【完結】許さないってどういうことですか?それは私の台詞です。

やまぐちこはる

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辺境のタケリード編

1話

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 本編その後のタケリード編、開始します。
本編と同じくらいの話数となります。
またゆるゆるですが、楽しんで頂けたらうれしいです。

∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

 ナナリー・メリエラとタケリード・ザンバトが婚約を解消して六年が過ぎ、ナナリーは独身の貴族令嬢としてそろそろ心配される年頃になっていた。
 相変わらずタケリードからナナリーの元に手紙は届くが、ずっと辺境の現場にいるらしく、顔は一度も見ていない。
 ある日、父マードルがナナリーを呼びつけた。

「ナナリー、そろそろ誰かいい人はおらんのか?」
「うーん、いないのですわあ」

 ふわあと欠伸をしながら答える行儀の悪いナナリーだが、メリエラ家がというか、ナナリーが提案した新規事業を手掛け始めて以来、結婚どころではない。
 もう結婚しなくてもいいんじゃないかなーと思ったりするのだが、マードルは諦めていないようで、折につけ様々なセッティングをしてくるので困っているこの頃だ。

「仕事はどうだ?」
「とっても順調ですわよ、ご存知でしょう?」

 タケリードの手紙の小説化は見送ったが、それをヒントに、それまでは冒険物か戦闘、恋愛物くらいしかなかった小説にヒューマンドラマジャンルを起こして、老若男女に大人気となった。
 ナナリーは、タケリードの手紙に現れる様な身分を問わない様々な人々の日常を切り取り、玉の輿に乗るしかないと思い込んでいる令嬢がある日覚醒して勉強し直し、仕事でのし上がる話や、一度貶められたとしても腐らず、学び続けて汚名返上した少年が、あるべき自分を取り戻す話などを世に出し、勉強ブームを巻き起こした。
 さらにタケリードのように途中で道を閉ざした者でもチャンスが掴めるようにできないかと考え、テキストや試験を配達で配布し、仕事で学校に通えなくても、安価な自宅学習で卒業資格が取れる通信学校を設立した。

 ナナリーは
「メリエラの私財を投じて教育を受けられずにいる者にも機会を提供し、人材を育てることで国に貢献したい」
と王宮と交渉し、見事な演技力でそれを勝ち取ったのだ。
 生徒一人の利益は小さいが、少ない教師でたくさんの生徒を教えられる。世の流れのおかげで生徒は増える一方。その儲けは笑いが止まらないほど莫大だ。

 通信学校設立の際。
 王宮の担当者との交渉でもナナリーの悪どさは切れ味鋭かった。

「このような大切な仕事を永続的に担うのは貴族でなければ難しゅうございます。御国に奉仕するために通信学校を起ち上げるのですから、我がメリエラではお一人ごとの授業料は平民でも学びやすいよう安くすることをお約束致します。故に、他の参入などあれば質を守り続けることが難しくなるやもしれません。どうか今後、類似の通信学校の設立は安易になさいませぬようお願い致したく」

 そう言って担当者を納得させ、

『国の代行として広く国民に教育を与える機会を私財を奉じて担うメリエラを支援するため、後続の参入は認めない』

と言質を取った。


 ─私財を使うのは最初だけ。
あとは広く浅く利益を延々と・・・ふふふ。


 その日、メリエラ家に戻って馬車を降りたナナリーが、スキップをしながら部屋へ戻っていったことを屋敷の使用人の噂で知ったマードルである。



「お仕事が面白すぎて、結婚どころではございませんのよ」

 このまま職業婦人のままでも。
後継者がいないというなら、養子でも貰えばいいと、簡単に考えていた。

 ニヤニヤ笑うナナリーにムゥっとしながら、マードルが冊子を投げてよこす。

「なんですの?」

 栞が挟まれていたページがパラリと開くと、タケリード・ザンバトという名が目に飛び込んだ。

「あら?」

 それは土木建築の専門誌にタケリードが書いた、大型の橋の耐久性をどう高めるかという論文だった。

「まあ!彼がこれを?」
「今、すごい評判になっているんだ」
「どこかのお偉い学者先生に教えを請うていらっしゃるとは手紙に書いてありましたけど」
「学院は卒業できなかったが、おまえの通信学校で学んだあとも自学を続けて、今では研究者としても知名度をあげている」
「素晴らしいですわね」

 活字を目で追いながら生返事をする愛娘に、そろそろと提案を持ちける父。

「タケリードは今や若手建築家のホープと呼ばれている」
「ええ、そのようですわね、驚きですわ」
「うん。それでな。いままでいろいろな経緯はあったが、昔のことを知らない者も増えたし、今のタケリードならメリエラゼネラルコントラクションに迎えても遜色ない相手と思うんだが」

 ナナリーはふっと視線を父に向け、にっこり笑った。

(おお!やっぱりタケリードのこと今でも想っているんだな!よしっ)

 マードルも満面で笑ったが。

「タケリード卿を引き抜かれるんですの?それは素晴らしいお考えと存じますわ」

 父の事業のパートナーに引き抜くつもりだと勘違いしたナナリーは、にっこりしたのだった。
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