14 / 28
辺境のタケリード編
1話
しおりを挟む
本編その後のタケリード編、開始します。
本編と同じくらいの話数となります。
またゆるゆるですが、楽しんで頂けたらうれしいです。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
ナナリー・メリエラとタケリード・ザンバトが婚約を解消して六年が過ぎ、ナナリーは独身の貴族令嬢としてそろそろ心配される年頃になっていた。
相変わらずタケリードからナナリーの元に手紙は届くが、ずっと辺境の現場にいるらしく、顔は一度も見ていない。
ある日、父マードルがナナリーを呼びつけた。
「ナナリー、そろそろ誰かいい人はおらんのか?」
「うーん、いないのですわあ」
ふわあと欠伸をしながら答える行儀の悪いナナリーだが、メリエラ家がというか、ナナリーが提案した新規事業を手掛け始めて以来、結婚どころではない。
もう結婚しなくてもいいんじゃないかなーと思ったりするのだが、マードルは諦めていないようで、折につけ様々なセッティングをしてくるので困っているこの頃だ。
「仕事はどうだ?」
「とっても順調ですわよ、ご存知でしょう?」
タケリードの手紙の小説化は見送ったが、それをヒントに、それまでは冒険物か戦闘、恋愛物くらいしかなかった小説にヒューマンドラマジャンルを起こして、老若男女に大人気となった。
ナナリーは、タケリードの手紙に現れる様な身分を問わない様々な人々の日常を切り取り、玉の輿に乗るしかないと思い込んでいる令嬢がある日覚醒して勉強し直し、仕事でのし上がる話や、一度貶められたとしても腐らず、学び続けて汚名返上した少年が、あるべき自分を取り戻す話などを世に出し、勉強ブームを巻き起こした。
さらにタケリードのように途中で道を閉ざした者でもチャンスが掴めるようにできないかと考え、テキストや試験を配達で配布し、仕事で学校に通えなくても、安価な自宅学習で卒業資格が取れる通信学校を設立した。
ナナリーは
「メリエラの私財を投じて教育を受けられずにいる者にも機会を提供し、人材を育てることで国に貢献したい」
と王宮と交渉し、見事な演技力でそれを勝ち取ったのだ。
生徒一人の利益は小さいが、少ない教師でたくさんの生徒を教えられる。世の流れのおかげで生徒は増える一方。その儲けは笑いが止まらないほど莫大だ。
通信学校設立の際。
王宮の担当者との交渉でもナナリーの悪どさは切れ味鋭かった。
「このような大切な仕事を永続的に担うのは貴族でなければ難しゅうございます。御国に奉仕するために通信学校を起ち上げるのですから、我がメリエラではお一人ごとの授業料は平民でも学びやすいよう安くすることをお約束致します。故に、他の参入などあれば質を守り続けることが難しくなるやもしれません。どうか今後、類似の通信学校の設立は安易になさいませぬようお願い致したく」
そう言って担当者を納得させ、
『国の代行として広く国民に教育を与える機会を私財を奉じて担うメリエラを支援するため、後続の参入は認めない』
と言質を取った。
─私財を使うのは最初だけ。
あとは広く浅く利益を延々と・・・ふふふ。
その日、メリエラ家に戻って馬車を降りたナナリーが、スキップをしながら部屋へ戻っていったことを屋敷の使用人の噂で知ったマードルである。
「お仕事が面白すぎて、結婚どころではございませんのよ」
このまま職業婦人のままでも。
後継者がいないというなら、養子でも貰えばいいと、簡単に考えていた。
ニヤニヤ笑うナナリーにムゥっとしながら、マードルが冊子を投げてよこす。
「なんですの?」
栞が挟まれていたページがパラリと開くと、タケリード・ザンバトという名が目に飛び込んだ。
「あら?」
それは土木建築の専門誌にタケリードが書いた、大型の橋の耐久性をどう高めるかという論文だった。
「まあ!彼がこれを?」
「今、すごい評判になっているんだ」
「どこかのお偉い学者先生に教えを請うていらっしゃるとは手紙に書いてありましたけど」
「学院は卒業できなかったが、おまえの通信学校で学んだあとも自学を続けて、今では研究者としても知名度をあげている」
「素晴らしいですわね」
活字を目で追いながら生返事をする愛娘に、そろそろと提案を持ちける父。
「タケリードは今や若手建築家のホープと呼ばれている」
「ええ、そのようですわね、驚きですわ」
「うん。それでな。いままでいろいろな経緯はあったが、昔のことを知らない者も増えたし、今のタケリードならメリエラゼネラルコントラクションに迎えても遜色ない相手と思うんだが」
ナナリーはふっと視線を父に向け、にっこり笑った。
(おお!やっぱりタケリードのこと今でも想っているんだな!よしっ)
マードルも満面で笑ったが。
「タケリード卿を引き抜かれるんですの?それは素晴らしいお考えと存じますわ」
父の事業のパートナーに引き抜くつもりだと勘違いしたナナリーは、にっこりしたのだった。
本編と同じくらいの話数となります。
またゆるゆるですが、楽しんで頂けたらうれしいです。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
ナナリー・メリエラとタケリード・ザンバトが婚約を解消して六年が過ぎ、ナナリーは独身の貴族令嬢としてそろそろ心配される年頃になっていた。
相変わらずタケリードからナナリーの元に手紙は届くが、ずっと辺境の現場にいるらしく、顔は一度も見ていない。
ある日、父マードルがナナリーを呼びつけた。
「ナナリー、そろそろ誰かいい人はおらんのか?」
「うーん、いないのですわあ」
ふわあと欠伸をしながら答える行儀の悪いナナリーだが、メリエラ家がというか、ナナリーが提案した新規事業を手掛け始めて以来、結婚どころではない。
もう結婚しなくてもいいんじゃないかなーと思ったりするのだが、マードルは諦めていないようで、折につけ様々なセッティングをしてくるので困っているこの頃だ。
「仕事はどうだ?」
「とっても順調ですわよ、ご存知でしょう?」
タケリードの手紙の小説化は見送ったが、それをヒントに、それまでは冒険物か戦闘、恋愛物くらいしかなかった小説にヒューマンドラマジャンルを起こして、老若男女に大人気となった。
ナナリーは、タケリードの手紙に現れる様な身分を問わない様々な人々の日常を切り取り、玉の輿に乗るしかないと思い込んでいる令嬢がある日覚醒して勉強し直し、仕事でのし上がる話や、一度貶められたとしても腐らず、学び続けて汚名返上した少年が、あるべき自分を取り戻す話などを世に出し、勉強ブームを巻き起こした。
さらにタケリードのように途中で道を閉ざした者でもチャンスが掴めるようにできないかと考え、テキストや試験を配達で配布し、仕事で学校に通えなくても、安価な自宅学習で卒業資格が取れる通信学校を設立した。
ナナリーは
「メリエラの私財を投じて教育を受けられずにいる者にも機会を提供し、人材を育てることで国に貢献したい」
と王宮と交渉し、見事な演技力でそれを勝ち取ったのだ。
生徒一人の利益は小さいが、少ない教師でたくさんの生徒を教えられる。世の流れのおかげで生徒は増える一方。その儲けは笑いが止まらないほど莫大だ。
通信学校設立の際。
王宮の担当者との交渉でもナナリーの悪どさは切れ味鋭かった。
「このような大切な仕事を永続的に担うのは貴族でなければ難しゅうございます。御国に奉仕するために通信学校を起ち上げるのですから、我がメリエラではお一人ごとの授業料は平民でも学びやすいよう安くすることをお約束致します。故に、他の参入などあれば質を守り続けることが難しくなるやもしれません。どうか今後、類似の通信学校の設立は安易になさいませぬようお願い致したく」
そう言って担当者を納得させ、
『国の代行として広く国民に教育を与える機会を私財を奉じて担うメリエラを支援するため、後続の参入は認めない』
と言質を取った。
─私財を使うのは最初だけ。
あとは広く浅く利益を延々と・・・ふふふ。
その日、メリエラ家に戻って馬車を降りたナナリーが、スキップをしながら部屋へ戻っていったことを屋敷の使用人の噂で知ったマードルである。
「お仕事が面白すぎて、結婚どころではございませんのよ」
このまま職業婦人のままでも。
後継者がいないというなら、養子でも貰えばいいと、簡単に考えていた。
ニヤニヤ笑うナナリーにムゥっとしながら、マードルが冊子を投げてよこす。
「なんですの?」
栞が挟まれていたページがパラリと開くと、タケリード・ザンバトという名が目に飛び込んだ。
「あら?」
それは土木建築の専門誌にタケリードが書いた、大型の橋の耐久性をどう高めるかという論文だった。
「まあ!彼がこれを?」
「今、すごい評判になっているんだ」
「どこかのお偉い学者先生に教えを請うていらっしゃるとは手紙に書いてありましたけど」
「学院は卒業できなかったが、おまえの通信学校で学んだあとも自学を続けて、今では研究者としても知名度をあげている」
「素晴らしいですわね」
活字を目で追いながら生返事をする愛娘に、そろそろと提案を持ちける父。
「タケリードは今や若手建築家のホープと呼ばれている」
「ええ、そのようですわね、驚きですわ」
「うん。それでな。いままでいろいろな経緯はあったが、昔のことを知らない者も増えたし、今のタケリードならメリエラゼネラルコントラクションに迎えても遜色ない相手と思うんだが」
ナナリーはふっと視線を父に向け、にっこり笑った。
(おお!やっぱりタケリードのこと今でも想っているんだな!よしっ)
マードルも満面で笑ったが。
「タケリード卿を引き抜かれるんですの?それは素晴らしいお考えと存じますわ」
父の事業のパートナーに引き抜くつもりだと勘違いしたナナリーは、にっこりしたのだった。
64
あなたにおすすめの小説
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
異母妹に婚約者を奪われ、義母に帝国方伯家に売られましたが、若き方伯閣下に溺愛されました。しかも帝国守護神の聖女にまで選ばれました。
克全
恋愛
『私を溺愛する方伯閣下は猛き英雄でした』
ネルソン子爵家の令嬢ソフィアは婚約者トラヴィスと踊るために王家主催の舞踏会にきていた。だがこの舞踏会は、ソフィアに大恥をかかせるために異母妹ロージーがしかけた罠だった。ネルソン子爵家に後妻に入ったロージーの母親ナタリアは国王の姪で王族なのだ。ネルソン子爵家に王族に血を入れたい国王は卑怯にも一旦認めたソフィアとトラヴィスの婚約を王侯貴族が集まる舞踏会の場で破棄させた。それだけではなく義母ナタリアはアストリア帝国のテンプル方伯家の侍女として働きに出させたのだった。国王、ナタリア、ロージーは同じ家格の家に侍女働きに出してソフィアを貶めて嘲笑う気だった。だがそれは方伯や辺境伯という爵位の存在しない小国の王と貴族の無知からきた誤解だった。確かに国によっては城伯や副伯と言った子爵と同格の爵位はある。だが方伯は辺境伯同様独立裁量権が強い公爵に匹敵する権限を持つ爵位だった。しかもソフィアの母系は遠い昔にアストリア帝室から別れた一族で、帝国守護神の聖女に選ばれたのだった。
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルバ」に同時投稿しています。
【完結】殿下、私ではなく妹を選ぶなんて……しかしながら、悲しいことにバットエンドを迎えたようです。
みかみかん
恋愛
アウス殿下に婚約破棄を宣言された。アルマーニ・カレン。
そして、殿下が婚約者として選んだのは妹のアルマーニ・ハルカだった。
婚約破棄をされて、ショックを受けるカレンだったが、それ以上にショックな事実が発覚してしまう。
アウス殿下とハルカが国の掟に背いてしまったのだ。
追記:メインストーリー、只今、完結しました。その後のアフターストーリーも、もしかしたら投稿するかもしれません。その際は、またお会いできましたら光栄です(^^)
勝手にしなさいよ
棗
恋愛
どうせ将来、婚約破棄されると分かりきってる相手と婚約するなんて真っ平ごめんです!でも、相手は王族なので公爵家から破棄は出来ないのです。なら、徹底的に避けるのみ。と思っていた悪役令嬢予定のヴァイオレットだが……
【番外編も完結】で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?
Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。
簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。
一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。
ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。
そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。
オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。
オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。
「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」
「はい?」
ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。
*--*--*
覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾
★2/17 番外編を投稿することになりました。→完結しました!
★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓
このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。
第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」
第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」
第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」
どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ
もしよかったら宜しくお願いしますね!
幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ
猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。
そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。
たった一つボタンを掛け違えてしまったために、
最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。
主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる