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呪われたエザリア
捕縛 1
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捕縛 2話、一気に更新します。
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サリバー男爵家では仕立て屋を呼んで、シュマーとロズリンの新しいドレスの仮縫いをしているところだ。
最近どうもいろいろなことが滞っており、ロリンに相談したいのに一向に戻ってこない。
ブラスも仕入れが長引いていると言って、十日以上帰宅が遅れると言ってきた。
苛苛とした気持ちに苛まれ、買い物でもしないといられなかったのだ。
鏡の前で、ドレスを合わせていると、チラリと写った女がロリンに見えた。
「あっ!」
急に動いたせいで、危うく針先が肌に触れるところで。
「失礼致しました!奥様大丈夫でいらっしゃいましたか」
お針子がシュマーの腕に傷がつかなかったかを確認するのも待ちきれず、
「いい、大丈夫だから」
そう言うと、ロリンを追って部屋を飛び出して行く。
「え?なにお母さま?」
ロズリンは急に血相を変えて部屋を出ていった母に驚きながらも、自分の仮縫いを続けさせた。
瞬時に姿を戻して裏口から入っていったグルドラとは違い、門が閉められたサリバー男爵家にソーヴァが入り込むことはできない。
代わりに蝶が二匹、ひらひらと戯れ合うように飛びながらグルドラのあとを追っていった。
「ロリン!」
呼び止められて振り向くと、シュマー夫人が目を吊り上げていた。
「どこに行っていたのよ、心配していたのよ」
「暫く実家に行くと言ったはずよ」
「あんた十日くらいって言ってたわ、こんなに長く休むとは言わなかったじゃない!
旦那様もまだ帰ってこないし、商会のやつらは言うこと聞かないしっ!」
グルドラの視線がキツくなる。
「え?まだ戻ってないなんておかしいんじゃないの?」
「仕入れに時間がかかっているんですって。やっとエザリアがいなくなって、今度こそロズリンを後継者にするんだから、あんたにいてもらわないと困るのよっ!あんただって計画がうまくいかなくちゃ金にならないでしょっ」
シュマーががなり立てるように話すのを聞きながら。
─何だろう、いやな感じがする─
辺りを見回すのだが、シュマーが耳元でがなり立てるため集中できない。
「うるさいっ、少し静かにしてよっ」
振り払うようにグルドラがシュマーを除けようとするも、離れるどころか、腕にしがみついて喚き散らすのだ。
シュマーがグルドラの気を散らさなければ気づけたことだろう。
サリバー男爵家の敷地内に、集団の侵入者があったことに。
「こちらはサリバー男爵邸で間違いないか?」
門番に向け、魔導師らしきフードマントを羽織った男が声をかけた。
「左様でございますが」
「王立魔導師団副団長タッディ・サンギュールだ。確認したき疑あり、速やかに門を開けたまえ」
「え?いや、あの」
「サリバー男爵の承諾は得ておる。早くせい」
そう言われてもと困った顔を向ける。
「奥様に聞いてまいりま」
「拘束」
踵を返そうとした門番を、タッディはいきなり拘束した。
「そんなことをされたら台無しだ。暫くそうして転がっていろ」
そう言いながら自分で門を開け放ったタッディが腕を振ると、ぞろぞろと騎士と魔導師が駆けつけてくる。
地面に転がされた門番は、サリバー男爵家にただ事ではない何かが起きていると、震えを覚えていた。
「踏み込む前に確認してからだぞ」
タッディと共に騎士たちの前に立った魔導師たちが、小さな声で詠唱し始めると、門の左右から何かが弾ける音。
グルドラに悪意を持つ者が訪れた時、グルドラにそれが知らされるよう警戒魔法が仕込まれていたのだ。
「やはり仕掛けていたか!気づかれたかもしれんがあとには引けん!一気に行くぞ、気をつけろよ」
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サリバー男爵家では仕立て屋を呼んで、シュマーとロズリンの新しいドレスの仮縫いをしているところだ。
最近どうもいろいろなことが滞っており、ロリンに相談したいのに一向に戻ってこない。
ブラスも仕入れが長引いていると言って、十日以上帰宅が遅れると言ってきた。
苛苛とした気持ちに苛まれ、買い物でもしないといられなかったのだ。
鏡の前で、ドレスを合わせていると、チラリと写った女がロリンに見えた。
「あっ!」
急に動いたせいで、危うく針先が肌に触れるところで。
「失礼致しました!奥様大丈夫でいらっしゃいましたか」
お針子がシュマーの腕に傷がつかなかったかを確認するのも待ちきれず、
「いい、大丈夫だから」
そう言うと、ロリンを追って部屋を飛び出して行く。
「え?なにお母さま?」
ロズリンは急に血相を変えて部屋を出ていった母に驚きながらも、自分の仮縫いを続けさせた。
瞬時に姿を戻して裏口から入っていったグルドラとは違い、門が閉められたサリバー男爵家にソーヴァが入り込むことはできない。
代わりに蝶が二匹、ひらひらと戯れ合うように飛びながらグルドラのあとを追っていった。
「ロリン!」
呼び止められて振り向くと、シュマー夫人が目を吊り上げていた。
「どこに行っていたのよ、心配していたのよ」
「暫く実家に行くと言ったはずよ」
「あんた十日くらいって言ってたわ、こんなに長く休むとは言わなかったじゃない!
旦那様もまだ帰ってこないし、商会のやつらは言うこと聞かないしっ!」
グルドラの視線がキツくなる。
「え?まだ戻ってないなんておかしいんじゃないの?」
「仕入れに時間がかかっているんですって。やっとエザリアがいなくなって、今度こそロズリンを後継者にするんだから、あんたにいてもらわないと困るのよっ!あんただって計画がうまくいかなくちゃ金にならないでしょっ」
シュマーががなり立てるように話すのを聞きながら。
─何だろう、いやな感じがする─
辺りを見回すのだが、シュマーが耳元でがなり立てるため集中できない。
「うるさいっ、少し静かにしてよっ」
振り払うようにグルドラがシュマーを除けようとするも、離れるどころか、腕にしがみついて喚き散らすのだ。
シュマーがグルドラの気を散らさなければ気づけたことだろう。
サリバー男爵家の敷地内に、集団の侵入者があったことに。
「こちらはサリバー男爵邸で間違いないか?」
門番に向け、魔導師らしきフードマントを羽織った男が声をかけた。
「左様でございますが」
「王立魔導師団副団長タッディ・サンギュールだ。確認したき疑あり、速やかに門を開けたまえ」
「え?いや、あの」
「サリバー男爵の承諾は得ておる。早くせい」
そう言われてもと困った顔を向ける。
「奥様に聞いてまいりま」
「拘束」
踵を返そうとした門番を、タッディはいきなり拘束した。
「そんなことをされたら台無しだ。暫くそうして転がっていろ」
そう言いながら自分で門を開け放ったタッディが腕を振ると、ぞろぞろと騎士と魔導師が駆けつけてくる。
地面に転がされた門番は、サリバー男爵家にただ事ではない何かが起きていると、震えを覚えていた。
「踏み込む前に確認してからだぞ」
タッディと共に騎士たちの前に立った魔導師たちが、小さな声で詠唱し始めると、門の左右から何かが弾ける音。
グルドラに悪意を持つ者が訪れた時、グルドラにそれが知らされるよう警戒魔法が仕込まれていたのだ。
「やはり仕掛けていたか!気づかれたかもしれんがあとには引けん!一気に行くぞ、気をつけろよ」
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