【完結】許さないってどういうことですか?それは私の台詞です。

やまぐちこはる

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辺境のタケリード編

12話

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 ドルドミラに戻る馬車は、ザンバト伯爵家のものを出してくれた。次に戻るときは乗合馬車では不都合があるだろうからと。
 しかし引き継ぎに一月はかかる、その間借りっぱなしになってしまうからと断ったが、その間も移動に使えばいいし、荷物をまとめる手伝いもさせればいいと押し切られて。
 家族のあたたかい気持ちを改めて痛感した。

 車中で、連れていきたいと思う者を選ぶ。その中からドルドミラに残ると言うだろう者は誰か、それから監督に抜擢する者の候補を考えて。

 ドルドミラに戻ると、皆集まって帰還を喜んでくれ、彼らがあたたかく迎えてくれるほど言い辛かったのだが、なんとか乗り越えて思いを告げた。
 てっきり自分たちを捨てるのかと責められるだろうと覚悟していたが、素晴らしい引き抜きだと喜んでくれたのだ。
 タケリードはまた泣いてしまい、がさつな荒くれ者たちももらい泣きを、話を聞きつけた若い娘たちは号泣した。

 ともに橋を建設したチームのリーダー、シリザを現場監督に抜擢した二ヶ月後、タケリードは彼が選び、彼を選んだ八人の部下と馬車を連ねてザンバト家へ戻ってきた。
 部下たちを伯爵家の寮へ案内するとすぐ、タケリードはメリエラ家に挨拶に足を運び、いつから仕事をするか、スケジュールを確認して漸くサーザーの元へ向かう。
 すると何故かそこに、ナナリーがいた。

「初級建築学の参考書の販売と通信講座を始めようと思って、サーザー先生と打ち合わせしていましたのよ」
「へえ、すごいですね。私もその講座を受けてみたいです」
「いやいや、タケリードは何を言ってるのかね?とっくに教えたであろう?」
「あ、そうでした」ふっと笑う。
「して今日はどうした?」
「自宅に戻りましたので、ご挨拶に」
「そうか!これからが楽しみだな、期待しているぞ」

 サーザーと話し終えると、ナナリーが待ち受けていた。

「あの、父には会いましたか?」
「もう挨拶してきました」
「父は何か仕事以外のことは?」
「いえ?仕事の話だけでした」
「そう」

 はあ、と息をつくと、さよならまたねと手を振って馬車に乗り込んだ。タケリードには何のことやら?

 実はタケリードがドルドミラに一時戻った際、マードルがナナリーに言ったのだ。

「もう七年以上前のことを思い出してとやかく言うものもいないだろう。もし、今お互いにいいと思うなら、過去のことは水に流してタケリードをパートナーに考えてみてはどうだろう」
「タケリード様を?彼はなんて?いえ、やっぱりいまさらそんなのありえませんわ」
「タケリードには次の帰還の時にユード殿が話すだろうから今日明日と言う事ではないが、一年程度を目処に結論を出すような方向で考えてはくれまいか?」

ナナリーは首を傾げる。

「なぜいまさら?世間体だってよくなぃ」
「おいおい!おまえが言うか?おまえはそんなもの気にする性格ではないだろう?だから星の数ほどあった顔合わせを無下に断ったんじゃないのか?しかしそのせいで、まともに相手になりそうな男がいなくなった!

因みに、わかっていると思うが私も世間体より実が大事だ。仮につまらん噂が立ったとしても力でねじ伏せてやる。
いいか、ナナリーよく考えろ。
タケリードならおまえに仕事をやめろとはいわないだろう。しかもおまえには畑違いの建設事業はタケリードに任せられる、ということはお前は好きなだけ自分の仕事に専念できるな。さらに向こうには過去の弱みもあるから、おまえはわがままし放題間違いなしだ」

 さすがは父。
ナナリーの耳に魅力的に響く言葉を羅列してみせた。

 今までの顔合わせで会った殿方は、ナナリーが仕事を頑張って自分に楽させてほしいとぬけぬけと言う者か、事業と財産を自分に任せ、ナナリーは家のことに専念しろという者がほとんどだった。使えそうにない殿方だから、メリエラ家のために断って差し上げたとナナリーは思っている。
 確かに今のタケリードならいろいろなことが話せ、相談もできるだろうが。

「でも、こういうことは一人の気持ちではすまないわ」
「ということは、ナナリーは満更でもないんだな」
「え?いえ、そんなことはまだなにも」

 マードルがニヤニヤするのがムカつく。

「貴族令嬢たる者、家長が決めたら言われるままに政略結婚するよな?なっ?なっ?」
「おっおとうさまっ!だからそんなのいまさらすぎますわよっ」
「私はナナリーにしあわせになってもらいたいだけさあ。それに私の友人はみーんな孫がいて、それがどんなに可愛いかという話ばかり聞かされているんだよ。あのユード殿だってそうだ!かっわいい孫が三人もいるんだ!ずるいよ!私だって孫を可愛がりたいんだよ!一人でも二人でも何人でも欲しいし、仕事を引き継がせる片腕もほしい、そのうち引退して今までの分も遊びたいからおまえにはなんとしても早く結婚してもらいたいんだ!それにはタケリードがぴったりなんだよーっ!」

マードルの絶叫が聞こえた侍女レラは、廊下でくすりと微笑んだ。



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