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第19話
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イグラルド子爵にトミイルから報告書が出され、ツィージャー伯爵家にいざ乗り込もう!と子爵夫妻とソリトスが雄叫びをあげていた頃。
そのツィージャー伯爵家では大変なことが起きていた。
その朝、屋敷に密かに帰ったアレンソアが厨房に寄り、特別な茶を貰ったので朝食の時に両親や弟、妻たちに飲ませてやってくれと頼んでいった。
アレンソアはその後、食事を食べずにいつものように寝てしまったが。
言われた通りに食後、伯爵夫妻とトルソー、エリーシャのために茶を淹れた料理人たちがワゴンにティーセットを乗せたが、茶葉がまだほんの少し残っていることに気づき、使用人用のティーポットに特別な茶とやらを淹れた。
その料理人ボリズはクンと匂いを嗅ぐ。
「変わった香りだが悪くはないな」
そう言ってカップに移した茶をゴクリゴクリと二口ほど飲んだあと、少しして、ウグっと呻いて青い顔で泡を吹き、バタリと倒れてしまったのだ。
「ボ、ボリズどうしたっ!」
駆け寄る料理人たちは、その手についさっき伯爵たちに運んでいったものと同じ茶があることに気がついた。
それが何を意味するかも。
「たっ、大変だ!伯爵様に飲ませてはいかん!走れっ、茶を飲む前に止めるんだーっ!あと医者を呼べっ」
厨房から若い見習いたちが走り出す。
「おまえは伯爵様に、俺は医者に行くっ」
「ハァハァハァッ、だっ、誰か」
広い屋敷の中ではあるが、厨房と食堂は料理が冷めない距離。
それほど離れているわけではない。
だからこそ口に入れてしまう前にと猛烈な勢いで駆けつけた見習いに、給仕たちは通せんぼをした。
「こら、おまえなどが入ってはいかん!止まれ」
そう言って通そうとしない。
叫びたいが息が上がり、口からハァハァしか出てこないもどかしさ。しかし、こうしているうちにも飲んでしまうかもしれないのだ。
「ど、ど・・く、の・・むな」
なんとかそう言った。
「ん?何だ?何と言った?」
「茶、どく、のむな」
給仕がハッとして振り返ると、まさに今レイカとトルソーが茶を飲もうとその香りを嗅いでいるところ。
「ダメだっ飲むなーっ!」
給仕が叫び、見習いはホッとして膝をついた。
「アレンソアを連れてこい」
重い声でベレルが護衛騎士に命じる。
騎士たちはふたりでアレンソアの寝室に向かい、酒の臭いを漂わせながら熟睡するアレンソアを叩き起こした。
「なんだあ、おまえたち!こんなことをしてただで済むと思うなよお」
寝ぼけ眼を手の甲で擦りながら凄むと、騎士は淡々と答える。
「ただで済まないのはあなたの方ですよ、アレンソア様」
騎士はアレンソアが自分の足で歩くことを許さず、両脇を抱えてその足を引きずってベレルの元へ連れて行く。
「お連れしました」
そんな連れられ方ではないが、騎士たちの口調はとりあえず丁寧なものである。
父の前に放り出され、座り込んだアレンソアは引きずられて傷ついた足の甲を擦っている。
「アレンソア、これはどういうことだ」
冷たい声が響いた。
そのツィージャー伯爵家では大変なことが起きていた。
その朝、屋敷に密かに帰ったアレンソアが厨房に寄り、特別な茶を貰ったので朝食の時に両親や弟、妻たちに飲ませてやってくれと頼んでいった。
アレンソアはその後、食事を食べずにいつものように寝てしまったが。
言われた通りに食後、伯爵夫妻とトルソー、エリーシャのために茶を淹れた料理人たちがワゴンにティーセットを乗せたが、茶葉がまだほんの少し残っていることに気づき、使用人用のティーポットに特別な茶とやらを淹れた。
その料理人ボリズはクンと匂いを嗅ぐ。
「変わった香りだが悪くはないな」
そう言ってカップに移した茶をゴクリゴクリと二口ほど飲んだあと、少しして、ウグっと呻いて青い顔で泡を吹き、バタリと倒れてしまったのだ。
「ボ、ボリズどうしたっ!」
駆け寄る料理人たちは、その手についさっき伯爵たちに運んでいったものと同じ茶があることに気がついた。
それが何を意味するかも。
「たっ、大変だ!伯爵様に飲ませてはいかん!走れっ、茶を飲む前に止めるんだーっ!あと医者を呼べっ」
厨房から若い見習いたちが走り出す。
「おまえは伯爵様に、俺は医者に行くっ」
「ハァハァハァッ、だっ、誰か」
広い屋敷の中ではあるが、厨房と食堂は料理が冷めない距離。
それほど離れているわけではない。
だからこそ口に入れてしまう前にと猛烈な勢いで駆けつけた見習いに、給仕たちは通せんぼをした。
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そう言って通そうとしない。
叫びたいが息が上がり、口からハァハァしか出てこないもどかしさ。しかし、こうしているうちにも飲んでしまうかもしれないのだ。
「ど、ど・・く、の・・むな」
なんとかそう言った。
「ん?何だ?何と言った?」
「茶、どく、のむな」
給仕がハッとして振り返ると、まさに今レイカとトルソーが茶を飲もうとその香りを嗅いでいるところ。
「ダメだっ飲むなーっ!」
給仕が叫び、見習いはホッとして膝をついた。
「アレンソアを連れてこい」
重い声でベレルが護衛騎士に命じる。
騎士たちはふたりでアレンソアの寝室に向かい、酒の臭いを漂わせながら熟睡するアレンソアを叩き起こした。
「なんだあ、おまえたち!こんなことをしてただで済むと思うなよお」
寝ぼけ眼を手の甲で擦りながら凄むと、騎士は淡々と答える。
「ただで済まないのはあなたの方ですよ、アレンソア様」
騎士はアレンソアが自分の足で歩くことを許さず、両脇を抱えてその足を引きずってベレルの元へ連れて行く。
「お連れしました」
そんな連れられ方ではないが、騎士たちの口調はとりあえず丁寧なものである。
父の前に放り出され、座り込んだアレンソアは引きずられて傷ついた足の甲を擦っている。
「アレンソア、これはどういうことだ」
冷たい声が響いた。
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