25 / 28
辺境のタケリード編
12話
しおりを挟む
ドルドミラに戻る馬車は、ザンバト伯爵家のものを出してくれた。次に戻るときは乗合馬車では不都合があるだろうからと。
しかし引き継ぎに一月はかかる、その間借りっぱなしになってしまうからと断ったが、その間も移動に使えばいいし、荷物をまとめる手伝いもさせればいいと押し切られて。
家族のあたたかい気持ちを改めて痛感した。
車中で、連れていきたいと思う者を選ぶ。その中からドルドミラに残ると言うだろう者は誰か、それから監督に抜擢する者の候補を考えて。
ドルドミラに戻ると、皆集まって帰還を喜んでくれ、彼らがあたたかく迎えてくれるほど言い辛かったのだが、なんとか乗り越えて思いを告げた。
てっきり自分たちを捨てるのかと責められるだろうと覚悟していたが、素晴らしい引き抜きだと喜んでくれたのだ。
タケリードはまた泣いてしまい、がさつな荒くれ者たちももらい泣きを、話を聞きつけた若い娘たちは号泣した。
ともに橋を建設したチームのリーダー、シリザを現場監督に抜擢した二ヶ月後、タケリードは彼が選び、彼を選んだ八人の部下と馬車を連ねてザンバト家へ戻ってきた。
部下たちを伯爵家の寮へ案内するとすぐ、タケリードはメリエラ家に挨拶に足を運び、いつから仕事をするか、スケジュールを確認して漸くサーザーの元へ向かう。
すると何故かそこに、ナナリーがいた。
「初級建築学の参考書の販売と通信講座を始めようと思って、サーザー先生と打ち合わせしていましたのよ」
「へえ、すごいですね。私もその講座を受けてみたいです」
「いやいや、タケリードは何を言ってるのかね?とっくに教えたであろう?」
「あ、そうでした」ふっと笑う。
「して今日はどうした?」
「自宅に戻りましたので、ご挨拶に」
「そうか!これからが楽しみだな、期待しているぞ」
サーザーと話し終えると、ナナリーが待ち受けていた。
「あの、父には会いましたか?」
「もう挨拶してきました」
「父は何か仕事以外のことは?」
「いえ?仕事の話だけでした」
「そう」
はあ、と息をつくと、さよならまたねと手を振って馬車に乗り込んだ。タケリードには何のことやら?
実はタケリードがドルドミラに一時戻った際、マードルがナナリーに言ったのだ。
「もう七年以上前のことを思い出してとやかく言うものもいないだろう。もし、今お互いにいいと思うなら、過去のことは水に流してタケリードをパートナーに考えてみてはどうだろう」
「タケリード様を?彼はなんて?いえ、やっぱりいまさらそんなのありえませんわ」
「タケリードには次の帰還の時にユード殿が話すだろうから今日明日と言う事ではないが、一年程度を目処に結論を出すような方向で考えてはくれまいか?」
ナナリーは首を傾げる。
「なぜいまさら?世間体だってよくなぃ」
「おいおい!おまえが言うか?おまえはそんなもの気にする性格ではないだろう?だから星の数ほどあった顔合わせを無下に断ったんじゃないのか?しかしそのせいで、まともに相手になりそうな男がいなくなった!
因みに、わかっていると思うが私も世間体より実が大事だ。仮につまらん噂が立ったとしても力でねじ伏せてやる。
いいか、ナナリーよく考えろ。
タケリードならおまえに仕事をやめろとはいわないだろう。しかもおまえには畑違いの建設事業はタケリードに任せられる、ということはお前は好きなだけ自分の仕事に専念できるな。さらに向こうには過去の弱みもあるから、おまえはわがままし放題間違いなしだ」
さすがは父。
ナナリーの耳に魅力的に響く言葉を羅列してみせた。
今までの顔合わせで会った殿方は、ナナリーが仕事を頑張って自分に楽させてほしいとぬけぬけと言う者か、事業と財産を自分に任せ、ナナリーは家のことに専念しろという者がほとんどだった。使えそうにない殿方だから、メリエラ家のために断って差し上げたとナナリーは思っている。
確かに今のタケリードならいろいろなことが話せ、相談もできるだろうが。
「でも、こういうことは一人の気持ちではすまないわ」
「ということは、ナナリーは満更でもないんだな」
「え?いえ、そんなことはまだなにも」
マードルがニヤニヤするのがムカつく。
「貴族令嬢たる者、家長が決めたら言われるままに政略結婚するよな?なっ?なっ?」
「おっおとうさまっ!だからそんなのいまさらすぎますわよっ」
「私はナナリーにしあわせになってもらいたいだけさあ。それに私の友人はみーんな孫がいて、それがどんなに可愛いかという話ばかり聞かされているんだよ。あのユード殿だってそうだ!かっわいい孫が三人もいるんだ!ずるいよ!私だって孫を可愛がりたいんだよ!一人でも二人でも何人でも欲しいし、仕事を引き継がせる片腕もほしい、そのうち引退して今までの分も遊びたいからおまえにはなんとしても早く結婚してもらいたいんだ!それにはタケリードがぴったりなんだよーっ!」
マードルの絶叫が聞こえた侍女レラは、廊下でくすりと微笑んだ。
しかし引き継ぎに一月はかかる、その間借りっぱなしになってしまうからと断ったが、その間も移動に使えばいいし、荷物をまとめる手伝いもさせればいいと押し切られて。
家族のあたたかい気持ちを改めて痛感した。
車中で、連れていきたいと思う者を選ぶ。その中からドルドミラに残ると言うだろう者は誰か、それから監督に抜擢する者の候補を考えて。
ドルドミラに戻ると、皆集まって帰還を喜んでくれ、彼らがあたたかく迎えてくれるほど言い辛かったのだが、なんとか乗り越えて思いを告げた。
てっきり自分たちを捨てるのかと責められるだろうと覚悟していたが、素晴らしい引き抜きだと喜んでくれたのだ。
タケリードはまた泣いてしまい、がさつな荒くれ者たちももらい泣きを、話を聞きつけた若い娘たちは号泣した。
ともに橋を建設したチームのリーダー、シリザを現場監督に抜擢した二ヶ月後、タケリードは彼が選び、彼を選んだ八人の部下と馬車を連ねてザンバト家へ戻ってきた。
部下たちを伯爵家の寮へ案内するとすぐ、タケリードはメリエラ家に挨拶に足を運び、いつから仕事をするか、スケジュールを確認して漸くサーザーの元へ向かう。
すると何故かそこに、ナナリーがいた。
「初級建築学の参考書の販売と通信講座を始めようと思って、サーザー先生と打ち合わせしていましたのよ」
「へえ、すごいですね。私もその講座を受けてみたいです」
「いやいや、タケリードは何を言ってるのかね?とっくに教えたであろう?」
「あ、そうでした」ふっと笑う。
「して今日はどうした?」
「自宅に戻りましたので、ご挨拶に」
「そうか!これからが楽しみだな、期待しているぞ」
サーザーと話し終えると、ナナリーが待ち受けていた。
「あの、父には会いましたか?」
「もう挨拶してきました」
「父は何か仕事以外のことは?」
「いえ?仕事の話だけでした」
「そう」
はあ、と息をつくと、さよならまたねと手を振って馬車に乗り込んだ。タケリードには何のことやら?
実はタケリードがドルドミラに一時戻った際、マードルがナナリーに言ったのだ。
「もう七年以上前のことを思い出してとやかく言うものもいないだろう。もし、今お互いにいいと思うなら、過去のことは水に流してタケリードをパートナーに考えてみてはどうだろう」
「タケリード様を?彼はなんて?いえ、やっぱりいまさらそんなのありえませんわ」
「タケリードには次の帰還の時にユード殿が話すだろうから今日明日と言う事ではないが、一年程度を目処に結論を出すような方向で考えてはくれまいか?」
ナナリーは首を傾げる。
「なぜいまさら?世間体だってよくなぃ」
「おいおい!おまえが言うか?おまえはそんなもの気にする性格ではないだろう?だから星の数ほどあった顔合わせを無下に断ったんじゃないのか?しかしそのせいで、まともに相手になりそうな男がいなくなった!
因みに、わかっていると思うが私も世間体より実が大事だ。仮につまらん噂が立ったとしても力でねじ伏せてやる。
いいか、ナナリーよく考えろ。
タケリードならおまえに仕事をやめろとはいわないだろう。しかもおまえには畑違いの建設事業はタケリードに任せられる、ということはお前は好きなだけ自分の仕事に専念できるな。さらに向こうには過去の弱みもあるから、おまえはわがままし放題間違いなしだ」
さすがは父。
ナナリーの耳に魅力的に響く言葉を羅列してみせた。
今までの顔合わせで会った殿方は、ナナリーが仕事を頑張って自分に楽させてほしいとぬけぬけと言う者か、事業と財産を自分に任せ、ナナリーは家のことに専念しろという者がほとんどだった。使えそうにない殿方だから、メリエラ家のために断って差し上げたとナナリーは思っている。
確かに今のタケリードならいろいろなことが話せ、相談もできるだろうが。
「でも、こういうことは一人の気持ちではすまないわ」
「ということは、ナナリーは満更でもないんだな」
「え?いえ、そんなことはまだなにも」
マードルがニヤニヤするのがムカつく。
「貴族令嬢たる者、家長が決めたら言われるままに政略結婚するよな?なっ?なっ?」
「おっおとうさまっ!だからそんなのいまさらすぎますわよっ」
「私はナナリーにしあわせになってもらいたいだけさあ。それに私の友人はみーんな孫がいて、それがどんなに可愛いかという話ばかり聞かされているんだよ。あのユード殿だってそうだ!かっわいい孫が三人もいるんだ!ずるいよ!私だって孫を可愛がりたいんだよ!一人でも二人でも何人でも欲しいし、仕事を引き継がせる片腕もほしい、そのうち引退して今までの分も遊びたいからおまえにはなんとしても早く結婚してもらいたいんだ!それにはタケリードがぴったりなんだよーっ!」
マードルの絶叫が聞こえた侍女レラは、廊下でくすりと微笑んだ。
40
あなたにおすすめの小説
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
【番外編も完結】で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?
Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。
簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。
一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。
ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。
そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。
オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。
オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。
「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」
「はい?」
ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。
*--*--*
覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾
★2/17 番外編を投稿することになりました。→完結しました!
★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓
このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。
第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」
第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」
第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」
どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ
もしよかったら宜しくお願いしますね!
勝手にしなさいよ
棗
恋愛
どうせ将来、婚約破棄されると分かりきってる相手と婚約するなんて真っ平ごめんです!でも、相手は王族なので公爵家から破棄は出来ないのです。なら、徹底的に避けるのみ。と思っていた悪役令嬢予定のヴァイオレットだが……
【完結】殿下、私ではなく妹を選ぶなんて……しかしながら、悲しいことにバットエンドを迎えたようです。
みかみかん
恋愛
アウス殿下に婚約破棄を宣言された。アルマーニ・カレン。
そして、殿下が婚約者として選んだのは妹のアルマーニ・ハルカだった。
婚約破棄をされて、ショックを受けるカレンだったが、それ以上にショックな事実が発覚してしまう。
アウス殿下とハルカが国の掟に背いてしまったのだ。
追記:メインストーリー、只今、完結しました。その後のアフターストーリーも、もしかしたら投稿するかもしれません。その際は、またお会いできましたら光栄です(^^)
異母妹に婚約者を奪われ、義母に帝国方伯家に売られましたが、若き方伯閣下に溺愛されました。しかも帝国守護神の聖女にまで選ばれました。
克全
恋愛
『私を溺愛する方伯閣下は猛き英雄でした』
ネルソン子爵家の令嬢ソフィアは婚約者トラヴィスと踊るために王家主催の舞踏会にきていた。だがこの舞踏会は、ソフィアに大恥をかかせるために異母妹ロージーがしかけた罠だった。ネルソン子爵家に後妻に入ったロージーの母親ナタリアは国王の姪で王族なのだ。ネルソン子爵家に王族に血を入れたい国王は卑怯にも一旦認めたソフィアとトラヴィスの婚約を王侯貴族が集まる舞踏会の場で破棄させた。それだけではなく義母ナタリアはアストリア帝国のテンプル方伯家の侍女として働きに出させたのだった。国王、ナタリア、ロージーは同じ家格の家に侍女働きに出してソフィアを貶めて嘲笑う気だった。だがそれは方伯や辺境伯という爵位の存在しない小国の王と貴族の無知からきた誤解だった。確かに国によっては城伯や副伯と言った子爵と同格の爵位はある。だが方伯は辺境伯同様独立裁量権が強い公爵に匹敵する権限を持つ爵位だった。しかもソフィアの母系は遠い昔にアストリア帝室から別れた一族で、帝国守護神の聖女に選ばれたのだった。
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルバ」に同時投稿しています。
彼女が望むなら
mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。
リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。
お姉さまは最愛の人と結ばれない。
りつ
恋愛
――なぜならわたしが奪うから。
正妻を追い出して伯爵家の後妻になったのがクロエの母である。愛人の娘という立場で生まれてきた自分。伯爵家の他の兄弟たちに疎まれ、毎日泣いていたクロエに手を差し伸べたのが姉のエリーヌである。彼女だけは他の人間と違ってクロエに優しくしてくれる。だからクロエは姉のために必死にいい子になろうと努力した。姉に婚約者ができた時も、心から上手くいくよう願った。けれど彼はクロエのことが好きだと言い出して――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる