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メットリア王国にて 5 国王の憂い
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「え?俺が城の離宮に?」
「ああ。ニニガと一緒に行ってもらいたい」
ソンドールの頭の中でいくつかの情報が駆け巡り、結論に結びついた。
「あっなるほど!わかりましたよ」
一聞いて十理解する回転の良さにノルザードは感心する。メイガーといいソンドールといい、出来の良いパートルム公爵家の息子が羨ましくなった。
「では早速明日。離宮では殿下が安全を手配してくださるが、ソンドール殿も十分注意してくれ」
ソンドールがニニガとカジューン王子の離宮に向かったあと、似顔絵の男の捜索を、ニールクメール侯爵とカジューン王子の手勢とで開始。
それと同時にノルザードは改めて使用人たちの徹底した身上調査を行った。
二度と不埒なことを仕出かす者が現れないように。
さて。
遠い遠い国にいたニニガを見つけることは出来なかったが、国内にいるはずの似顔絵の男を捜し出すのは、王家の影には造作もないことだった。
ムイード、ニールクメールも捜索に手勢を出したが、能力差は歴然。僅か二日で目当ての男が見つかった。
「それでその男は今どこにいるんだ?」
報告を受けたカジューン王子が食いつくように影に訊ねる。
「はい、拘束して城の地下牢へ」
「えっもう捕まえているのか」
「はい。見つけたときにちょうど一人きりで、隠れるように人気のない所におりましたのでそのまま」
流石にカジューン王子も驚いたが。
「気づかれたら消されてしまうかと思いまして」
そう言われてその通りだと気づいた。
後に判明するが、実際男は雇い主が放った追手から逃げているところだった。影の捕縛が遅ければ、生きて捕らえることは出来なかっただろう。
「うむ、よくやってくれた。我らが賊のひとりを捕まえたことは知られないようにしてくれ。入れたのは本城の地下牢だろう?信頼できる見張りを多めに立てておいてくれ。陛下に面会したあと、尋問を開始するので準備も頼む」
カジューン王子は父王にどこまで話すか、長い廊下を歩きながら考える。
第一王子派がイメルデに毒を盛ったと噂はあっても証拠がなかった。
しかしそれを手に入れたのだ。
大切なイメルデにあのようなことをした奴らを、今度こそ根刮ぎ断罪できると思うと気持ちが昂ぶった。
「父上」
「カジューン来たか」
私室に呼ばれたことから、カジューンは父上と呼びかけた。
「そこに座れ。何か動きがあったのだろう?」
厳しい顔で早速本題に入る国王は、せっかちな性格であった。
「まずはこれを」
パートルム・シューリンヒ両家がムイード公爵家に渡した報告書と似顔絵である。
「その男は既に確保し、これから尋問を行います」
「どこの家門の者だ?」
「ディナル伯爵家の者でした」
「そうか。やはりそうか」
ディナル伯爵は第一王子の婚約者サリーの伯父だ。
しかもサリーの弟と一緒に不祥事を起こしたのが、ディナル伯爵家の次男坊とくれば、その繋がりは明白である。
「カジューン、証人を守り抜けよ。おまえにナジュラーをつけよう、進捗はナジュラーが私に報告するように」
王の影のひとりを連絡係として付けると言う父にカジューンは驚いた。
顔に出たらしく、漸く表情を緩めた国王はカジューンに語りかける。
「ジュネ、今回のことは私とて許し難い。幼き頃より王子妃となるべく様々な学問を納め、鍛錬を積んだ令嬢の人生を、勝手な考えで奪ったのだからな。ところでニールクメール侯爵家からイメルデ嬢の現状は聞いておるか?」
一度解れた表情が、痛ましいものに変わった。
「・・・・・・はい」
「ではもう理解しておるだろうが、イメルデ嬢との婚約は」
「はい。継続が難しいのだとはわかっています。しかしせめて犯人は捕まえて、一矢報いたい。婚約の解消はその後にお願いしたいです」
「うむ、構わない」
(次の婚約者選びは難しくなるな)
第一王子がどこまで関わっているかはまだ不明だが、この件が表沙汰となり、今の婚約者と共に在り続けても、別れを選んだとしても、第一王子が白と思う者は少なく、信頼を失った者が王位につくのは難しい。
となると、新たな婚約者が後ろ盾になれるような家門の娘であれば、次代の王はカジューンとなる。
しかしこれが問題なのだ。
未来の王妃に相応しい令嬢を今から探すのは至難・・・。
第一王子にしても第二王子にしても、どちらも立太子には程遠くなってしまったと、国王は憂いの詰まったため息を吐いた。
「ああ。ニニガと一緒に行ってもらいたい」
ソンドールの頭の中でいくつかの情報が駆け巡り、結論に結びついた。
「あっなるほど!わかりましたよ」
一聞いて十理解する回転の良さにノルザードは感心する。メイガーといいソンドールといい、出来の良いパートルム公爵家の息子が羨ましくなった。
「では早速明日。離宮では殿下が安全を手配してくださるが、ソンドール殿も十分注意してくれ」
ソンドールがニニガとカジューン王子の離宮に向かったあと、似顔絵の男の捜索を、ニールクメール侯爵とカジューン王子の手勢とで開始。
それと同時にノルザードは改めて使用人たちの徹底した身上調査を行った。
二度と不埒なことを仕出かす者が現れないように。
さて。
遠い遠い国にいたニニガを見つけることは出来なかったが、国内にいるはずの似顔絵の男を捜し出すのは、王家の影には造作もないことだった。
ムイード、ニールクメールも捜索に手勢を出したが、能力差は歴然。僅か二日で目当ての男が見つかった。
「それでその男は今どこにいるんだ?」
報告を受けたカジューン王子が食いつくように影に訊ねる。
「はい、拘束して城の地下牢へ」
「えっもう捕まえているのか」
「はい。見つけたときにちょうど一人きりで、隠れるように人気のない所におりましたのでそのまま」
流石にカジューン王子も驚いたが。
「気づかれたら消されてしまうかと思いまして」
そう言われてその通りだと気づいた。
後に判明するが、実際男は雇い主が放った追手から逃げているところだった。影の捕縛が遅ければ、生きて捕らえることは出来なかっただろう。
「うむ、よくやってくれた。我らが賊のひとりを捕まえたことは知られないようにしてくれ。入れたのは本城の地下牢だろう?信頼できる見張りを多めに立てておいてくれ。陛下に面会したあと、尋問を開始するので準備も頼む」
カジューン王子は父王にどこまで話すか、長い廊下を歩きながら考える。
第一王子派がイメルデに毒を盛ったと噂はあっても証拠がなかった。
しかしそれを手に入れたのだ。
大切なイメルデにあのようなことをした奴らを、今度こそ根刮ぎ断罪できると思うと気持ちが昂ぶった。
「父上」
「カジューン来たか」
私室に呼ばれたことから、カジューンは父上と呼びかけた。
「そこに座れ。何か動きがあったのだろう?」
厳しい顔で早速本題に入る国王は、せっかちな性格であった。
「まずはこれを」
パートルム・シューリンヒ両家がムイード公爵家に渡した報告書と似顔絵である。
「その男は既に確保し、これから尋問を行います」
「どこの家門の者だ?」
「ディナル伯爵家の者でした」
「そうか。やはりそうか」
ディナル伯爵は第一王子の婚約者サリーの伯父だ。
しかもサリーの弟と一緒に不祥事を起こしたのが、ディナル伯爵家の次男坊とくれば、その繋がりは明白である。
「カジューン、証人を守り抜けよ。おまえにナジュラーをつけよう、進捗はナジュラーが私に報告するように」
王の影のひとりを連絡係として付けると言う父にカジューンは驚いた。
顔に出たらしく、漸く表情を緩めた国王はカジューンに語りかける。
「ジュネ、今回のことは私とて許し難い。幼き頃より王子妃となるべく様々な学問を納め、鍛錬を積んだ令嬢の人生を、勝手な考えで奪ったのだからな。ところでニールクメール侯爵家からイメルデ嬢の現状は聞いておるか?」
一度解れた表情が、痛ましいものに変わった。
「・・・・・・はい」
「ではもう理解しておるだろうが、イメルデ嬢との婚約は」
「はい。継続が難しいのだとはわかっています。しかしせめて犯人は捕まえて、一矢報いたい。婚約の解消はその後にお願いしたいです」
「うむ、構わない」
(次の婚約者選びは難しくなるな)
第一王子がどこまで関わっているかはまだ不明だが、この件が表沙汰となり、今の婚約者と共に在り続けても、別れを選んだとしても、第一王子が白と思う者は少なく、信頼を失った者が王位につくのは難しい。
となると、新たな婚約者が後ろ盾になれるような家門の娘であれば、次代の王はカジューンとなる。
しかしこれが問題なのだ。
未来の王妃に相応しい令嬢を今から探すのは至難・・・。
第一王子にしても第二王子にしても、どちらも立太子には程遠くなってしまったと、国王は憂いの詰まったため息を吐いた。
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