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第26話
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「すみません、ちょっと娘とふたりきりで話したいのですけど」
そうオルラヤが申し出ると、侍女がエリーシャに簡単な身支度を施し、庭への散歩を勧めてくれた。
ちらりと見ると、これまたとびきり心配そうにエリーシャを見つめる緑の瞳!
オルラヤはこんな時なのに楽しくなってしまった。
母娘で腕を組んで、美しい庭の敷石を踏みしてて歩く。
護衛騎士が少し離れたところより着いてきているのを確認しながら、オルラヤがずばりと囁いた。
「ねえエリーシャ、貴女あの弟君のことをずいぶん気にしているようね」
「あ、えええ?」
ボッと顔が染まるエリーシャが可愛らしい。
「あの方と離れたくないのね?」
上目遣いで真意を図るように暫く母を見ていたエリーシャは、意を決したようにゆっくり大きく頷いた。
「アレンソア様が不貞をしていたのは知らなかったけど、ずっと蔑まれて、罵られたりしていたわ」
「まあ!なんて酷い」
「でも私もアレンソア様が大嫌いだったの。顔も見たくなくて、執務室で出くわした時は絶対に顔をあげないようにしていたわ」
ぷぷっと、エリーシャが小さく吹き出す。
しかしオルラヤは違っていた。
「つらかったわね、よく我慢したと思うわ」
やさしい母の言葉にじわりと琥珀が潤む。
「ねえエリーシャ、あなたにとって弟君が大切な想い人なら。
ベレル様がね、こちらが希望すればアレンソア様との婚姻を白い結婚としてくださるそうだから、弟君と結婚してしまえば?」
うふふと笑いながら、いとも簡単なことのように母はいった。
ポカンと小さく娘の口が空いたので、オルラヤは右の親指と人差しで可愛らしい唇を摘んでやる。
「はあ、なんて可愛らしい私のエリーシャ!あなたには誰よりも幸せになってほしいの。だからね、今は遠慮してはダメ。本音で心の内を話さなくては」
母の言葉を胸の中で反芻する。
自分の正直な気持ちは、考えるまでもない。
トルソーのやさしさに包まれ、トルソーが夫だったらどれほどよかったかと、ずっとずぅーっと思っていた。
そう、トルソーが夫ならと。
「いいわね、お父様に正直に話すのよ。大丈夫、彼もエリーシャを大切に大切に想ってるからうまくいくわ」
「え?そんなことどうして?」
「見ればわかるわ。彼もあなたに首ったけね。ずーっとエリーシャだけを見ていたもの」
オルラヤはパチンと片目を瞑り、またうふふと楽しそうに笑う。
「私はエリーシャがどこで誰といても幸せならそれでいいの。ずっと我慢してきたのだから少しくらいわがままを言って頂戴。さあ、お父様のところに参りましょう」
ラムス・イグラルド子爵とエリーシャの兄ソリトスは、まだベレルの前に仁王立ちでエリーシャを返せとイキッている。
「あらあら、本当にエリーシャのこととなるとまわりが見えなくなっちゃう人たちよね」
他人事のように言った母が可笑しくて、エリーシャはカラカラと笑う。
「本当だわ、でも愛されてるってわかるから」
エリーシャは父と兄に歩み寄り、小さく手招きをしてふたりを呼び寄せると、ゴクリと唾液を飲み込み、覚悟を決めたような顔をした。
そうオルラヤが申し出ると、侍女がエリーシャに簡単な身支度を施し、庭への散歩を勧めてくれた。
ちらりと見ると、これまたとびきり心配そうにエリーシャを見つめる緑の瞳!
オルラヤはこんな時なのに楽しくなってしまった。
母娘で腕を組んで、美しい庭の敷石を踏みしてて歩く。
護衛騎士が少し離れたところより着いてきているのを確認しながら、オルラヤがずばりと囁いた。
「ねえエリーシャ、貴女あの弟君のことをずいぶん気にしているようね」
「あ、えええ?」
ボッと顔が染まるエリーシャが可愛らしい。
「あの方と離れたくないのね?」
上目遣いで真意を図るように暫く母を見ていたエリーシャは、意を決したようにゆっくり大きく頷いた。
「アレンソア様が不貞をしていたのは知らなかったけど、ずっと蔑まれて、罵られたりしていたわ」
「まあ!なんて酷い」
「でも私もアレンソア様が大嫌いだったの。顔も見たくなくて、執務室で出くわした時は絶対に顔をあげないようにしていたわ」
ぷぷっと、エリーシャが小さく吹き出す。
しかしオルラヤは違っていた。
「つらかったわね、よく我慢したと思うわ」
やさしい母の言葉にじわりと琥珀が潤む。
「ねえエリーシャ、あなたにとって弟君が大切な想い人なら。
ベレル様がね、こちらが希望すればアレンソア様との婚姻を白い結婚としてくださるそうだから、弟君と結婚してしまえば?」
うふふと笑いながら、いとも簡単なことのように母はいった。
ポカンと小さく娘の口が空いたので、オルラヤは右の親指と人差しで可愛らしい唇を摘んでやる。
「はあ、なんて可愛らしい私のエリーシャ!あなたには誰よりも幸せになってほしいの。だからね、今は遠慮してはダメ。本音で心の内を話さなくては」
母の言葉を胸の中で反芻する。
自分の正直な気持ちは、考えるまでもない。
トルソーのやさしさに包まれ、トルソーが夫だったらどれほどよかったかと、ずっとずぅーっと思っていた。
そう、トルソーが夫ならと。
「いいわね、お父様に正直に話すのよ。大丈夫、彼もエリーシャを大切に大切に想ってるからうまくいくわ」
「え?そんなことどうして?」
「見ればわかるわ。彼もあなたに首ったけね。ずーっとエリーシャだけを見ていたもの」
オルラヤはパチンと片目を瞑り、またうふふと楽しそうに笑う。
「私はエリーシャがどこで誰といても幸せならそれでいいの。ずっと我慢してきたのだから少しくらいわがままを言って頂戴。さあ、お父様のところに参りましょう」
ラムス・イグラルド子爵とエリーシャの兄ソリトスは、まだベレルの前に仁王立ちでエリーシャを返せとイキッている。
「あらあら、本当にエリーシャのこととなるとまわりが見えなくなっちゃう人たちよね」
他人事のように言った母が可笑しくて、エリーシャはカラカラと笑う。
「本当だわ、でも愛されてるってわかるから」
エリーシャは父と兄に歩み寄り、小さく手招きをしてふたりを呼び寄せると、ゴクリと唾液を飲み込み、覚悟を決めたような顔をした。
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