12 / 28
12話
しおりを挟む
マードル・メリエラ伯爵はヨドル・アルメ子爵に、ティミリが怪我などしていないのにわざと包帯を巻き、ナナリーに階段を突き落とされたと嘘をついてタケリードを焚き付けたこと。
その結果、それを信じたタケリードがナナリーを人前で貶める事件が起きたことを、淡々と説明した。
不快そうな表情のアルメ子爵の顔がどんどんと赤く、怒りに歪んでいく。
すべて話し終えたマードルに、深々と頭を下げた子爵は
「此度のこと、仰有られるとおり私の管理不行き届きによりご迷惑をおかけ致しました、深くお詫び申し上げます。ろくに教育を受けていないような者を、温情をかけて学院にやるのではありませんでした。私の考え違いにより、ご令嬢の名誉を傷付ける行いを当家に縁あるものが致した始末は、アルメの名にかけて必ずやつけるとお約束致します。慰謝料ももちろんお支払い致しますので、何卒、何卒ご容赦くださいますよう」
始末と聞こえて、ティミリがぴくっと反応した。
「始末って、始末ってなによ、おとうさまっ!」
あれほど拒絶されたにも関わらず、まだアルメ子爵を父と呼ぶのはなぜだろう?
タケリードはふいにふしぎになって、ティミリを見た。
いつも金の髪をふわふわと巻いていたかわいらしい令嬢は、そこにはいなかった。
振り乱した髪はボサボサ、そしてかわいいと思っていたティミリの顔は泣いたり叫んだりして化粧が崩れたようで、目の下は黒く染まり、肌にはひびが走っている。ぱちりとした大きな目のはずがなぜかまつ毛が取れかかり・・・
─これは?これは誰だ?
顔をあげたタケリードにティミリが言った「たすけて」の声で、ようやくこれがティミリだったと気がついた。
「おれ・・は・・・本当に何から何まで騙されていたんだな・・・」
タケリードはティミリを責める気は起きなかった。自分が悪いのだ。ナナリーが歩み寄ってくれていたときに、自分もそうするべきだった。
自分が気に入らないから、趣味が合わないからと無視をした。
ナナリーだって自分を気に入らなかったかもしれないのに。
タケリードはのろのろと立ち上がると、深く腰を折り、マードルに頭を下げた。
「こうなったのは俺・・・私の自業自得です。どんな処分もお受けします。ですが、メリエラ伯爵様。もしできましたらっ、厚かましいお願いですが、ザンバト伯爵家傘下の貴族に類が及ばぬよう、お取り計らい頂けないでしょうか。私の処分が重くなるのは当然のこととして受け入れますっ」
タケリードは叫ぶように謝罪を、そして他の者への気遣いを見せた。
「なに言ってるのよ、私はイヤよ!ひどい目にあわされてるのは私のほうじゃないっ!あんな女絶対にゆるさないわ!なんで私が処分されるのよ、ふざけんなっ」
さらに何か言おうとしたが、アルメ子爵が汚いものに触るように、ハンカチを手にしてその口を塞いだ。
むぐむぐと何かを言おうとしているが、誰ももう何も聞きたくない。
「沙汰は追って知らせる」
マードルの言葉をきっかけに二家の貴族たちは屋敷へと、項垂れて帰って行った。
***
あと一話で本編完結です。
よろしくお願い致します。
***
その結果、それを信じたタケリードがナナリーを人前で貶める事件が起きたことを、淡々と説明した。
不快そうな表情のアルメ子爵の顔がどんどんと赤く、怒りに歪んでいく。
すべて話し終えたマードルに、深々と頭を下げた子爵は
「此度のこと、仰有られるとおり私の管理不行き届きによりご迷惑をおかけ致しました、深くお詫び申し上げます。ろくに教育を受けていないような者を、温情をかけて学院にやるのではありませんでした。私の考え違いにより、ご令嬢の名誉を傷付ける行いを当家に縁あるものが致した始末は、アルメの名にかけて必ずやつけるとお約束致します。慰謝料ももちろんお支払い致しますので、何卒、何卒ご容赦くださいますよう」
始末と聞こえて、ティミリがぴくっと反応した。
「始末って、始末ってなによ、おとうさまっ!」
あれほど拒絶されたにも関わらず、まだアルメ子爵を父と呼ぶのはなぜだろう?
タケリードはふいにふしぎになって、ティミリを見た。
いつも金の髪をふわふわと巻いていたかわいらしい令嬢は、そこにはいなかった。
振り乱した髪はボサボサ、そしてかわいいと思っていたティミリの顔は泣いたり叫んだりして化粧が崩れたようで、目の下は黒く染まり、肌にはひびが走っている。ぱちりとした大きな目のはずがなぜかまつ毛が取れかかり・・・
─これは?これは誰だ?
顔をあげたタケリードにティミリが言った「たすけて」の声で、ようやくこれがティミリだったと気がついた。
「おれ・・は・・・本当に何から何まで騙されていたんだな・・・」
タケリードはティミリを責める気は起きなかった。自分が悪いのだ。ナナリーが歩み寄ってくれていたときに、自分もそうするべきだった。
自分が気に入らないから、趣味が合わないからと無視をした。
ナナリーだって自分を気に入らなかったかもしれないのに。
タケリードはのろのろと立ち上がると、深く腰を折り、マードルに頭を下げた。
「こうなったのは俺・・・私の自業自得です。どんな処分もお受けします。ですが、メリエラ伯爵様。もしできましたらっ、厚かましいお願いですが、ザンバト伯爵家傘下の貴族に類が及ばぬよう、お取り計らい頂けないでしょうか。私の処分が重くなるのは当然のこととして受け入れますっ」
タケリードは叫ぶように謝罪を、そして他の者への気遣いを見せた。
「なに言ってるのよ、私はイヤよ!ひどい目にあわされてるのは私のほうじゃないっ!あんな女絶対にゆるさないわ!なんで私が処分されるのよ、ふざけんなっ」
さらに何か言おうとしたが、アルメ子爵が汚いものに触るように、ハンカチを手にしてその口を塞いだ。
むぐむぐと何かを言おうとしているが、誰ももう何も聞きたくない。
「沙汰は追って知らせる」
マードルの言葉をきっかけに二家の貴族たちは屋敷へと、項垂れて帰って行った。
***
あと一話で本編完結です。
よろしくお願い致します。
***
43
あなたにおすすめの小説
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
【番外編も完結】で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?
Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。
簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。
一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。
ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。
そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。
オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。
オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。
「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」
「はい?」
ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。
*--*--*
覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾
★2/17 番外編を投稿することになりました。→完結しました!
★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓
このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。
第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」
第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」
第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」
どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ
もしよかったら宜しくお願いしますね!
婚約破棄されたのでグルメ旅に出ます。後悔したって知りませんと言いましたよ、王子様。
みらいつりびと
恋愛
「汚らわしい魔女め! 即刻王宮から出て行け! おまえとの婚約は破棄する!」
月光と魔族の返り血を浴びているわたしに、ルカ王子が罵声を浴びせかけます。
王国の第二王子から婚約を破棄された伯爵令嬢の復讐の物語。
異母妹に婚約者を奪われ、義母に帝国方伯家に売られましたが、若き方伯閣下に溺愛されました。しかも帝国守護神の聖女にまで選ばれました。
克全
恋愛
『私を溺愛する方伯閣下は猛き英雄でした』
ネルソン子爵家の令嬢ソフィアは婚約者トラヴィスと踊るために王家主催の舞踏会にきていた。だがこの舞踏会は、ソフィアに大恥をかかせるために異母妹ロージーがしかけた罠だった。ネルソン子爵家に後妻に入ったロージーの母親ナタリアは国王の姪で王族なのだ。ネルソン子爵家に王族に血を入れたい国王は卑怯にも一旦認めたソフィアとトラヴィスの婚約を王侯貴族が集まる舞踏会の場で破棄させた。それだけではなく義母ナタリアはアストリア帝国のテンプル方伯家の侍女として働きに出させたのだった。国王、ナタリア、ロージーは同じ家格の家に侍女働きに出してソフィアを貶めて嘲笑う気だった。だがそれは方伯や辺境伯という爵位の存在しない小国の王と貴族の無知からきた誤解だった。確かに国によっては城伯や副伯と言った子爵と同格の爵位はある。だが方伯は辺境伯同様独立裁量権が強い公爵に匹敵する権限を持つ爵位だった。しかもソフィアの母系は遠い昔にアストリア帝室から別れた一族で、帝国守護神の聖女に選ばれたのだった。
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルバ」に同時投稿しています。
勝手にしなさいよ
棗
恋愛
どうせ将来、婚約破棄されると分かりきってる相手と婚約するなんて真っ平ごめんです!でも、相手は王族なので公爵家から破棄は出来ないのです。なら、徹底的に避けるのみ。と思っていた悪役令嬢予定のヴァイオレットだが……
お姉さまは最愛の人と結ばれない。
りつ
恋愛
――なぜならわたしが奪うから。
正妻を追い出して伯爵家の後妻になったのがクロエの母である。愛人の娘という立場で生まれてきた自分。伯爵家の他の兄弟たちに疎まれ、毎日泣いていたクロエに手を差し伸べたのが姉のエリーヌである。彼女だけは他の人間と違ってクロエに優しくしてくれる。だからクロエは姉のために必死にいい子になろうと努力した。姉に婚約者ができた時も、心から上手くいくよう願った。けれど彼はクロエのことが好きだと言い出して――
罠に嵌められたのは一体誰?
チカフジ ユキ
恋愛
卒業前夜祭とも言われる盛大なパーティーで、王太子の婚約者が多くの人の前で婚約破棄された。
誰もが冤罪だと思いながらも、破棄された令嬢は背筋を伸ばし、それを認め国を去ることを誓った。
そして、その一部始終すべてを見ていた僕もまた、その日に婚約が白紙になり、仕方がないかぁと思いながら、実家のある隣国へと帰って行った。
しかし帰宅した家で、なんと婚約破棄された元王太子殿下の婚約者様が僕を出迎えてた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる