティリアの希望を叶えるために、大切な情報だと耳を澄ませた。

「ソンドールも知っているのだろう?イメルデの状況を。シューリンヒ侯爵家が医師を送ってくれたと聞いている」
「はい、だいたいは」
「私の隣りに立つのは難しいことも?」
「いえそこまでは」

ふとリーリルハを失ったらと思い浮かべたソンドールは、辛そうな顔をした。
それをカジューンは自分に寄り添ってくれていると感じ、静かな口調で先を続ける。

「今日父上に言われたんだ。この件が片付いたら・・・イメルデとの婚約は解消しなくてはならない」




「いまさら他の婚約者だなんて・・・」
「あの、殿下はイメルデ様との婚約を解消はしたくないと」
「ん?・・・どうかな。さっきも言ったが、妹みたいな存在なんだ。一緒にいて居心地もいい。自然と家族になれると思っていたから喪失感はあるが、どちらかというと新しく誰かとまた関係構築し直すのが億劫かな。
だいたいもう王族に嫁げる家格の令嬢など、問題有りくらいしかいないんだよ。本当に今更だ!
だがよい後ろ盾になる令嬢を探さねば、あの胸糞悪い兄上が立太子し、腹黒いあの女とふたりが国王夫妻になってしまう!」

ソンドールは気が高まっているのを感じた。
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