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呪われたエザリア
信じました
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森の中のセイン・デールの店兼家は、父親が亡くなって以来の賑やかな来客に沸いている。
呪われて白猫になったエザリア・サリバーと、サリバー商会の使用人スミル・ニスト。
今、スミルは白猫と面と向かい、真剣に質問をしている。
「エザリアお嬢様の幼馴染は私スミルの他、あとふたり誰ですか」
白い前足がさっさっといくつかの文字を指し示した。
『べつさる ついか』
─セインが言っていたのはこれか!─
猫があらゆる無駄を省いた文字で告げたのは、たぶんベッサールとツィカのことだろう。
「じゃ、じゃあお嬢様がいつも虐められてたツインテールの女の子の名前は?」
猫が怒ったように、尻尾をバンバンバンバンとテーブルを打って一言。
「ニャッ」
そして一文字づつゆっくり前足で指し示す。
『えれな きらい やなおんな』
ふるふるとスミルが肩を揺らしている。
「ふっ、ふふふっこれは間違いなくエザリア様だ!ハハハッ」
「ニャッニャーッ!」
笑うスミルに怒ったように何か言ったが、スミルは笑い続けている。
文字盤からおりたエザリアは、スミルの服に爪を立てて駆け上がり、ギャッと叫んだスミルの顔にバリッと一発食らわせたのだった。
「あー・・・」
セインは肩を竦めて、なんとか笑うのを堪え、顔を上げたスミルを見て店に薬を取りに行った。
「酷えな、本当、俺にこんなことするのエザリア様しかいねえと思いますよ!こんなに強いのに何故シュマーとロズリンに虐められたんですかね?やり返せたでしょ?」
頬からたらりと流血させながら、スミルはにやにやと笑っている。
エザリアは文字盤に戻り、前足を動かした。
『やしきめいど あいつのてのもの』
「え?だってメリたちがいる」
猫は首を左右にふるふると振って。
『みんなやめさせられた』
「えっ?そんな!いつ?」
『ちち いつてすぐ』
スミルは呆然と白猫を見つめたあと、セインを見た。
「悪いがちょっと馬を借りたい。今からなら用を済ませても6の鐘までにはここに戻れると思うが、いいか?」
「いいよ。馬房まで一緒に行こう。エザリアはここで待っていて」
ぽふんと尻尾を振ると、白猫はクッションめがけて飛び乗った。
「あ、スミルこれ塗るといいよ」
「おお、助かるよ」
「スミルはエザリアの幼馴染なのかい?」
「ああ。と言っても俺のほうが三つ上なんだが」
「そういえば年は?」
「俺は22、エザリア様は19」
「えっ同い年?」
「セインはいくつだ?」
「22」
「・・・エザリア様と同い年かと思ったよ。ど、童顔なんだな」
「よく言われる・・・」
セインはたぶん十人のうち九人が認めるだろう幼顔だ。
「まあそうか、じゃあせっかくだから仲良くしようぜ」
「ああ、これからもよろしく頼むよ」
こんな時だが、友だちの少ないセインはちょっとうれしかった。
馬房から馬を引き出すと手綱をスミルに渡してやる。
「この子はチュランだ。足がね、すごく速いよ」
「ありがとう、早めに戻る」
「気をつけて」
セインに手を振りながら、スミルは馬を走らせ出て行った。
─本当に気をつけてねスミル。チュランすごく足が速いんだ、特に逃げ足が─
■□■
お読み頂きありがとうございます。
当面は6時、12時、18時で一日三話更新しますのでサクサク読み進めて頂けると思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
※【最新話を読む】機能を使うと読み飛ばす可能性がありますので、【しおりから読む】をお勧めします。
【お気に入り】にも是非ポチっとお願いいたします(_ _)
呪われて白猫になったエザリア・サリバーと、サリバー商会の使用人スミル・ニスト。
今、スミルは白猫と面と向かい、真剣に質問をしている。
「エザリアお嬢様の幼馴染は私スミルの他、あとふたり誰ですか」
白い前足がさっさっといくつかの文字を指し示した。
『べつさる ついか』
─セインが言っていたのはこれか!─
猫があらゆる無駄を省いた文字で告げたのは、たぶんベッサールとツィカのことだろう。
「じゃ、じゃあお嬢様がいつも虐められてたツインテールの女の子の名前は?」
猫が怒ったように、尻尾をバンバンバンバンとテーブルを打って一言。
「ニャッ」
そして一文字づつゆっくり前足で指し示す。
『えれな きらい やなおんな』
ふるふるとスミルが肩を揺らしている。
「ふっ、ふふふっこれは間違いなくエザリア様だ!ハハハッ」
「ニャッニャーッ!」
笑うスミルに怒ったように何か言ったが、スミルは笑い続けている。
文字盤からおりたエザリアは、スミルの服に爪を立てて駆け上がり、ギャッと叫んだスミルの顔にバリッと一発食らわせたのだった。
「あー・・・」
セインは肩を竦めて、なんとか笑うのを堪え、顔を上げたスミルを見て店に薬を取りに行った。
「酷えな、本当、俺にこんなことするのエザリア様しかいねえと思いますよ!こんなに強いのに何故シュマーとロズリンに虐められたんですかね?やり返せたでしょ?」
頬からたらりと流血させながら、スミルはにやにやと笑っている。
エザリアは文字盤に戻り、前足を動かした。
『やしきめいど あいつのてのもの』
「え?だってメリたちがいる」
猫は首を左右にふるふると振って。
『みんなやめさせられた』
「えっ?そんな!いつ?」
『ちち いつてすぐ』
スミルは呆然と白猫を見つめたあと、セインを見た。
「悪いがちょっと馬を借りたい。今からなら用を済ませても6の鐘までにはここに戻れると思うが、いいか?」
「いいよ。馬房まで一緒に行こう。エザリアはここで待っていて」
ぽふんと尻尾を振ると、白猫はクッションめがけて飛び乗った。
「あ、スミルこれ塗るといいよ」
「おお、助かるよ」
「スミルはエザリアの幼馴染なのかい?」
「ああ。と言っても俺のほうが三つ上なんだが」
「そういえば年は?」
「俺は22、エザリア様は19」
「えっ同い年?」
「セインはいくつだ?」
「22」
「・・・エザリア様と同い年かと思ったよ。ど、童顔なんだな」
「よく言われる・・・」
セインはたぶん十人のうち九人が認めるだろう幼顔だ。
「まあそうか、じゃあせっかくだから仲良くしようぜ」
「ああ、これからもよろしく頼むよ」
こんな時だが、友だちの少ないセインはちょっとうれしかった。
馬房から馬を引き出すと手綱をスミルに渡してやる。
「この子はチュランだ。足がね、すごく速いよ」
「ありがとう、早めに戻る」
「気をつけて」
セインに手を振りながら、スミルは馬を走らせ出て行った。
─本当に気をつけてねスミル。チュランすごく足が速いんだ、特に逃げ足が─
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